曲がるストローは、娘の「ミルクシェイク」から生まれた!?【日常の気づきが多くの人を助ける】

ストローは、子どもから大人まで多くの人が使ったことのある身近な道具です。ジュースやアイスコーヒー、シェイクなどを飲むとき、何気なく手に取ることも多いでしょう。

しかし、そんな小さな道具にも、生活の中の不便を解決しようとした人の工夫が隠れています。

第60回雑学調査レポートでは、そんな「ストロー」に関する雑学をご紹介していきます。

まっすぐなストローしかなかった時代

現在では、上のほうがジャバラ状になっていて自由に曲げられるストローは、特別なものというより、よくある日用品の一つです。紙パック飲料に付属するものや、ファミリーレストラン、病院、介護の場面などで見かけることがあります。

しかし、1930年代ごろのアメリカでは、飲み物用のストローは基本的にまっすぐなものでした。当時のストローは、現在のようなプラスチック製ではなく、紙で作られたものが主流でした。紙を巻いて筒状にし、飲み物を吸えるようにしたものです。

まっすぐなストローは、グラスが低かったり、大人が普通に座って飲む場合には大きな問題はありません。ところが、背の高いグラスに入った飲み物を小さな子どもが飲もうとすると、口の位置とストローの先端がうまく合わないことがあります。グラスを傾けるとこぼれやすく、ストローを無理に曲げると紙が折れて飲みにくくなります。

この「少し不便だけれど、見過ごされがちな問題」が、曲がるストロー誕生のきっかけになりました。

発明したのはジョセフ・B・フリードマン

曲がるストローを発明した人物は、ジョセフ・B・フリードマンというアメリカの発明家です。『Smithsonian』の資料によると、フリードマンは1900年にアメリカのオハイオ州クリーブランドで生まれ、若いころから発明に関心を持っていた人物でした。

彼はストローだけを発明した人ではありません。万年筆の改良、家庭用品、エンジン関連の工夫など、幅広い分野に関心を持っていました。『Smithsonian』の所蔵資料目録では、フリードマンは生涯で複数の米国特許を取得した発明家として紹介されています。

その中で最もよく知られるようになったのが、現在の「曲がるストロー」につながる発明でした。

きっかけは娘のミルクシェイク

この発明の面白いところは、実験室や大企業の研究開発から生まれたのではなく、家族との日常の一場面から生まれたことです。

1930年代、フリードマンは弟のアルバートが営んでいたサンフランシスコの飲食店「Varsity Sweet Shop」にいました。そこで、幼い娘のジュディスがミルクシェイクを飲もうとしていました。

ところが、娘は背の高いグラスに差されたまっすぐな紙ストローをうまく使えませんでした。ストローが口元に合わず、飲みにくそうにしていたのです。

多くの人なら、「子どもには少し飲みにくいね」で終わってしまう場面かもしれません。しかし、フリードマンはその不便をその場で解決しようとしました。

ネジとデンタルフロスで作った最初の試作品

フリードマンが使った道具は、特別な機械ではありませんでした。

彼はまっすぐな紙ストローの中にネジを差し込みました。そして、ネジ山に沿うようにデンタルフロスをストローの外側に巻きつけました。すると、紙ストローの一部に細かいしわ、つまりジャバラのような凹凸ができます。

その後、ネジを抜くと、ストローには曲げられる部分が残りました。これによって、ストローの先端をグラスの縁から口元の方向へ曲げることができるようになったのです。

この工夫の重要な点は、単にストローを折り曲げたのではないことです。紙ストローをそのまま折ると、折れ目の部分がつぶれて飲み物が通りにくくなります。しかし、ジャバラ状の構造にすると、曲げても内側の通り道が完全にはつぶれにくくなります

つまり、曲がるストローの核心は「曲げられること」だけではなく、「曲げても飲み物が通ること」にありました。

特許名は「Drinking Tube」

フリードマンの発明は、1937年9月28日に米国特許第2,094,268号として認められました。特許の名称は「Drinking Tube」、つまり「飲用チューブ」です。

この特許の説明では、ストローの一部に柔軟な部分を作り、使用中に曲げられるようにすることが目的とされています。さらに、曲げたときにストローの直径が大きく狭まらないことも重視されていました。

ここが非常に実用的です。ストローは、飲み物を吸い上げるための細い管です。いくら好きな角度に曲げられても、曲げた部分がつぶれてしまえば、飲み物はうまく通りません。フリードマンの発明は、見た目の変化ではなく、使いやすさを保ったまま形を変えるための構造でした。

