毎日何気なく開け閉めしている冷蔵庫――日常的に使っていると、中に入れたものが冷えるのは当然のように思うかもしれません。しかし実際には、身近な家電とは思えないほどよくできた仕組みがあります。
第31回雑学調査レポートでは、そんな「冷蔵庫」に関する雑学をご紹介していきます。
冷蔵庫の外側が熱いのは正常
冷蔵庫に手を当てると、側面や背面などが熱く感じられることがあります。これは故障ではなく、冷蔵庫が内部で奪った熱を外へ逃がしていることが原因で起こる現象です。
『三菱電機』によれば、据え付け直後や夏場には、冷蔵庫の外側が約50~60℃ほど熱くなったり、床面付近から温風が出たりすることもあります。これも庫内を冷やすために必要な放熱の働きです。
つまり冷蔵庫は、箱の中に「冷たさ」を送り込んでいるというよりも、箱の中にある「熱」を外へ運び出していると言えるでしょう。
冷蔵庫の中が冷えるほど、外側ではその熱を捨てる仕事が行われています。そのため、冷蔵庫の外側が熱いという現象は、冷蔵庫が正常に働いている証拠でもあるのです。
「冷やす」とは、熱を移動させること
普段の感覚では、「冷やす」とは冷気を発生させることのように思えます。
しかし物理的には、冷やすとは「そこから熱を取り除くこと」なのです。冷蔵庫で考えると、取り除いた熱は消えてなくなるのではなく、冷蔵庫の外側から台所などの空気中へ放出されることになります。
この考え方は、エアコンやヒートポンプでも同様です。『U.S. Department of Energy』によれば、コンプレッサー式の冷却装置では、冷媒が気体へ変わるときに熱を吸収し、圧縮されて液体へ戻る過程でその熱を周囲へ放出していきます。
冷蔵庫の中で食べ物が冷えるのは、食べ物そのものから熱が抜けていくためです。
たとえば氷水に飲み物を入れると飲み物が冷えますが、これは飲み物の「熱」が氷水へ移動しているためです。
冷蔵庫では、その熱の移動を「冷媒」という物質が担っています。
「冷媒」という熱の運び屋
冷媒とは、冷蔵庫の中と外をぐるぐると回っている「熱の運び屋」のような存在です。
簡単に説明すると、冷媒は以下のような流れで働きます。
- 冷蔵庫の中で、冷媒が熱を吸い取る
- 熱を持った冷媒が外側へ運ばれる
- 冷蔵庫の外側で、冷媒が熱を放出する
- 再び冷蔵庫の中へ戻り、また熱を吸い取る
この流れが何度も繰り返されることで、庫内の温度は下がっていきます。
冷蔵庫の中で熱を奪う場所:蒸発器
冷蔵庫の内部には「蒸発器(エバポレーター)」と呼ばれる部品があります。ここで低温・低圧の冷媒が蒸発し、周囲の空気から熱を奪います。冷蔵庫の中が冷えるのは、この蒸発器の近くで熱が吸い取られるからなのです。
これによって冷媒は「熱を持った気体」になります。ここで重要なのは、冷媒が冷蔵庫の中で熱を吸収しただけでは終わらないということです。吸収した熱をどこかへ捨てなければ、冷蔵庫の中は冷え続けません。
熱を外へ捨てる場所:凝縮器
冷蔵庫の外側には「凝縮器(コンデンサー)」と呼ばれる部品があります。ここで冷媒は熱を放出するのです。
凝縮器では、熱を持った冷媒が外気に熱を渡します。すると冷媒は気体から液体へ戻り、再び庫内側へ送られる準備ができます。
この「外へ熱を渡す」という工程があるため、冷蔵庫の側面や背面が熱くなるのです。
熱を外へ出すためのポンプ:コンプレッサー
冷蔵庫の後ろや下のほうから「ブーン」という音が聞こえることがあります。これは多くの場合、「コンプレッサー」が働いている音です。
コンプレッサーは冷媒を圧縮し、冷媒を循環させる心臓部のような部品です。冷媒を圧縮して高温・高圧の気体にすることで、冷媒が外側で熱を放出しやすい状態になります。
冷蔵庫は、ただ冷媒を冷たいまま循環させているわけではありません。冷媒を一度熱くして、外の空気へ熱を捨てやすくしているのです。つまり、庫内を冷やすために、外側ではあえて熱い状態を作っているとも言えるでしょう。
冷蔵庫を開けっ放しにしても部屋は冷えない
こうした仕組みを知ると、よくある疑問にも答えることができます。
「暑い日に冷蔵庫のドアを開けっ放しにしたら、部屋は涼しくなるのか」という疑問を持ったことがある人もいるでしょう。
