「運がいい人」は幸運ではなかった!?【チャンスをつかむ人の意外な共通点】

身近に、「なぜかいつも運がいい」と感じる人はいないでしょうか。

よい仕事の話が舞い込んだり、必要なときに助けてくれる人が現れたりと、不思議なほど物事がうまく進む人がいます。本人に理由を聞いても、「たまたまだよ」と答えるかもしれません。

しかし、その「たまたま」は、本当に偶然だけで生まれているのでしょうか。

第77回雑学調査レポートでは、そんな「運」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

「運がいい」と思っていても宝くじには当たりやすくならない

「運がいい人」と聞くと、宝くじやくじ引きで当たりを引きやすい人を想像するかもしれません。

しかし、心理学者のリチャード・ワイズマンが行った調査では、自分を運がいいと思っている人ほど宝くじに当たりやすい、という結果は確認されませんでした。

ワイズマンは、宝くじを購入する予定だった約700人に対し、自分をどの程度運がいいと思っているかを質問しました。自分を運がいいと考える人は、運が悪いと考える人よりも当選への期待が強く、当選する自信はおよそ2倍だったと報告されています。

ところが、実際に得た賞金には両者の間で差がありませんでした。

宝くじ、サイコロ、コイン投げなど、純粋な確率によって決まる結果は、本人の性格や考え方では変わりません。「自分は運がいい」と信じても、公正な抽選の当選確率が高くなるわけではないのです。

それでは、日常生活で「なぜか運がいい人」が存在するように見えるのは、なぜでしょうか。

ワイズマンは、その理由を調べるため、偶然の出来事そのものではなく、偶然の中にあるチャンスを人がどのように見つけるかに注目しました。

運がいい人は予定外の情報に気づきやすい

ワイズマンが紹介している有名な実験に、新聞に掲載された写真の枚数を数える課題があります。

参加者は新聞を渡され、掲載されている写真を数えるよう指示されました。ところが、新聞の2ページ目には、大きな文字で次のようなメッセージが書かれていました。

「数えるのをやめてください。この新聞には43枚の写真があります」

このメッセージは、小さな文字で隠されていたわけではありません。ページの半分近くを使い、簡単に読める大きさで掲載されていました。

それでも、自分を運が悪いと思っている参加者の多くは、写真を数えることに集中し、メッセージを見落としました。一方、自分を運がいいと思っている参加者は、比較的短い時間でメッセージに気づく傾向がありました。

さらに、新聞の途中には、次のようなメッセージも掲載されていました。

「数えるのをやめ、このメッセージを見たと実験者に伝えれば250ドルを獲得できます」

しかし、写真だけを探していた参加者の多くは、このメッセージにも気づきませんでした。

参加者が見ていた新聞は同じです。運がいい人にだけ、有利な情報が与えられたわけではありません。違っていたのは、目の前にある予定外の情報を見つけられたかどうかでした。

この実験から、運がいい人にだけ特別な偶然が起きるとはいえません。同じチャンスが目の前にあっても、それに気づく人と、そのまま通り過ぎる人がいると考えられます。

ただし、この実験における「運がいい人」と「運が悪い人」は、実際の成功回数によって分けられたわけではありません。本人が自分をどう評価しているかによって分類されている点には、注意が必要です。

目の前のものを見落とす「非注意性盲目」

新聞のメッセージを見落とした人に、特別な問題があったとは限りません。人間の注意力には限界があるため、何か一つに集中すると、それ以外の情報が見えにくくなることがあります。

目の前に存在しているにもかかわらず、注意が別の対象に向いているため、予想外の物体や出来事に気づけない現象を「非注意性盲目」と呼びます。

この現象を示した代表的な研究が、心理学者のダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスによる実験です。

参加者は、複数の人物がバスケットボールをパスする映像を見て、指定されたチームのパス回数を数えるよう求められました。映像の途中では、ゴリラの着ぐるみを着た人物が画面内を横切ります。

ゴリラは、一瞬だけ映るわけではありません。それでも、パスを数えることに集中していた参加者の中には、ゴリラに気づかなかった人がいました。

人は、視界に入ったすべての情報を同じように認識しているわけではありません。自分が注意を向けている対象を中心に見ており、それ以外の情報は、目の前にあっても見落とす場合があります

