布団を干したときの「おひさまの匂い」はダニの死骸ではない!?【あまり知られていない布団を干す目的】

天気のいい日に布団を干すと、いつもより気持ちよく眠れそうな気がします。ふんわりとした感触や温かさなど、干したばかりの布団には独特の心地よさがあります。

第146回雑学調査レポートでは、そんな「布団」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

布団を干したあとに感じる「おひさまの匂い」とは

晴れた日に布団を干すと、取り込んだあとに独特の心地よい香りを感じることがあります。「おひさまの匂い」「太陽の香り」などと呼ばれる香りです。

布団が温かくなっていることもあり、太陽そのものの匂いが布団に移ったように感じるかもしれません。しかし、実際に鼻で感じているのは太陽そのものの匂いではなく、日光の下で乾燥した布から発生する香りです。

『ラジトピ ラジオ関西トピックス』が『カネボウ化粧品』へ取材した記事によると、同社では、日向ぼっこをしたときや屋外で干した布団、洗濯物などから感じる温かみのある香りを「お日様の香り」「太陽の香り」と呼び、研究していました。

つまり、「おひさまの匂い」は太陽に匂いがあるという話ではなく、日光を受けながら乾いた布から感じられる香りを表した言葉と考えると分かりやすいでしょう。

「おひさまの匂い」からはアルデヒドやケトンが検出されている

『カネボウ化粧品』の研究では、清潔な木綿タオルを日光の下で数時間乾燥させ、そこから空気中へ出てくるごく少量の成分を集めて分析したとされています。

その結果、「アルデヒド」や「ケトン」と呼ばれる香気成分が検出されました。こうした複数の微量な成分が合わさることで、温かみを感じる「お日様の香り」がつくられると説明されています。

ここで出てくる「揮発性成分」という言葉も、それほど難しく考える必要はありません。揮発とは、物質が空気中へ出ていくことです。香水をつけると離れた場所でも香りが分かるように、空気中へ広がった物質が鼻まで届くことで、人は香りを感じます。

日光の下で乾かした木綿からも微量の揮発性成分が出ており、それを人の鼻が「おひさまの匂い」として感じているわけです。

ただし、アルデヒドやケトンは非常に多くの物質を含む大きな分類名です。「アルデヒドとケトンだけで、すべてのおひさまの匂いが決まる」という意味ではありません。複数の微量な成分が組み合わさった香りとして考えるのが適切です。

「おひさまの匂いはダニの死骸」という説はなぜ違うのか

「布団を天日干ししたときの匂いは、日光で死んだダニの匂い」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。

しかし、『カネボウ化粧品』への取材内容では、ダニが存在しない条件でも「お日様の香り」が発生したとされています。

特に重要なのが、実験に清潔な木綿タオルが使われた点です。

もし「おひさまの匂い」がダニの死骸によって生じるのであれば、ダニがいない状態では同じ香りは発生しないはずです。ところが、ダニが存在しない条件でも、日光の下で乾燥させた木綿から香気成分が確認されました。

この結果から見ると、「おひさまの匂いの正体はダニの死骸」という説明とは一致しません。日光の下で布を乾燥させたときに生じる複数の揮発性成分による香りと考えるほうが、確認されている研究内容に沿っています。

実際に使っている布団では汗や皮脂なども匂いに関係する

研究では清潔な木綿タオルが使われていますが、普段使っている布団の状態はもっと複雑です。

人が使った寝具には、汗や皮脂などが付着します。洗濯した寝具であれば、洗剤や柔軟剤などの成分が残っていることもあります。

繊維の匂いについてまとめた学術レビューでは、繊維には皮脂や微生物、洗濯によって加わった成分などが存在し、それらが布の匂いに影響すると説明されています。また、紫外線や温度、化学反応などによって、繊維上にある物質が匂いを持つ揮発性物質へ変化する場合もあります。

そのため、家庭で使っている布団から感じる香りは、すべての家庭でまったく同じとは限りません。布団の素材、汗や皮脂の量、洗濯方法、洗剤や柔軟剤、干す時間、気温や湿度など、さまざまな条件によって変わると考えられます。

