ドライヤーは髪から15cm離して乾かすとよい!?【○○しながら使うことも重要】

朝の身支度やお風呂上がりなど、何気なく手に取るドライヤー。ほぼ毎日使うものだからこそ、ちょっとした疑問や意外な雑学が隠れています。

第118回雑学調査レポートでは、そんな「ドライヤー」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

「ドライヤー=髪に悪い」とは限らない

ドライヤーを使うと熱で髪が傷むため、自然乾燥のほうが髪にやさしいと思っている人も多いかもしれません。

たしかに、熱すぎる風を近い距離から当て続ければ、髪への負担は大きくなります。ただし、自然乾燥なら髪へのダメージをすべて避けられるとも限らないようです。

2011年に『Annals of Dermatology』へ掲載された研究では、自然乾燥と複数のドライヤー条件を比較し、乾かした後の髪を電子顕微鏡などで詳しく調べています。

研究では、ドライヤーを髪へ近づけ、髪付近の温度が高くなるほど、表面のキューティクルに強いダメージが確認されました。その一方、髪の細胞同士をつなぐ「CMC」と呼ばれる部分では、自然乾燥した髪だけに変化が見つかっています。

論文では最終的に、ドライヤーを髪から15cm離し、動かしながら使用する乾かし方について、自然乾燥より髪へのダメージを抑えられる可能性があるとしています。

ただし、ここだけを見て「ドライヤーのほうが髪に良い」と考えるのは早いでしょう。髪表面については自然乾燥のほうがダメージが少なかったため、ポイントになるのはドライヤーを使うかどうかではなく、「どれくらいの温度で、どのくらいの距離から、どのように乾かすか」です。

自然乾燥とドライヤーを30回繰り返して比較

研究では、化学処理をしていない髪から毛束を作り、シャンプーと乾燥を1日1回、30日間繰り返しました。

乾燥方法は、自然乾燥のほか、ドライヤーを15cm、10cm、5cm離した条件などに分けられています。

ドライヤー使用時に髪の近くで測った温度と乾燥時間は、15cmでは約47℃で60秒、10cmでは約61℃で30秒、5cmでは約95℃で15秒でした。自然乾燥は室温20℃で行われ、完全に乾くまで2時間以上かかったと報告されています。

つまり、ドライヤーを近づけるほど短時間で乾く一方、髪の近くはかなり高温になっていました。

30回の処理が終わった後、研究者たちは電子顕微鏡などを使って、髪の表面から内部まで詳しく観察しています。

ドライヤーを近づけるほど髪表面のダメージは大きくなった

まず分かりやすい違いが出たのが、髪の一番外側にあるキューティクルです。

自然乾燥した髪では、キューティクルの目立った浮き上がりや亀裂は確認されませんでした。

一方、ドライヤーを15cm離した約47℃の条件では、キューティクルに縦方向の亀裂が複数見つかっています。

10cmまで近づけた約61℃では、キューティクルの浮き上がりや亀裂がさらに目立つようになりました。

もっとも高温だった5cm、約95℃の条件では、亀裂だけでなく穴なども確認され、髪表面のダメージがもっとも強くなっています。研究全体でも、温度が上がるほど表面損傷が増える傾向が示されました。

「少しでも早く乾かしたいから」とドライヤーを髪のすぐ近くまで持っていくと、乾燥時間は短くできても、キューティクルには強い熱が加わる可能性があります。

約95℃ではキューティクルの内部にも変化

研究では、髪の表面を見るだけでなく、髪を輪切りにしたような断面も観察しています。

自然乾燥と、比較的温度が低かった47℃、61℃のドライヤー条件では、断面を見たときの大きな変化は確認されませんでした。

しかし、約95℃になった5cmの条件では、一番外側のキューティクル層に損傷が見つかっています。

そのさらに内側にある「コルテックス」と呼ばれる部分では、今回の30回の実験では、どの条件でも明確な損傷は確認されませんでした。

コルテックスは髪の大部分を占める部分ですが、この結果だけで「高温でも内部は傷まない」と考えることはできません。今回調べられたのは特定の条件で30回処理した毛束だからです。