新聞の実験でも、「写真を正確に数えなければならない」という意識が強くなるほど、写真以外の情報が意識から外れやすくなったと考えられます。

偶然が幸運に変わるまでの3段階

日常生活の幸運は、偶然が起きただけでは完成しません。偶然の出来事が幸運につながるまでには、主に三つの段階があります。

最初に、偶然の情報や出来事が発生します。次に、その中に自分にとって価値のある情報が含まれていると気づきます。最後に、質問する、調べる、応募する、試す、連絡するといった行動を起こします。

たとえば、店頭で求人情報を見かけても、内容を読まなければ転職の機会にはなりません。知人から新しい仕事の話を聞いても、「自分には関係ない」と判断すれば、単なる雑談で終わります。

興味を持って詳しく聞き、必要な準備をして応募することで、初めて偶然の情報が具体的なチャンスへと変わります。

偶然が発生する時期や内容を、本人が完全に操作することはできません。一方で、偶然に出会う機会を増やすこと、情報の価値に気づくこと、気づいた後に行動することには、本人の習慣や判断が影響します

この小さな違いが何度も積み重なると、仕事、人間関係、学習などで得られる機会に差が生まれる可能性があります。

緊張や不安が強いと視野が狭くなりやすい

ワイズマンは、自分を運がいいと思っている人には、人とのつながりを増やし、新しい経験を受け入れ、比較的リラックスして行動する傾向があると説明しています。

反対に、自分を運が悪いと思っている人は、緊張や不安が強い傾向を示したと報告されています。

緊張や不安が強い状態では、注意が目の前の問題に集中しやすくなります。これは、危険を避けたり、期限の迫った作業を終わらせたりするときには役立つ反応です。

しかし、注意の範囲が狭くなりすぎると、当初の目的とは異なる場所にある有益な情報を見落としやすくなります

たとえば、就職面接で「絶対に失敗してはいけない」と考え続けている人は、自分の回答を間違えないことに多くの注意を使います。その結果、面接官が話した会社の課題や、新しい事業に関する重要な情報を十分に受け取れない場合があります。

必要な準備をしたうえで会話にも注意を向けられる人は、相手の発言から新しい質問や提案を思いつきやすくなります。

結果だけを見ると、「偶然よい話を引き出した」と見えるかもしれません。しかし実際には、予定外の情報を受け取るだけの注意の余裕が残っていた可能性があります。

ただし、緊張している人が必ずチャンスを逃すわけではありません。リラックスしている人が、必ず有益な情報を見つけられるわけでもないでしょう。

緊張や不安は、チャンスへの気づきに影響する可能性がある要因の一つです。

行動範囲を広げると偶然との接点が増える

どれほど注意深く周囲を見ていても、偶然の機会がほとんど発生しない環境では、チャンスを見つけることは難しくなります。

人と会わない、新しい場所へ行かない、普段と異なる情報に触れないという生活を続けていると、予想外の出来事に接する回数も少なくなります。反対に、新しい人と話したり、未経験の活動に参加したりすれば、それまで知らなかった情報と出会う可能性が高まります。

大勢が集まる場所へ出かける必要はありません。普段は読まない分野の記事を読む、別の部署の人と話す、いつもと違う道で帰る、初めての店に入るといった小さな変化でも、接する情報は変わります。

もちろん、新しい行動が毎回成果につながるわけではありません。何人もの人と話しても、仕事に結びつく出会いがないことはあります。普段と違う本を読んでも、すぐに役立つ知識が見つからない場合もあるでしょう。

それでも、新しい情報や人との接点がなければ、そこから偶然のチャンスが生まれる可能性もありません。

運をよくする行動とは、必ず成功できる方法ではなく、何かが起きる可能性のある接点を増やす方法だと考えられます。

予定外の出来事から新しい選択肢を探す

偶然のチャンスは、予定どおりに進んでいるときだけでなく、予定が崩れたときにも現れます。

たとえば、電車が遅れたために普段とは違う店へ入る、希望していた会社に採用されなかったために別の業界を調べる、目的の商品が売り切れていたために別の商品を試す、といった場合です。

