地図データには「存在しない島」がある!?【実際にそこにあるのは…】

みなさん、こんにちは!

地図に載っている場所は、すべて実在する――そう思っていないでしょうか。実はこの地球上には、現実には存在しないのに、地図データの世界ではとても有名な「島」があるのです。

第20回雑学調査レポートでは、そんな「島」に関する雑学をご紹介していきます。

早速見ていきましょう。

目次

架空の島「ヌル島」

現実には存在せず、地図データの中にのみ存在する島の名称――それを「Null Island(ヌル島)」と呼びます。

ヌル島は、緯度0度・経度0度、つまり赤道と本初子午線が交わる場所にあるとされる架空の島です。場所としては西アフリカ沖、ギニア湾付近の海上にあたり、実際に陸地はありません。

では、なぜ島が無いのにもかかわらずヌル島があるとされるのでしょうか。

理由は、地図データやGIS(地理情報システム)で起きる位置情報エラーにあります。

たとえば、住所を緯度や経度に変換する処理をジオコーディングといいます。ところが、ここで住所のスペルミスや存在しない番地、空欄、システム上の不具合などがあると、本来の場所を特定できず、結果として座標が緯度0度・経度0度になってしまうことがあります。

しかし、緯度0度・経度0度は地球上では実在する座標であるため、エラーではあるものの地図上ではピンが置かれるという現象が起きてしまうのです。そこで、迷子になったデータが集まる架空の島として、ヌル島が語られるようになりました。

公共利用できるデータに実装

ヌル島が広く知られるようになったきっかけの一つが、公共利用できる地図データセットのNatural Earth(ナチュラルアース)です。

Natural Earthは2011年に、「架空1メートル四方の島」としてヌル島を実装しました。興味深いことに、この時のリリースノートでNatural Earthは、ヌル島がジオコードのエラーを見つけるためのトラブルシューティング用のデータだと説明しているのです。さらに、ヌル島は本来の地図では表示すべきではないものとして扱われています。

つまりヌル島とは単なるジョークではなく、「このデータが本当に正しい場所を指しているのか?」と確認するための目印でもあるのです。

ヌル島の名前の由来

プログラミングやデータベースでは、「値がない」「未設定」という場合にnull(ヌル)と表されます。調査や開発中に、位置情報が未設定であったり、変換に失敗したりすれば、結果がゼロ座標に流れてしまうことはよくあると言えるでしょう。

そのためヌル島は、地理学者や地図製作者、GIS技術者の間では有名な”地図データの墓場”のような存在でもあります。アメリカ議会図書館の記事でも、GISの世界ではヌル島が「非常に訪問者の多い場所」として扱われる、と紹介されています。

実際にあるのは…

ヌル島が現実に存在しないことはわかりましたが、実はその場所に何も無いわけではありません。

実は緯度0度・経度0度の地点には、NOAA(アメリカ海洋大気庁)の観測ブイ「Station 13010 – Soul」があるのです。このブイは気温・水温・風速・風向などを観測しており、熱帯大西洋の気候研究や天気予報に役立っているとされています。

まとめ

  • 現実には存在せず、データ地図にのみ存在する「ヌル島」がある
  • ヌル島は緯度0度・経度0度の地点にある
  • ヌル島はエラーを見つけるためのデータ
  • ヌル島の名前の由来は、プログラミングやデータベースで値が無かったり、未設定のときに表されるnullから
  • 現実の緯度0度・経度0度の地点には観測ブイがある

地理的にはただの海であり、技術的にはエラー地点であり、文化的には地図好きやGIS関係者の内輪ネタであり、そして実際には観測ブイが浮かぶ気象観測地点――。

つまりヌル島とは、「地図が現実を写している」と思っていると見落としてしまう、データ時代ならではの架空地理とも言えるかもしれませんね。

それでは次回の雑学調査レポートもお楽しみに!

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