予定外の出来事から新しい選択肢を探す
偶然のチャンスは、予定どおりに進んでいるときだけでなく、予定が崩れたときにも現れます。
たとえば、電車が遅れたために普段とは違う店へ入る、希望していた会社に採用されなかったために別の業界を調べる、目的の商品が売り切れていたために別の商品を試す、といった場合です。
予定が崩れたとき、多くの人は、失ったものや不利益に注意を向けます。しかし、比較的小さな予定変更であれば、「何を失ったか」だけでなく、「どのような選択肢が新しく生まれたか」を考える余地があります。
ワイズマンは、自分を運がいいと思う人には、不運な出来事が起きたとき、さらに悪い結果になっていた可能性を想像する傾向があると説明しています。また、悪い出来事について考え続けるよりも、状況を改善するために何ができるかを探す傾向があるとしています。
これは、悪い出来事を無理に喜ぶ考え方ではありません。起きた損失を認めたうえで、利用できる情報や次に取れる行動を探す姿勢です。
ただし、事故、病気、災害、犯罪被害、大きな経済的損失などを、本人の考え方だけで幸運に変えられると主張することは適切ではありません。すべての不運を、前向きな考え方で解決できるわけではないためです。
「運がいいと思えば成功する」とは限らない
ワイズマンの研究から、「自分は運がいいと信じれば、願いが現実になる」と結論づけることはできません。
宝くじの調査では、自分を運がいいと思う人ほど当選への期待は強かったものの、実際の賞金に差はありませんでした。考え方だけで、無作為な抽選結果、自然現象、他人の判断などを自由に変えることはできません。
また、ワイズマンの研究では、本人が自分を運がいいと感じているかどうかという自己評価が、重要な基準になっています。そのため、自分を運がいいと思っている人が客観的にも多くの成功を得ているのか、どの行動が結果にどの程度影響したのかについては、慎重に考える必要があります。
自分を運がいいと思うから、積極的に行動する可能性もあります。反対に、もともと生活がうまくいっているため、自分を運がいいと評価している可能性もあるでしょう。
さらに、経済状況、健康状態、家庭環境、周囲からの支援、過去の経験など、さまざまな要因が関係していると考えられます。
科学的に検討しやすいのは、超自然的な力としての運ではありません。人がどのように偶然の機会と出会い、それに気づき、具体的な行動へつなげるのかという心理と行動です。
