ジェットコースターの宙返りは「きれいな円」ではない!?【乗客の負担を減らすための工夫】

遊園地でひときわ目立つ乗り物といえば、やはりジェットコースターです。

遠くからでも聞こえる悲鳴、レールを走る車両の音、頂上へゆっくり上っていく時間――乗る前から、すでに少し緊張してしまう人も多いのではないでしょうか。

第38回雑学調査レポートでは、そんな「ジェットコースター」に関する雑学をご紹介していきます。

現代のループは丸ではなく「逆さのしずく形」

ジェットコースターの宙返りループを見ると、多くの人は「丸い輪」を想像します。

しかし、現代の本格的な宙返りループは、完全な円ではありません。その多くは「クロソイドループ」と呼ばれる形に近く、見た目は逆さにしたしずく、または縦に伸びた涙のような形をしています。

つまり、下の部分はゆるやかに曲がり、上の部分はややきつく曲がっている設計になっているのです。

これはデザイン上の好みではありません。乗客の体にかかる力を調整し、強烈すぎるG(重力加速度)を避けながら、車両が安全にループを通過できるようにするための工夫です。

昔のループは、体にかかる力が強すぎた

初期の宙返りコースターには、円形に近いループを使ったものがありました。

円形のループの問題は、下の部分で乗客に非常に大きな力がかかりやすいことです。ジェットコースターはループに入るとき、かなり速い速度で下から突入します。車両が円を描いて曲がるには、進行方向を急に変えなければなりません。

このとき乗客は、座席に強く押し付けられます。いわゆる「体が重く感じる」状態です。

もしループが完全な円だと、下の部分でも上の部分でもカーブの半径が同じです。しかし車両の速さは場所によって変わります。ループの下では速く、上に向かうにつれて遅くなっていきます。

つまり、下の部分では「速いのに、カーブのきつさは変わらない」という状態になります。その結果、体にかかる力が一気に大きくなり、首や背中に強い負担がかかってしまうのです。

ポイントは「速さ」と「曲がり方」

ジェットコースターがループを回るときに重要なのは、速さとカーブの半径です。

物体がカーブを曲がるとき、進行方向を変えるために中心へ向かう加速度が必要になります。これを「向心加速度(こうしんかそくど)」といいます。

この加速度は、簡単に説明すると「速さが大きいほど、またはカーブの半径が小さいほど、体にかかる力が強くなる」という関係があります。

つまり、下の部分で車両が速いのであれば、カーブはゆるやかでなければなりません。逆に、上の部分では、車両が遅くなるため、カーブを少しきつくしても通過できます。

現代のしずく形のループでは、この性質を利用しています。

しずく形のループでは、下を大きく、上を小さく曲げる

クロソイドループでは、下の部分の半径を大きくします。

半径が大きいということは、カーブがゆるやかということです。車両はループの下で最も速くなりますが、そこをゆるやかなカーブにしておくことで、乗客にかかる力を抑えることができます。

一方、ループの上では車両の速度が落ちます。速度が落ちているため、半径を小さくしてカーブをきつくしても、下の部分ほど大きな力は発生しません。

このため、現代のループは「下は大きく、上は小さく」曲がる形になります。見た目が逆さのしずくのようになるのは、この力の調整の結果なのです。

怖さを減らすためではなく、安全に怖くするための形

しずく形のループは、単に乗り心地をやさしくするためだけのものではありません。

ジェットコースターには、強い加速感、体が押しつけられる感覚、ふわっと浮く感覚が必要です。これらがなければ、スリルは大きく減ってしまいます。

しかし、力が強すぎると危険になります。逆に弱すぎると、車両がループの上で十分に進めなかったり、乗客が不自然に拘束具へ押しつけられたりする可能性があります。

つまり、ジェットコースターのループは「怖ければよい」という単純なものではありません。怖さを感じさせながら、体にかかる力を人間が耐えられる範囲に収める必要があります。

しずく形のループは、そのための数学的な工夫です。

ジェットコースターのループは、見えない計算でできている

ジェットコースターの面白さは、派手な高さや速さだけではありません。

本当に重要なのは、乗客の体にどのような力を、どのタイミングで、どれくらい感じさせるかです。

ループの下で体が座席に押しつけられる、頂上で一瞬ふわっと軽くなる、そこから再び地面へ向かって加速する――こうした一連の感覚は、ただ線路を丸く曲げただけでは作れません。

速さ、重力、カーブの半径、車両の動き、乗客が感じる力を計算して、ようやく成立するのです。

ジェットコースターの宙返りは、見た目には大胆な遊具ですが、実際にはかなり繊細な物理の設計がかかわっていると言えるでしょう。

まとめ

  • ジェットコースターの宙返りループは「クロソイドループ」と呼ばれ、下の部分はゆるやかに曲がり、上の部分はややきつく曲がった形をしている
  • 円形のループにすると、下の部分で乗客に非常に強い力がかかりやすい
  • 車両の速度が速い場合は、カーブをゆるやかにする必要があり、車両の速度が遅い場合は、カーブを少しきつくしても問題がない
  • ジェットコースターの宙返りループは、非常に繊細な物理の設計がかかわっている

遊園地に行く機会があれば、ぜひジェットコースターのループを少し離れた場所から眺めてみるとよいでしょう。

きれいな円ではなく、下がふくらみ、上が細くなった形に気づくかもしれません。

その瞬間、ジェットコースターがただの絶叫マシンではなく、よく考えられた工学の結晶に見えてくるはずです。

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