ヨーグルトはふたに付きにくいものがある!?【ある植物によって生まれた便利な工夫】

ヨーグルトを食べるとき、注目するのは味や賞味期限が中心でしょう。ふたの裏側まで気にする人は、あまり多くないかもしれません。しかし、その目立たない場所に、食品を扱いやすくする工夫が詰まっています。

第93回雑学調査レポートでは、そんな「ヨーグルト」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

ふたの裏がきれいなのは、ヨーグルトの固さだけが理由ではない

ヨーグルトのふたを開けたとき、裏側にヨーグルトがべったり付いていることがあります。

一方で、ほとんど何も付いていない商品もあります。容器が傾いたり、運んでいる途中で揺れたりしたはずなのに、ふたの裏がきれいだと不思議に感じるかもしれません。

この違いは、ヨーグルトの固さだけで生まれるものではありません。一部の商品では、ヨーグルトが付着しにくい特別なふたが使われています。

代表的な技術の一つが、東洋アルミニウム株式会社の「TOYAL LOTUS®(トーヤルロータス)」です。

食品に触れる側の表面に細かな加工を施し、ヨーグルトが薄く広がるのを防いでいます。ヨーグルトがふたに触れても、べったり張り付かず、まとまった状態で落ちやすくなる仕組みです。

森永乳業株式会社は2010年2月から、「森永アロエヨーグルト」の一部商品に、この技術を使ったふたを採用しました。

アルミ製のふたの内側には、食品と直接触れる樹脂の層があります。その樹脂の表面に撥水加工を行い、目では見えないほど細かな凹凸をつくっています。

ヒントになったのは水をはじくハスの葉

ヨーグルトが付きにくいふたのヒントは、池や沼に生えるハスの葉です。

ハスの葉に水を落とすと、水は葉の表面へ広がりません。丸い玉のような形になり、葉を傾けるとコロコロと転がります。

葉の表面だけを見ると、平らで滑らかに見えるかもしれません。しかし、顕微鏡で観察すると、非常に細かな突起が並んでいます。

さらに、その表面は水となじみにくいワックス状の物質で覆われています。

水滴がハスの葉に触れたとき、細かな凹凸の間には空気が残ります。そのため、水滴と葉が直接触れる面積が小さくなり、水が張り付きにくくなるのです。

たとえば、平らな床に置いた物は広い面で床と触れます。一方、細かな突起が並んだ場所では、突起の先端だけで支えられるため、触れる面積が少なくなります。

ハスの葉でも、これと似たことが起きています。

細かな凹凸とワックス状の物質が一緒に働くことで、ハスの葉は水を強くはじきます。この性質は「ロータス効果」と呼ばれています。「ロータス」は英語でハスを表す言葉です。

水滴と一緒に汚れも転がり落ちる

ロータス効果には、水をはじくだけでなく、表面の汚れを落としやすくする働きもあります。

ハスの葉の上を水滴が転がると、葉の表面にある小さなほこりや汚れを取り込みます。そのまま水滴と一緒に流れ落ちるため、葉がきれいな状態に保たれます。

このような性質は「セルフクリーニング効果」と呼ばれることもあります。

ハスは、人の手で洗われなくても、雨や水滴を利用して葉の表面をきれいにしているのです。

ただし、ヨーグルトのふたの場合は、汚れを洗い流すことが主な目的ではありません。ハスの葉のように液体が広がりにくい表面をつくり、食品の付着を抑えるために応用されています。

自然の仕組みをまねる「バイオミメティクス」

自然界にある形や仕組みを観察し、製品や技術に役立てる考え方を「バイオミメティクス」といいます。日本語では「生物模倣」と表現されます。

ヨーグルトのふたに、本物のハスの葉やハスから取り出した成分が使われているわけではありません。

包装材料の表面に加工を行い、ハスの葉と似た働きをする細かな構造を人工的につくっています。

TOYAL LOTUS®では、包装材料の表面に物理的、化学的な処理を施し、複雑な凹凸を形成しています。

食品を付きにくくするには、表面をできるだけ平らで滑らかにすればよいと思うかもしれません。しかし、ヨーグルトのふたでは反対です。

目では確認できないほど細かな凹凸をつくることで、ヨーグルトとふたが触れる面積を減らしています。

表面が鏡のように滑らかでも、液体となじみやすい材質であれば、ヨーグルトは薄く広がってしまいます。大切なのは、見た目の滑らかさではなく、表面の細かな構造と、食品とのなじみにくさです。