答えは、基本的に涼しくなりません。むしろ長く見れば、部屋は少し暖まりやすくなります。
理由は、冷蔵庫が庫内から奪った熱を、同じ部屋の中へ放出しているためです。さらに、コンプレッサーを動かすために使った電気エネルギーも、最終的には熱に変化します。
つまり、冷蔵庫のドアを開けっ放しにすると、庫内側で一時的に冷たい空気が出ても、背面や側面からそれ以上の熱が部屋に戻ってくるということです。
これは、冷蔵庫が熱を消す機械ではなく、熱を移動させる機械だと考えると理解しやすくなるでしょう。
冷蔵庫の上や横に物を置かないほうがいい理由
冷蔵庫が熱を外へ捨てる機械だと分かると、設置スペースの重要性も見えてきます。
冷蔵庫の側面に紙をたくさん貼ったり、上に物を詰め込んだり、壁にぴったり寄せすぎたりすると、冷蔵庫は熱を捨てにくくなります。すると、庫内を冷やすために余計に働く必要が出てしまい、結果的に電気を多く使ったり、冷えにくくなったりする可能性があるのです。
『東芝ライフスタイル』も、冷蔵庫の周囲には放熱のためのスペースが必要で、放熱スペースが十分でないと熱がこもり、余計に熱く感じることがあると説明しています。
昔の冷蔵庫は「氷を入れる箱」だった
現代の冷蔵庫は電気と冷媒で熱を運びますが、昔は氷を使って食品を冷やしていました。『National Park Service』によれば、冷蔵庫が発明される前は、木製で金属の内張りをしたアイスボックスに大きな氷を入れ、その冷気で食品を冷やしていたそうです。
アイスボックスでは、氷そのものが熱を受け取って溶けていきます。つまり、昔の冷蔵方法も本質的には「食品の熱を別のものへ移す」という考え方でした。異なるのは、昔は氷が熱を受け止め、現代の冷蔵庫では冷媒が熱を外へ運んでいる点です。
『Smithsonian』によれば、1914年に「DOMELRE(ドメルレ)」という家庭用電気冷蔵装置が登場しました。これは既存のアイスボックスに取り付けることができ、氷の代わりに使える小型の冷却装置でした。
こうした流れを見ると、冷蔵庫の進化とは「氷を補充する箱」から「自分で熱を外へ運ぶ箱」への進化だったとも言えるでしょう。
まとめ
- 冷蔵庫の外側が熱くなるのは、内部で奪った熱を外へ逃がしているため
- 物理的に「冷やす」とは、「そこから熱を取り除くこと」
- 冷蔵庫では熱の移動を「冷媒」が担っている
- 冷蔵庫を開けっ放しにしても涼しくならない
- 冷蔵庫の側面や上に物があると、電気を多く使ったり、冷えにくくなる
冷蔵庫は、ただ食品を冷やしているだけの箱ではありません。中の熱を外へ運び出し続けることで、私たちの食べ物を守ってくれているのです。
普段は意識しないその働きを知ると、側面の熱さや小さな作動音も、少し違って見えてくるかもしれませんね。
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参考文献
- 東芝ライフスタイル「冷蔵庫が冷えるしくみについて知りたい」
- 三菱電機「冷蔵庫の側面が熱くなる場合」
- 三菱電機「冷蔵庫の側面が熱い、温風が出る」
- 東芝ライフスタイル「側面や背面が熱くなる」
- パナソニック「冷蔵庫が冷えない原因と対策!見落としがちな8つのポイント」
- U.S. Department of Energy「Thermoelectric Coolers」
- Encyclopaedia Britannica「Refrigeration」
- Encyclopaedia Britannica Kids「vapor-compression refrigeration」
- National Park Service「The Icebox, the Predecessor of Modern Refrigeration」
- Smithsonian National Museum of American History「Keeping your (food) cool: From ice harvesting to electric refrigeration」