予定が崩れたとき、多くの人は、失ったものや不利益に注意を向けます。しかし、比較的小さな予定変更であれば、「何を失ったか」だけでなく、「どのような選択肢が新しく生まれたか」を考える余地があります。

ワイズマンは、自分を運がいいと思う人には、不運な出来事が起きたとき、さらに悪い結果になっていた可能性を想像する傾向があると説明しています。また、悪い出来事について考え続けるよりも、状況を改善するために何ができるかを探す傾向があるとしています。

これは、悪い出来事を無理に喜ぶ考え方ではありません。起きた損失を認めたうえで、利用できる情報や次に取れる行動を探す姿勢です。

ただし、事故、病気、災害、犯罪被害、大きな経済的損失などを、本人の考え方だけで幸運に変えられると主張することは適切ではありません。すべての不運を、前向きな考え方で解決できるわけではないためです。

「運がいいと思えば成功する」とは限らない

ワイズマンの研究から、「自分は運がいいと信じれば、願いが現実になる」と結論づけることはできません

宝くじの調査では、自分を運がいいと思う人ほど当選への期待は強かったものの、実際の賞金に差はありませんでした。考え方だけで、無作為な抽選結果、自然現象、他人の判断などを自由に変えることはできません。

また、ワイズマンの研究では、本人が自分を運がいいと感じているかどうかという自己評価が、重要な基準になっています。そのため、自分を運がいいと思っている人が客観的にも多くの成功を得ているのか、どの行動が結果にどの程度影響したのかについては、慎重に考える必要があります。

自分を運がいいと思うから、積極的に行動する可能性もあります。反対に、もともと生活がうまくいっているため、自分を運がいいと評価している可能性もあるでしょう。

さらに、経済状況、健康状態、家庭環境、周囲からの支援、過去の経験など、さまざまな要因が関係していると考えられます。

科学的に検討しやすいのは、超自然的な力としての運ではありません。人がどのように偶然の機会と出会い、それに気づき、具体的な行動へつなげるのかという心理と行動です。

チャンスに気づくための「目的外の観察」

仕事や勉強では、一つの作業に集中しなければならない時間があります。偶然の機会を見つけるために、本来の目的を忘れる必要はありません。

ただし、一つの目的だけを長時間見続けていると、周囲にある有益な情報を見落とす可能性があります。そこで役立つのが、本来の目的とは直接関係のない情報にも、短時間だけ注意を向ける方法です。

ここでは、この方法を「目的外の観察」と呼びます。これは心理学上の正式な専門用語ではなく、注意の余裕をつくるための実践方法です。

たとえば、資料を読み終えた後に、直接関係のない見出しも確認します。会議が終わった後には、相手が何気なく話していた言葉を一つ思い出します。買い物では、目的の商品を確認した後、同じ売り場にある別の商品も短時間だけ見てみます。