少なくとも今回の研究では、ドライヤーの距離が近く、髪付近の温度が高くなるほど、外側のキューティクルへの負担が大きくなっていました。

自然乾燥した髪だけに見つかった「CMC」の変化

ここで少し意外な結果が出ています。

髪には「CMC」という構造があります。正式には「Cell Membrane Complex(セル・メンブラン・コンプレックス)」で、日本語では「細胞膜複合体」と呼ばれます。

髪をかなり簡単に説明すると、外側をキューティクルが覆い、その内側にコルテックスがあります。CMCは髪を構成する細胞の間にあり、細胞同士をつなぐような役割を持つ部分です。

2011年の研究では、このCMCを詳しく観察したところ、自然乾燥したグループだけに「bulging(バルジング)」と表現される膨らみが見つかりました。研究では、この変化をCMCの損傷を示すものとして扱っています。

一方、15cm、10cm、5cmからドライヤーを使ったグループでは、同じようなCMCの変化は確認されませんでした。

髪の表面だけを見ると自然乾燥のほうが良好だったのに、CMCでは自然乾燥した髪だけに変化が出たわけです。

この違いが、自然乾燥とドライヤーを単純に「どちらが髪に良いか」で比べにくい理由の一つです。

髪が長時間濡れていたことが関係した可能性

では、なぜ自然乾燥した髪だけにCMCの変化が見つかったのでしょうか。

研究者たちが注目したのが、「髪が濡れていた時間」です。

この実験では、自然乾燥した毛束が完全に乾くまで2時間以上かかりました。髪は水に触れると膨らむ性質があるため、研究者たちは長時間水分に触れていたことがCMCへ影響した可能性を考えています。

水とCMCの関係については、それ以前の研究でも興味深い結果があります。

2001年に発表された研究では、人の髪を水に触れさせたところ、CMCを構成する「δ層(デルタそう)」という部分の厚さが約10%膨らんだことが観察されました。

ただし、水に触れてCMCが膨らむことと、自然乾燥によってCMCが傷むことは同じ意味ではありません。

2011年の研究でも、「長い時間水に触れていたためCMCが傷んだ」という説明は、結果から考えられた仮説です。研究者自身も、濡れている時間と髪へのダメージについて、さらに調べる必要があるとしています。

そのため、「髪が2時間濡れているとCMCが必ず傷む」といった受け取り方は避けたほうがよいでしょう。

15cm離して動かすと熱を集中させにくい

2011年の論文では、髪への負担を抑える方法として「ドライヤーを約15cm離し、連続的に動かしながら使う」という方法が示されています。

15cmは、おおよそ一般的なスマートフォン1台分ほどの距離です。

ここで重要なのは、「15cm」だけではありません。

同じところへ熱風をずっと当て続ければ、その部分だけ温度が上がりやすくなります。髪との距離を取りつつ、ドライヤーや手首を動かして風を分散させることがポイントです。

研究では15cmの条件で髪付近の温度が約47℃でした。ただし、これは研究で使われた特定のドライヤーと実験環境で測定された温度です。家庭のドライヤーを15cm離せば必ず47℃になるわけではありません。

ドライヤーは製品によって温度や風量が大きく異なります。実生活では「15cm前後を一つの目安にする」「近づけすぎない」「一か所に熱を集中させない」と覚えておくと使いやすいでしょう。

「高温で一気に乾かす」は髪表面への負担が大きい

早く乾かしたいときほど、高温のドライヤーを髪の近くから当てたくなるものです。

しかし、今回の実験では、距離が近くなって温度が高くなるほど、キューティクルのダメージは増えていました。約95℃の条件では、表面の亀裂や穴に加えて、外側のキューティクル層にも損傷が確認されています。

現在の一般的なヘアケアでも、強すぎる熱を避けることが勧められています。

皮膚科医の専門団体である『American Academy of Dermatology』は、過度な熱が髪を傷める可能性があるとして、ドライヤーなどを使う場合には低温または中程度の温度設定を使うよう案内しています。

別の案内でも、ドライヤーを使う場合はできるだけ低い温度設定を選ぶことや、可能であれば自然乾燥を取り入れる方法が紹介されています。

2011年の研究と現在の一般的なヘアケア情報を合わせると、「ドライヤーを使わないこと」よりも、「強い熱を近距離から集中させないこと」を意識すると分かりやすいでしょう。