撥水性の強さは「接触角」で調べられる

表面が水をどの程度はじくのかを調べる方法の一つに、「接触角」の測定があります。

接触角とは、表面に置いた水滴と、その表面との境目にできる角度です。

水滴が横へ薄く広がる表面では、接触角が小さくなります。反対に、水滴が丸い玉のように盛り上がる表面では、接触角が大きくなります。

たとえば、ぬれたガラスの上では、水が薄く広がりやすくなります。このような状態では、接触角は比較的小さくなります。

強い撥水加工をした表面では、水滴が球に近い形になります。この場合、接触角は180度に近づきます。

東洋アルミニウムの技術資料によると、TOYAL LOTUS®の加工面と水との接触角は170度以上です。

水滴がほぼ球のような状態になるため、非常に高い撥水性を持つことが分かります。

水をはじく性能とヨーグルトをはじく性能は同じではない

接触角が170度以上と聞くと、どのような食品でも完全にはじくように思えるかもしれません。

ただし、この数値は水を使って測定したものです。

ヨーグルトは水とは異なり、たんぱく質や脂肪、糖分などを含んでいます。粘りがあり、商品によっては果肉やソースも入っています。

そのため、ヨーグルトの付き方を、水の接触角だけで説明することはできません。

柔らかく流れやすいヨーグルトと、固めにつくられたヨーグルトでは、ふたの裏での動きも変わります。脂肪分や固形分、温度なども影響します。

それでも、細かな凹凸と撥水性を持つ表面では、ヨーグルトが薄く広がりにくくなります。べったりと膜のように残るのではなく、粒や小さなかたまりになりやすいのが特徴です。

手やテーブルを汚しにくくなる

ヨーグルトがふたに付きにくいことは、小さな違いに見えます。しかし、実際に食べる場面では、いくつかの利点があります。

通常のふたでは、開けた瞬間に裏側のヨーグルトが指に付くことがあります。勢いよく開けると、ヨーグルトが飛び、服やテーブルを汚してしまう場合もあるでしょう。

ヨーグルトが付きにくいふたでは、表面に薄く広がりにくいため、開封時に手を汚す可能性を抑えられます

ふたの裏に残ったヨーグルトを、スプーンですくい取る手間も少なくなります。

森永乳業は、このふたを採用した際、ふたに付いたヨーグルトを取るストレスや、捨てる前にふたを洗う手間の軽減につながると説明しています。

容器の中身を無駄なく食べやすくなることも利点です。1個あたりの量はわずかでも、多くの商品で使われれば、食品の付着を減らす効果は大きくなります。

ごみを扱いやすくする効果もある

ヨーグルトが付いたふたをそのまま捨てると、ごみ箱の中でほかのごみに触れたり、においの原因になったりすることがあります。

付着する量が少なければ、ふたを捨てるときも扱いやすくなります。

自治体や住んでいる地域の分別方法によっては、容器やふたを洗ってから捨てる必要があります。その場合も、食品が付きにくいふたなら、洗浄に使う水や手間を抑えられる可能性があります。

ただし、洗浄や分別のルールは地域によって異なります。実際に捨てる際は、住んでいる自治体の案内を確認する必要があります。

すべてのヨーグルトに同じ技術が使われているわけではない

スーパーやコンビニで販売されているすべてのヨーグルトに、TOYAL LOTUS®が使われているわけではありません。

ふたの材質や厚さ、内側の樹脂、表面加工の方法は、商品やメーカーによって異なります。

見た目が同じようなアルミ製のふたでも、内側の構造まで同じとは限りません。独自の加工を使っている商品もあれば、特別な撥水加工をしていない商品もあります。

また、TOYAL LOTUS®が使われている場合でも、内容物の粘度によって効果の現れ方が変わる可能性があります。

飲むヨーグルトに近い柔らかな商品、スプーンですくっても形が崩れにくい固めの商品、果肉やジャムが入った商品では、ふたへの付き方が異なります。

ふたの裏にヨーグルトが付いていたからといって、容器や包装に問題があるとは限りません

輸送中の揺れ、保管時の向き、温度、開け方などによっても、付着の状態は変化します。

ふたの裏を見ると表面の違いを観察できる

ヨーグルトを食べるときは、ふたをすぐに捨てず、裏側を少し観察してみると違いが分かります。

ヨーグルトが薄い膜のように広がっている場合は、ふたの表面と比較的なじみやすい状態だと考えられます。

反対に、小さな粒や丸いかたまりになっている場合は、表面へ広がりにくい性質を持っている可能性があります。

ふたをゆっくり傾けたときに、ヨーグルトがまとまった状態で動くこともあります。

ただし、見た目だけで、使われている材料や加工方法を正確に判断することはできません。ヨーグルトの固さや量、温度なども影響するためです。

商品によっては、パッケージやメーカーの公式サイトに、ふたの機能が説明されている場合があります。気になる商品があれば、表示や公式情報を確認すると、どのような包装技術が使われているのかを調べられます。

まとめ

  • 一部のヨーグルトのふたには、中身が付着しにくい特殊な撥水加工が施されている
  • ヨーグルトをはじく仕組みは、水を強くはじくハスの葉の構造を参考にしている
  • ハスの葉は、細かな凹凸とワックス状の物質によって水滴との接触面積を小さくしている
  • ハスの葉のように水や汚れをはじく性質を「ロータス効果」と呼ぶ
  • 自然界の仕組みを製品開発に応用する考え方は「バイオミメティクス」と呼ばれる
  • TOYAL LOTUS®の加工面は、水との接触角が170度以上になる高い撥水性を持つ
  • 撥水加工されたふたは、手の汚れや中身の無駄、廃棄時の手間を減らせる
  • すべてのヨーグルトに同じ加工が使われているわけではなく、付着の状態は商品によって異なる

味や賞味期限だけを見ていると、ヨーグルトのふたに使われた工夫にはなかなか気づきません。しかし、目立たない部分にこそ、使いやすさを高める技術が詰まっています。

次にふたを開けたときは、その裏側も少しだけ観察してみてください。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

この雑学をもっと広めよう!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次