赤ちゃんの「ひざの皿」はやわらかい!?【使われながら成長していく骨】

ひざは、体の中でもかなり身近な関節です。しかし、「ひざの皿はいつからあるのか」と聞かれると、すぐに答えられる人は少ないかもしれません。

実はこの部分には、少し意外な成長の話があります。

第52回雑学調査レポートでは、そんな「ひざ」に関する雑学をご紹介していきます。

「赤ちゃんにはひざの皿がない」は半分だけ正しい

「赤ちゃんにはひざの皿がない」という雑学を聞いたことがあるかもしれません。これは、完全な間違いではありませんが、正確に言うと少し違います。

赤ちゃんにも、ひざの皿にあたる部分はあります。ただし、大人のような硬い骨として完成しているわけではなく、最初は主に軟骨でできています。軟骨とは、耳や鼻の一部にもある、骨よりもやわらかく弾力のある組織です。

つまり、赤ちゃんのひざに「何もない」のではありません。大人のようにレントゲンではっきり見える硬い骨ではないため、「ひざの皿がない」と表現されることがあるのです。

ひざの皿の正式名は「膝蓋骨」

ひざの皿の正式名は「膝蓋骨(しつがいこつ)」です。英語では「patella(パテラ)」と呼ばれます。

膝蓋骨は、ひざの前側にある小さな骨です。立ったり、歩いたり、階段を上ったりするときに、太ももの前側の筋肉である大腿四頭筋の力をすねの骨へ伝える役割を持っています。

膝蓋骨は、ただのカバーではありません。ひざの前側を守るだけでなく、脚を伸ばす動きを効率よくするための「滑車」や「てこ」のような役割も果たしています。膝蓋骨があることで、太ももの筋肉の力がうまく使われ、ひざを伸ばしやすくなります。

胎児のころから形はできている

膝蓋骨は、生まれてから突然できるものではありません。胎児の時期には、すでに膝蓋骨のもとになる構造が作られています。

研究報告によると、胎児期のかなり早い段階で、膝蓋骨のもとになる部分が軟骨化し始めます。そして、胎児期のうちに膝蓋骨は軟骨として形を整えていきます。

ここで重要なのは、「軟骨として存在している」ことと、「骨として完成している」ことは違うという点です。赤ちゃんのひざの皿は、形としては存在しています。しかし、大人の膝蓋骨のような硬い骨には、まだなっていません。

骨になるのは幼児期以降

膝蓋骨が骨としてはっきりしてくる過程は「骨化(こっか)」と呼ばれます。骨化とは、軟骨などの組織がしだいに骨へ置き換わっていくことです。

膝蓋骨の骨化は、一般に幼児期以降に見られます。レントゲンで骨化の兆候が2〜3歳ごろから見える場合があり、主要な骨化は5〜6歳ごろまでに進むとされています。

そのため、赤ちゃんのひざをレントゲンで見ても、大人のようなくっきりした膝蓋骨が見えないことがあります。これが「赤ちゃんにはひざの皿がない」という話のもとになっています。

なぜ最初から硬い骨ではないのか

赤ちゃんの体は、大人の体を小さくしただけのものではありません。成長に合わせて、少しずつ形や強さを変えていくようにできています。

骨格も同じです。赤ちゃんや子どもの体には、大人よりも軟骨の部分が多くあります。成長にしたがって、その一部が骨へ変わっていきます。

膝蓋骨が最初から硬い骨として完成していないことも、この成長の仕組みの一部と考えられます。赤ちゃんは、生まれてから寝返りをし、はいはいをし、つかまり立ちをし、歩くようになります。その過程で、ひざには少しずつ違う種類の負荷がかかります。

ひざの皿も、その成長と運動の変化に合わせるように、軟骨から骨へと変化していきます。体は最初から完成形で生まれるのではなく、使われながら成長していくのです。

大人の膝蓋骨は「体で最大の種子骨」

膝蓋骨には、もう一つ面白い特徴があります。膝蓋骨は、人間の体で最大の「種子骨」とされています。

種子骨とは、腱の中にできる骨のことです。名前の通り、種のように小さな骨が腱の中に入り、筋肉の力の向きや効率を助けます。手や足にも小さな種子骨がありますが、その中で最も大きいものが膝蓋骨です。

膝蓋骨は、大腿四頭筋の腱の中にあり、ひざを伸ばす動きを助けています。つまり、ひざの皿は単なる「ふた」ではなく、筋肉の力をうまく伝えるための重要な部品なのです。

ひざを曲げ伸ばしすると皿は上下に動く

膝蓋骨は、ひざの前でじっと固定されているわけではありません。ひざを曲げたり伸ばしたりすると、大腿骨の端にある溝に沿って動きます

この溝は、膝蓋骨がスムーズに動くためのレールのような場所です。ひざを曲げると膝蓋骨はその溝の中を移動し、ひざを伸ばすとまた別の位置へ戻ります。

この動きがなめらかに行われるために、膝蓋骨の裏側や大腿骨の表面には関節軟骨があります。関節軟骨は、骨どうしが直接こすれないようにする、すべりやすいクッションのような組織です。

「ひざの皿」は小さいのに負担が大きい

膝蓋骨は小さな骨ですが、日常生活の中で大きな負担を受けています

たとえば、階段を上り下りするとき、しゃがむとき、正座に近い姿勢をとるとき、ひざの前側には強い力がかかります。膝蓋骨はその力を受けながら、大腿骨の溝に沿って動きます。

そのため、膝蓋骨の位置や動きが乱れると、ひざの前側に痛みが出ることがあります。スポーツやランニングでひざの前が痛くなる場合にも、膝蓋骨とその周辺の動きが関係していることがあります。

まとめ

  • 赤ちゃんにも「ひざの皿」にあたる部分はあるが、大人のような硬い骨ではなく、最初は主に軟骨でできている
  • 「赤ちゃんにはひざの皿がない」は完全な間違いではないが、正確には「骨としてまだ完成していない」という意味
  • ひざの皿の正式名は「膝蓋骨(しつがいこつ)」で、英語では「patella(パテラ)」と呼ばれる
  • 膝蓋骨は、ひざの前側を守るだけでなく、脚を伸ばす力を効率よく伝える役割を持つ
  • 膝蓋骨のもとになる構造は胎児期から存在し、軟骨として形づくられている
  • 膝蓋骨は幼児期以降に少しずつ骨化し、2〜3歳ごろからレントゲンで見え始めることがある
  • 主要な骨化は5〜6歳ごろまでに進むとされている
  • 赤ちゃんのひざをレントゲンで見ても、大人のようなくっきりした膝蓋骨が見えないことがある
  • 膝蓋骨は人間の体で最大の「種子骨」とされている
  • 種子骨とは腱の中にできる骨で、筋肉の力の向きや効率を助ける
  • 膝蓋骨は、ひざを曲げ伸ばしすると大腿骨の溝に沿って動く
  • 膝蓋骨は小さい骨だが、階段の上り下りやしゃがむ動作などで大きな負担を受ける

赤ちゃんの体は、大人をそのまま小さくしたものではありません。ひざの皿もまた、成長に合わせて軟骨から骨へと変化していく部分です。

普段は意識しないひざにも、体が少しずつ完成していく過程が表れているのです。

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