「あとで食べよう」と思って取っておいたチョコレートを、久しぶりに開けてみたことはありませんか。楽しみにしていたはずなのに、いつもと違う見た目になっていると、少し心配になってしまうものです。
第108回雑学調査レポートでは、そんな「チョコレート」に関する雑学をご紹介していきます。
チョコレートが白くなる「ブルーム現象」とは
久しぶりにチョコレートを食べようとしたら、表面が白くなっていた。そんな経験がある人もいるのではないでしょうか。
茶色いチョコレートに白い膜や粉のようなものが付いていると、「カビが生えたのでは?」と不安になります。
ただ、チョコレートの場合は「ブルーム」と呼ばれる現象で白くなっていることがあります。
ブルームとは、チョコレートの中にある脂肪や砂糖が表面に現れ、白っぽく見えるようになる現象です。外から白いものが付着したのではなく、もともとチョコレートに含まれていた成分が移動したり、結晶になったりすることで起こります。
そのため、表面が白いというだけでは、カビとは判断できません。
ブルームには主に「ファットブルーム」と「シュガーブルーム」の2種類があります。どちらも白っぽく見えるものの、起こる原因は大きく異なります。
白い膜のように見える「ファットブルーム」
ファットブルームは、チョコレートに含まれる脂肪が関係して起こります。
チョコレートには「ココアバター」と呼ばれる脂肪が含まれています。このココアバターが表面へ移動したり、結晶の状態が変化したりすると、チョコレートが白や灰色っぽく見えることがあります。

『Callebaut』では、チョコレートを高すぎる温度で保存すると、ココアバターが表面へ移動してファットブルームが発生することがあると説明しています。
たとえば、チョコレートを暑い部屋に置いて少し溶けたあと、再び冷えて固まった場合です。見た目は元の形に戻っていても、内部ではココアバターの結晶状態が変わっていることがあります。
この変化が進むと、表面に白っぽい膜ができる場合があります。
ファットブルームには、チョコレートを作るときの「テンパリング」も関係しています。
テンパリングとは、チョコレートを決められた温度に温めたり冷やしたりしながら、ココアバターを安定した状態に整える作業です。
きれいにテンパリングされたチョコレートは、表面にツヤが出やすく、割ったときもパキッとした食感になります。
一方、ココアバターの結晶が十分に安定していないと、保存しているうちに結晶状態が変化し、ファットブルームにつながることがあります。
つまり、ファットブルームの白い部分は、カビのようなものが外から生えてきたとは限りません。チョコレートの中にあった脂肪が表面に現れた結果として白く見えている場合があります。
ザラザラした白さは「シュガーブルーム」かも
もう一つのシュガーブルームは、名前のとおり砂糖が関係しています。
きっかけになるのは主に水分です。
チョコレートの表面に水分が付くと、その水分に表面の砂糖が溶けます。その後、水分だけが蒸発すると、溶けていた砂糖が再び結晶になって表面に残ります。

これがシュガーブルームです。
『Callebaut』でも、結露によって砂糖が溶け、その水分が蒸発したあとに砂糖が再結晶化することで、白く粗い表面になると説明されています。
身近なところでは、冷蔵庫からチョコレートを出したときに起こる可能性があります。
冷たい飲み物を入れたグラスを暖かい部屋に置いておくと、表面に細かな水滴が付きます。これが結露です。
チョコレートでも同じように、冷えた状態から暖かく湿った場所へ急に移すと、表面に結露が発生することがあります。
その水分が砂糖を溶かし、乾いたあとにシュガーブルームとして残るわけです。
このため、「チョコレートは冷蔵庫に入れておけば安心」と単純に考えることはできません。
特に冷蔵庫から出してすぐに袋や箱を開けると、冷たいチョコレートが暖かい空気に直接触れ、表面に水分が付きやすくなります。
ファットブルームとシュガーブルームはどう見分ける?
ファットブルームとシュガーブルームは、見た目や触ったときの感触に違いが出ることがあります。
シュガーブルームは、砂糖の細かな結晶が表面に残るため、白い粉や粒が付いているような見た目になりやすいのが特徴です。触るとザラザラしている場合もあります。
一方、ファットブルームでは、白や灰色っぽい膜が表面に広がったように見えることがあります。
簡単に分けるなら、「白い粒が付いていてザラザラしているならシュガーブルーム」「白っぽい膜が広がっているならファットブルーム」というのが一つの目安です。