重要なのは、無制限に寄り道をすることではありません。集中する時間と視野を広げる時間を分けることで、本来の作業を進めながら、予定外の情報にも気づきやすくなります

日常でチャンスを増やす4つの方法

普段とは違う情報源を一つ加える

普段読んでいるニュース、書籍、動画とは異なる情報源を一つ加えると、目に入る情報が変わります。

営業職の人がデザインの記事を読む、技術職の人が一般消費者向けの商品レビューを見る、学生が専攻外の公開講座に参加する、といった方法があります。

異なる分野の情報が結びつくことで、新しい発想が生まれる場合もあります。

ただし、情報源を増やしすぎると、確認するだけで疲れてしまいます。最初は一つに絞り、負担にならない範囲で続けることが大切です。

会話の中で質問を一つ増やす

偶然の情報は、人との会話から入ってくることがあります。

「最近、新しく始めたことはありますか」

「今はどのような仕事に力を入れていますか」

「最近、面白いと思ったことはありますか」

このような質問を一つ加えるだけでも、予想していなかった情報が返ってくる可能性があります。

ただし、自分に役立つ情報だけを引き出そうとするのではなく、相手の話そのものに関心を持つことが重要です。

結果が出なかった行動も記録する

偶然の機会を増やすために行動しても、多くの場合は目立った結果が出ません。そのため、成功した出来事だけを記録していると、行動を続けにくくなります。

記録するのは、次のような行動です。

  • 初めての人に話しかけた
  • 新しい場所へ行った
  • 普段は読まない分野の記事を読んだ
  • 気になっていた求人を確認した

このように、情報や人との接点をつくった行動そのものを記録します。すぐに成果が出なくても、新しい接点を増やしたことは確認できます。

重要な場面ほど注意の余裕をつくる

試験、面接、商談、発表などでは、失敗を避けようとして視野が狭くなりやすくなります。

開始前に確認事項を紙へ書いたり、質問したい内容を整理したりすると、すべてを頭の中で覚えておく必要がなくなります。

会話中は、自分が次に何を話すかだけでなく、相手が実際に何を話しているかにも注意を向けます。

緊張を完全になくす必要はありません。本来の課題を処理しながら、予定外の情報を受け取れるだけの注意を残すことが目的です。

ビジネスで「運がいい人」に見える人の共通点

仕事では、偶然によって成果が生まれたように見えることがあります。たまたま重要な顧客と知り合った、偶然市場の変化を早く察知した、思いがけず新しい事業の担当者に選ばれた、といった出来事です。

しかし、その前には、小さな行動が積み重なっている場合があります。

担当外の資料にも目を通していたため、新しい事業の情報を早く知ったのかもしれません。取引先との雑談を丁寧に聞いていたため、顧客が言葉にしていない不満に気づいた可能性もあります。

新しい技術を事前に試していたため、市場が変化したとき、すぐに対応できたとも考えられます。日頃から別部署の人と関係をつくっていたため、新しい仕事の候補者として名前が挙がった可能性もあるでしょう。

機会が訪れる時期を正確に予測することはできません。それでも、情報を得られる場所にいること、変化を見つけること、機会が訪れたときに動ける準備をしておくことは可能です。

こうした行動が積み重なると、周囲からは「なぜかよい話が集まる人」に見えるようになります。

ただし、成功のすべてを本人の努力だけで説明することはできません。家庭環境、経済状況、健康、人脈、地域、社会制度など、本人が自由に選べない条件も結果に大きく影響します。

成功した人を見て、「チャンスに気づいたから成功した」と単純に説明することはできません。反対に、うまくいかなかった人を「注意や努力が足りなかった」と決めつけることも不適切です。

運がいい人に見える人は、偶然の結果を思いどおりに変えられる人ではありません。予定外の情報を見つけ、その価値を考え、必要な行動へつなげる回数が比較的多い人だと捉えられます。

まとめ

  • 運がいいと思っていても、宝くじなど純粋な確率で決まる結果は変わらない
  • 運がいい人は、目の前にある予定外の情報やチャンスに気づきやすい
  • 一つの作業に集中しすぎると、重要な情報でも見落とすことがある
  • 偶然は、価値に気づき、行動したときに初めて幸運へ変わる
  • 緊張や不安が強いと視野が狭くなり、チャンスを見逃しやすくなる
  • 新しい人や情報に触れるほど、偶然の機会と出会う可能性が高まる
  • 予定外の出来事から新しい選択肢を探すことが、次の機会につながる
  • 運がいいと信じるだけで成功できるわけではなく、気づいた後の行動が重要になる
  • 運がいい人とは、偶然を操る人ではなく、機会を見つけて行動につなげる人である
  • 成功や失敗には環境や健康なども影響するため、すべてを本人の努力だけでは説明できない

「たまたまよい話が舞い込んだ」「たまたま必要な人と出会った」という出来事の裏には、本人にも見えていない小さな積み重ねがある場合があります。

人と関わること、知らない情報に触れること、違和感や変化を見逃さないこと――そして、気づいた後に一歩動くことです。

身近にいる運がいい人の「たまたま」も、少し丁寧に見てみると、偶然だけでは説明できない部分が見つかるかもしれません。

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