最初から大成功したわけではなかった

曲がるストローは、いま見ると「なぜそれまでなかったのだろう」と思うほど自然な発明です。しかし、発明された直後からすぐに大ヒットしたわけではありません

『Smithsonian』の資料によると、フリードマンは1937年ごろから既存のストロー製造会社に特許を売ろうとしましたが、それがうまくいかなかったのです。

そこで彼は、自分でストローを作る方向へ進みます。1939年にはカリフォルニアで「Flexible Straw Corporation」という会社が設立されました。ところが、第二次世界大戦の影響もあり、製造機械の完成や事業展開は簡単には進みませんでした。

日用品の発明というと、思いついた瞬間に商品化されて売れたように感じられることがあります。しかし実際には、アイデア、特許、製造機械、資金、販売先の確保という、いくつもの段階を越える必要がありました。

最初に大きな価値を認めたのは病院だった

曲がるストローが最初に重要な商品として受け入れられた場所は、子ども向けの飲食店ではなく、病院でした。

『Smithsonian』の資料では、フリードマンの曲がるストローの最初の販売は1947年で、病院向けだったとされています。

これを考えると、曲がるストローの価値がよりはっきり見えてきます。病院には、体を起こすのが難しい患者、寝たまま水分を摂る必要がある患者、首や手を自由に動かしにくい患者がいます。まっすぐなストローでは、飲む人の姿勢に飲み物のほうを合わせにくいことがあります。

しかし、ストローの先端を曲げられれば、飲む人が無理に体を動かさなくても、口元にストローを近づけやすくなります。これは小さな違いに見えて、実際には大きな助けになります。

つまり、曲がるストローは「便利グッズ」であると同時に、医療や介護の場面で役立つ道具でもありました。

ジャバラの形が生んだ使いやすさ

曲がるストローの曲がる部分には、山と谷が連続したジャバラ状の構造があります。この形は、ただの飾りではありません。

紙やプラスチックの細い管は、そのまま曲げると一か所に力が集中して折れやすくなります。折れた部分がつぶれると、飲み物の通り道が狭くなります。

一方、ジャバラ状にすると、曲げるときの変形が複数のひだに分散されます。そのため、ストロー全体をなめらかに曲げやすくなります。また、曲げたあともある程度その形を保ちやすくなります。

この仕組みは、ストロー以外にも見られます。たとえば、曲げられるホース、ジャバラ状の配管、カメラのベローズ、提灯のように伸び縮みする構造などです。細かい山と谷を作ることで、硬い素材や薄い素材にも「曲がる」「伸びる」「たたむ」といった性質を与えられます。

曲がるストローは、身近すぎて見過ごされがちですが、構造としてはかなりよく考えられた道具です。

「ストロー」という名前とのずれ

英語の「straw」は、もともと「麦わら」や「わら」を意味します。昔は、植物の茎を使って飲み物を吸うことがありました。その名残で、現在でも飲み物用の細い管を「straw」と呼びます。

しかし、フリードマンが発明した曲がるストローは、実際には麦わらではなく、紙で作られたストローを改良したものでした。さらに現代では、プラスチック、紙、金属、シリコーン、ガラス、竹など、さまざまな素材のストローがあります。

つまり「ストロー」という言葉は、素材の名前から始まったものの、現在では「飲み物を吸うための管」という機能を表す言葉に変わっているのです。

曲がるストローは、その変化の中で「素材」ではなく「形」と「使いやすさ」を進化させた発明でした。

まとめ

  • 曲がるストローは、幼い子どもが背の高いグラスの飲み物を飲みにくそうにしていたことから生まれた
  • 発明者はアメリカのジョセフ・B・フリードマン
  • 最初の試作品は、紙ストローにネジを差し込み、デンタルフロスを巻いて作られた
  • ジャバラ状の部分によって、ストローは曲げても飲み物の通り道がつぶれにくくなった
  • この発明は1937年に「Drinking Tube」として米国特許を取得した
  • 曲がるストローは最初から大ヒットしたわけではなく、商品化には時間がかかった
  • 初期に大きな価値を認めたのは飲食店ではなく病院だった
  • 寝たまま水分を取る患者にとって、曲がるストローは体を動かさずに飲める便利な道具になった

曲がるストローの始まりは、大きな研究所でも、大規模な開発計画でもありませんでした。目の前の子どもが飲みにくそうにしているという、ほんの小さな気づきでした。

その気づきが、やがて多くの人を助ける道具へと広がっていったのです。

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