ただし、実際のチョコレートは状態によって見え方が変わります。見た目だけでブルームの種類や食品の安全性を正確に判断するのは難しい場合があります。
「いつ買ったものなのか」「開封してからどのくらいたっているのか」「暑い場所に置いていなかったか」「湿気や水分が付いていなかったか」といった保存状況も一緒に確認すると判断しやすくなります。
ブルームで白くなったチョコレートは食べられる?
白くなっている原因がブルームであれば、ブルームそのものを理由に食べられなくなるわけではありません。
『Hersheyland』では、ブルームが発生したチョコレートは安全に使用できるものの、味が落ちたり食感が変化したりする場合があると案内しています。
『Lindt USA』も、軽いブルームが発生したチョコレートについて食べても安全と説明しています。『Ghirardelli』でも同様の案内があります。
理由は、ブルームが腐敗によってできるものではなく、チョコレートにもともと含まれていた脂肪や砂糖が表面に現れる現象だからです。
ただし、「食べられること」と「おいしさが保たれていること」は別です。
ブルームが起こったチョコレートでは、なめらかな口どけが弱くなったり、ザラザラした食感になったりすることがあります。表面のツヤがなくなり、見た目も購入したときとは変わっている場合があります。
そのため、そのまま食べるよりも、お菓子作りなどで溶かして使うほうが気になりにくいケースもあります。
一方で、白いものが付いているからといって、すべてをブルームだと決めつけるのは避けたいところです。
ブルームかどうか分からないほど見た目が大きく変化している場合や、いつもと違うにおいがする場合、保存状態に不安がある場合は、無理に食べないほうがよいでしょう。
商品の賞味期限や保存方法を確認し、必要であればメーカーの案内も確認すると安心です。
カビとブルームは同じものではない
ブルームとカビは、見た目が白っぽいという点では似て見える場合があります。しかし、発生する仕組みはまったく異なります。
ブルームは、チョコレートに含まれる脂肪や砂糖の状態が変化して起こります。
ファットブルームなら主にココアバターなどの脂肪、シュガーブルームなら砂糖が白さの原因です。
そのため、白い膜や細かな粒がチョコレートの表面に均一に広がっている場合は、ブルームが起きている可能性があります。
ただし、食品の状態は見た目だけで確実に判断できるものではありません。
不自然なにおいがする、表面の状態が明らかに普段と違う、保存していた期間や環境が分からないといった場合は、ブルームだと決めつけずに判断することが大切です。
チョコレートを白くしないための保存方法
ブルームをできるだけ防ぐために意識したいのが、「高温」「湿気」「急激な温度変化」です。
まず避けたいのが暑い場所です。
チョコレートの温度が上がりすぎると、ココアバターが溶けたり移動したりして、ファットブルームが発生しやすくなります。
直射日光が当たる場所や、夏場の室温が高い部屋、温度が上がりやすい車内などで長時間保存するのは向いていません。
湿気も注意したいポイントです。
チョコレートの表面に水分が付くと砂糖が溶け、シュガーブルームにつながります。そのため、湿度が高い場所や結露しやすい環境も避けたほうが品質を保ちやすくなります。
保存に適した温度は商品によって異なりますが、『Lindt USA』では、自社のチョコレートについて15〜20℃を理想的な保存温度として案内しています。
基本的には、商品のパッケージに書かれている保存方法に従うのが分かりやすいでしょう。

夏に冷蔵庫へ入れるなら「結露」に注意
日本の夏のように室温が高くなる環境では、冷蔵庫でチョコレートを保存することもあります。
その場合に気を付けたいのが湿気と結露です。
チョコレートをそのまま冷蔵庫に入れると、冷蔵庫内の湿気やほかの食品のにおいの影響を受けることがあります。そのため、袋や密閉容器などを利用し、できるだけ外気に触れにくい状態で保存するのがポイントです。
さらに重要なのが、冷蔵庫から取り出した直後です。
冷えたチョコレートの包装をすぐに開けると、暖かい空気に触れた表面で結露が起こりやすくなります。
『Callebaut』では、冷たい場所から暖かい場所へチョコレートを移動するときは、包装したまま数時間かけて周囲の環境になじませてから開封する方法を案内しています。
家庭でも、冷蔵庫から出してすぐに包装を開けるのではなく、袋や箱に入れた状態のまま温度をなじませると、チョコレートの表面に水分が付きにくくなります。
チョコレートをきれいな状態で保存するには、とにかく冷やせばよいわけではありません。高温や湿気を避けながら、急激な温度変化を減らすことが、ブルームを防ぐうえで重要です。
まとめ
- チョコレートが白くなる「ブルーム」は、脂肪や砂糖が表面に現れることで起こる現象
- ブルームには、脂肪が関係する「ファットブルーム」と砂糖が関係する「シュガーブルーム」がある
- ファットブルームは、高温やココアバターの結晶状態の変化などによって起こる
- シュガーブルームは、結露などの水分で砂糖が溶け、再び結晶になることで発生する
- 白さの原因がブルームであれば、その現象自体によって食べられなくなるわけではない
- ブルームが起こると、口どけや食感、風味、見た目などの品質が低下する場合がある
- ブルームを防ぐには、高温・湿気・急激な温度変化を避けることが重要
- 冷蔵庫で保存したチョコレートは、包装したまま周囲の温度になじませてから開封すると結露を抑えやすい
久しぶりに開けたチョコレートが白くなっていても、ブルームによる変化である可能性があります。
次に同じようなチョコレートを見つけたときは、すぐに捨てるのではなく、見た目やにおい、保存状況なども確認してみてください。
参考文献
- Hersheyland「Hershey FAQs | Our Brands’ Most Frequently Asked Questions」
- Callebaut「Sugar bloom, a common issue in the world of chocolate」
- Callebaut「What is Chocolate Bloom? How to Fix & Prevent It」
- PubMed Central「The Chemistry behind Chocolate Production」
- PubMed「Impact of Storage on Dark Chocolate: Texture and Polymorphic Changes」
- PubMed Central「Chocolate Tempering: A Perspective」
- Lindt USA「Frequently Asked Questions for Lindt US」
- Ghirardelli「Product FAQs」

