目の前のものを見落とす「非注意性盲目」
新聞のメッセージを見落とした人に、特別な問題があったとは限りません。人間の注意力には限界があるため、何か一つに集中すると、それ以外の情報が見えにくくなることがあります。
目の前に存在しているにもかかわらず、注意が別の対象に向いているため、予想外の物体や出来事に気づけない現象を「非注意性盲目」と呼びます。
この現象を示した代表的な研究が、心理学者のダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスによる実験です。
参加者は、複数の人物がバスケットボールをパスする映像を見て、指定されたチームのパス回数を数えるよう求められました。映像の途中では、ゴリラの着ぐるみを着た人物が画面内を横切ります。
ゴリラは、一瞬だけ映るわけではありません。それでも、パスを数えることに集中していた参加者の中には、ゴリラに気づかなかった人がいました。

人は、視界に入ったすべての情報を同じように認識しているわけではありません。自分が注意を向けている対象を中心に見ており、それ以外の情報は、目の前にあっても見落とす場合があります。
新聞の実験でも、「写真を正確に数えなければならない」という意識が強くなるほど、写真以外の情報が意識から外れやすくなったと考えられます。
偶然が幸運に変わるまでの3段階
日常生活の幸運は、偶然が起きただけでは完成しません。偶然の出来事が幸運につながるまでには、主に三つの段階があります。
最初に、偶然の情報や出来事が発生します。次に、その中に自分にとって価値のある情報が含まれていると気づきます。最後に、質問する、調べる、応募する、試す、連絡するといった行動を起こします。
たとえば、店頭で求人情報を見かけても、内容を読まなければ転職の機会にはなりません。知人から新しい仕事の話を聞いても、「自分には関係ない」と判断すれば、単なる雑談で終わります。
興味を持って詳しく聞き、必要な準備をして応募することで、初めて偶然の情報が具体的なチャンスへと変わります。

偶然が発生する時期や内容を、本人が完全に操作することはできません。一方で、偶然に出会う機会を増やすこと、情報の価値に気づくこと、気づいた後に行動することには、本人の習慣や判断が影響します。
この小さな違いが何度も積み重なると、仕事、人間関係、学習などで得られる機会に差が生まれる可能性があります。