タオルでゴシゴシするのも避けたい

ドライヤーの時間を減らしたい場合は、最初にタオルで余分な水分を取る方法があります。

ただし、髪をタオルで激しくこする必要はありません。

『American Academy of Dermatology』では、濡れた髪はデリケートだとして、タオルやTシャツで髪を包み、水分をやさしく吸収させる方法を案内しています。強くこする乾かし方は髪を傷める可能性があります。

お風呂から出たら、まずタオルで髪を包むようにして水分を取ります。その後、ドライヤーを適度に離して乾かせば、最初からびしょ濡れの状態で熱風を長時間当てるより、使用時間を短くしやすくなります。

毎日のドライヤーは「距離・温度・動かす」を意識

家庭で取り入れやすい乾かし方は、それほど難しくありません。

まず、タオルで髪を強くこすらず、やさしく水分を取ります。

ドライヤーを使うときは、髪との間を15cm前後空けることを一つの目安にします。そして、同じ場所を狙い続けるのではなく、ドライヤーを動かしながら風を当てます。

温度を変更できる機種なら、必要以上に高い温度を使わず、低温や中温を活用するとよいでしょう。『American Academy of Dermatology』も、過度な熱を避け、低温または中程度の設定を使用するよう勧めています。

髪がほぼ乾いた後まで高温の風を当て続ける必要もありません。乾き具合を確認しながら、必要な範囲でドライヤーを使うのがポイントです。

また、ブリーチやヘアカラー、パーマなどをしている髪は、すでに化学的な負担を受けています。『American Academy of Dermatology』によると、カラーリングやパーマなどは髪を乾燥させたり、もろくしたりする原因になることがあります。

こうした髪では、さらに強い熱を重ねないようにすると、日常的な負担を減らしやすくなります。

自然乾燥とドライヤーは「どちらが絶対に正解」ではない

2011年の研究で押さえておきたいのは、実際の人が毎日髪を乾かし続けた結果を調べた臨床研究ではないことです。

一定の条件にそろえた毛束を使い、シャンプーと乾燥を30回繰り返した実験でした。

実生活では、髪の太さや長さ、毛量、くせ、カラーやパーマの有無、ドライヤーの種類、風量、室温、湿度などが人によって違います。

さらに、この研究では「どの部分を見るか」によって結果も違いました。

髪表面では自然乾燥した髪の状態が比較的良好で、ドライヤーは高温になるほどキューティクルの損傷が増えています。一方、CMCの変化は自然乾燥した髪だけで確認されました。

そのため、日常生活へ取り入れやすいポイントは、「自然乾燥をやめて必ずドライヤーを使う」というものではありません。

ドライヤーを使うのであれば髪へ近づけすぎず、強い熱を一か所に当て続けないことです。自然乾燥する場合も、髪を必要以上に長時間びしょ濡れのままにしておくことを前提に考える必要はありません。

「熱を避ければそれでよい」ではなく、「強すぎる熱」と「長く濡れた状態」の両方を意識することが、今回の研究を日常のヘアケアへ取り入れるうえで分かりやすい考え方です。

まとめ

  • ドライヤーは近づけて高温になるほど、髪表面のキューティクルへのダメージが大きくなる傾向がある
  • 自然乾燥では髪表面の状態は比較的良好だった一方、CMCと呼ばれる部分に変化が確認された
  • 自然乾燥で見られたCMCの変化には、髪が長時間水分に触れていたことが関係した可能性がある
  • 研究では、ドライヤーを髪から約15cm離して動かしながら使う方法が、ダメージを抑える可能性があるとされた
  • 家庭では15cm前後を目安に距離を取り、一か所へ熱風を集中させないことがポイントになる
  • 自然乾燥とドライヤーのどちらが絶対に良いとは言えず、強すぎる熱と長時間濡れた状態の両方を意識することが重要

毎日当たり前のように使っているドライヤーですが、髪への負担を考えるなら使い方にも少し注意したいところです。

身近な家電だからこそ、こうした小さな雑学を普段のヘアケアに取り入れてみるのもよいでしょう。

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