「おひさまの匂い」は一つの成分だけの匂いではなく、布団の状態や環境によって変化する複雑な香りなのです。

干した布団が「気持ちいい」と感じるのは匂いだけが理由ではない

布団を干したあとには、香りだけでなく触った感覚も変わります。

干す前は少し湿っぽかった布団が、取り込んだあとにはさらっとしたり、ふんわりしたりしたように感じることがあります。これは、布団に含まれていた水分が減るためです。

『日本ふとん協会』では、布団を干す大きな目的を、内部にたまった湿気を逃がして乾燥させることと説明しています。湿気が抜ければ、湿気による匂いやカビの予防につながるほか、布団本来のふんわりとした寝心地も戻りやすくなります。

さらに、日光の当たる場所に干した直後であれば、布団そのものも温かくなっています。

つまり、干した布団を「気持ちいい」と感じるときには、「おひさまの匂い」だけでなく、「湿気が抜けたさらっとした感触」「ふんわりした感触」「布団の温かさ」などを一緒に感じていることになります。

布団を干す大きな目的は中にたまった湿気を逃がすこと

布団を干すというと、「日光に当てて殺菌する」「ダニ対策をする」といったイメージを持つ人もいるかもしれません。

しかし、日常的な布団のお手入れで特に重要なのは、布団の内部にたまった湿気を逃がすことです。

『日本ふとん協会』の現在の案内では、布団は長時間強い紫外線に当てるより、できるだけ風通しの良い日陰で干す方法が勧められています。布団に風を通し、内部の水分を外へ逃がすことが重要だからです。

別の案内では、羽毛布団や羊毛布団は直射日光によって素材が劣化する可能性があるため、陰干しを基本とするよう説明されています。一方、綿や合成繊維は比較的丈夫ですが、長時間干し続けると硬くなる場合があるため、干しすぎには注意が必要です。

布団によって中に使われている素材や加工方法は異なります。実際に干すときは、布団についている品質表示やメーカーのお手入れ方法も確認すると安心です。

布団を干す時間帯は午前10時から午後3時ごろが目安

布団を屋外に干すなら、時間帯にも気を配りたいところです。

『日本ふとん協会』では、午前10時から午後3時ごろを干す時間帯の目安として案内しています。早朝や夕方と比べて湿度が低くなりやすく、布団に含まれた水分を逃がしやすいためです。

反対に、早朝や夕方は空気中の湿度が高くなることがあります。布団には湿気を吸収する性質があるため、乾かすつもりで外に出したのに、周囲の湿気を吸ってしまう場合があります。

ただし、晴れていれば必ず外へ干さなければならないわけではありません。

花粉や黄砂が多い日は、屋外に干すことで布団の表面に付着する可能性があります。そのような日は、室内で風を通したり、布団乾燥機や除湿機を利用したりする方法があります。『日本ふとん協会』も、室内干しでも湿気を取る効果が期待できると案内しています。

「おひさまの匂い」を強くするために長時間日光へ当てるのではなく、布団を傷めない方法で適度に乾燥させることが大切です。

干した布団を「パンパン」と強く叩く必要はない

布団を取り込む前に、布団たたきで強く叩く光景を見たことがある人も多いでしょう。

しかし、『日本ふとん協会』では、干した布団を叩くと側生地や中の素材を傷める可能性があるため、軽く手で払う程度にするよう案内しています。

強く叩いたからといって、布団がその分きれいになるわけではありません。むしろ、繰り返し強い力を加えることで、生地や中材へ余計な負担をかける可能性があります。

干し終わった布団は、表面を軽く払ってから取り込む程度で十分です。

まとめ

  • 「おひさまの匂い」は太陽そのものの匂いではなく、日光の下で乾燥した布から発生する香り
  • 清潔な木綿タオルを日光で乾燥させると、アルデヒドやケトンなどの香気成分が検出されている
  • ダニが存在しない条件でも「お日様の香り」が発生するため、「ダニの死骸の匂い」という説とは一致しない
  • 実際の布団の匂いには、汗や皮脂、洗剤、柔軟剤、素材などさまざまな要素が影響する
  • 干した布団が心地よく感じられるのは、香りだけでなく、湿気が抜けた感触や温かさも関係している
  • 布団を干す大きな目的の一つは、内部にたまった湿気を逃がして乾燥させること
  • 布団は素材に合った方法で干し、取り込む際は強く叩かず軽く払う程度にする

天気のいい日に干した布団が心地よく感じられる背景には、香りや湿気、温かさなど、さまざまな変化が関係しています。

何気なく感じていた「おひさまの匂い」も、その正体を知ると少し違って感じられるかもしれません。

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