ミトコンドリアが発達しても疲労はなくならない
ミトコンドリアが持久系運動に適応しても、疲れなくなるわけではありません。
運動中の疲労には、ミトコンドリア以外にも多くの要素が関係しています。
- 体温の上昇
- 水分不足
- 筋グリコーゲンの減少
- 筋肉の損傷
- 神経系の変化
- 睡眠不足
- 栄養不足
- 精神的な疲労
- 運動中に感じる苦しさ
- 痛みや不快感
- ペース配分
ミトコンドリアの適応によって高まりやすいのは、筋肉が酸素や栄養素を利用してATPを作る能力です。
この能力が高まれば、同じ強度の運動を行ったときに、限界へ達するまでの時間が長くなる可能性があります。また、以前と同じ時間だけ運動する場合には、より速いペースを維持できることもあります。
「疲れない体になる」というより、「以前より速いペースや長い時間まで運動を続けられる体になる」と考えるほうが正確です。
最大酸素摂取量とスタミナは同じではない
持久力を示す代表的な指標に「最大酸素摂取量」があります。「VO₂max」と呼ばれることもあります。
最大酸素摂取量とは、激しい運動中に体が取り込み、利用できる酸素量の最大値です。
この数値には、主に次のような能力が関係します。
- 肺から酸素を取り込む能力
- 心臓が血液を送り出す能力
- 血液が酸素を運ぶ能力
- 筋肉まで血液を届ける能力
- 筋肉が酸素を利用する能力
最大酸素摂取量は、持久力を評価する重要な指標です。しかし、この数値だけで実際のスタミナがすべて決まるわけではありません。
研究をまとめたシステマティックレビューでは、トレーニングによるミトコンドリア関連指標の増加率は、最大酸素摂取量の増加率よりも大きい傾向が示されています。
つまり、最大酸素摂取量があまり変わっていなくても、筋肉内では持久系運動に適した変化が進んでいる可能性があります。

また、最大酸素摂取量が同程度の人同士でも、次の条件が異なれば、実際の持久力には差が生じます。
- 運動効率
- ミトコンドリアの量や機能
- 筋線維の特徴
- 乳酸閾値
- 筋力
- 運動フォーム
- 体温調節能力
- エネルギー補給の方法
- ペース配分
- 精神的な状態
スタミナは、一つの数値だけで完全に説明できる能力ではありません。心臓、肺、血液、筋肉、神経系などが協力した結果として表れる総合的な能力です。
低強度運動と高強度運動のどちらでも適応は起こる
ミトコンドリアを持久系運動に適応させる方法として、ゆっくり長く走るトレーニングがよく知られています。
しかし、ミトコンドリアの適応は、低強度から中強度の持久力トレーニングだけで起こるわけではありません。
高強度インターバルトレーニングや、短時間の全力運動を繰り返すスプリントインターバルトレーニングでも、ミトコンドリアに関係する指標が増加することが分かっています。
2024年にオンラインで発表された大規模なシステマティックレビューとメタ回帰分析では、353件の研究と5650人分のデータが扱われました。
トレーニング期間や頻度、開始時の体力などを統計的に調整した推定値では、ミトコンドリア量を示す指標の増加率は次のとおりでした。
- 持久力トレーニング:22.7%
- 高強度インターバルトレーニング:27.0%
- スプリントインターバルトレーニング:27.0%
これらの数値から、高強度運動は、運動時間当たりで見ると大きな変化を引き起こす可能性があると考えられます。
ただし、この結果は「短時間の全力運動だけをすればよい」という意味ではありません。長期的な適応を進めるためには、安全に継続できる運動量を確保することも重要です。
研究ごとに参加者の体力、運動内容、測定方法などが異なるため、数値を単純に比較して、どの方法がすべての人に最も優れていると決めることもできません。
