ハンバーガーは「ハムとバーガー」ではない!?【名前と料理の意外な歴史】

食べ物の名前には、使われている材料がそのまま入っていることがあります。チーズバーガーにはチーズが入り、フィッシュバーガーには魚が使われています。

それでは、ハンバーガーの名前はどのように付けられたのでしょうか。あらためて考えてみると、名前と中身の間に少し不思議な点が見えてきます。

第85回雑学調査レポートでは、そんな「ハンバーガー」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

ハンバーガーの「ハム」は食材のハムではない

「ハンバーガー」という名前を見ると、もともとは豚肉の加工食品である「ハム」を使った料理だったように思えるかもしれません。

しかし、一般的なハンバーガーに使われている肉は、牛ひき肉などを円盤状に整えて焼いた「パティ」です。豚肉から作られるハムは、ハンバーガーの基本的な材料ではありません。

英語では、食材のハムを「ham」、ハンバーガーを「hamburger」と書きます。そのため、「ham」と「burger」を組み合わせた言葉のように見えますが、本来の成り立ちは異なります。

「hamburger」は、ドイツ北部にある都市「Hamburg(ハンブルク)」に関係する言葉です。つまり、もともとは「ハムを使ったバーガー」という意味ではなく、「ハンブルクのもの」「ハンブルクに関係するもの」という意味を持っていました。

名前の由来となったドイツの都市ハンブルク

ドイツ語の「Hamburger」は、「ハンブルクの」「ハンブルクに関係する」「ハンブルク出身の人」といった意味を持つ言葉です。

地名の「Hamburg」に、出身者や関係するものを表す「-er」が付いています。英語でニューヨーク出身の人を「New Yorker」と呼ぶのと似た仕組みです。

語源上は、次のように分けられます。

Hamburg+er=Hamburger

そのため、本来の構造は「ham+burger」ではありません。

英語圏では、19世紀後半になると「Hamburg steak」や「Hamburger steak」と呼ばれる肉料理が知られるようになりました。日本語にすると、「ハンブルク風ステーキ」や「ハンブルクに関係するステーキ」といった意味になります。

ただし、現在のハンバーガーがハンブルクで作られ、その料理が完成した形のままアメリカへ伝わったと証明されているわけではありません。

当時のハンブルクは、ヨーロッパからアメリカへ向かう移民船の主要な出航地の一つでした。このため、移民や船員の移動を通して、ハンブルクに関係する料理や料理名がアメリカへ伝わった可能性が指摘されています。

「hamburger」という言葉がハンブルクに関係していることは辞書でも確認できますが、肉料理がどのような経路をたどって現在の形になったのかについては、不明な部分が残っています。

初期の「Hamburg steak」は現在のハンバーグと違っていた

現在、「Hamburg steak」と聞くと、ひき肉を丸く整えて焼いた料理を想像する人が多いでしょう。

しかし、19世紀の英語圏で紹介されていた初期の「Hamburg steak」は、必ずしも現在のハンバーグと同じ料理ではありませんでした

1870年代以降の新聞や料理本には、肉を細かく刻んだり、たたいて柔らかくしたりして調理する方法が掲載されています。資料によって作り方が異なり、最初から現在のような「ひき肉の円盤」を意味していたわけではありません。

1884年にアメリカで出版された『Mrs. Lincoln’s Boston Cook Book』には、牛肉を機械でひくのではなく、たたいて柔らかくし、炒めたタマネギを加えて焼く「Hamburg steak」のレシピが掲載されています。現在のハンバーグというより、タマネギを使った一枚肉のステーキに近い料理でした。

当時は、現在のようなミートグラインダー、つまり肉ひき機が一般家庭に広く普及していませんでした。そのため、包丁で刻んだり、道具でたたいたりして肉を細かくする方法が使われていたのです。

肉料理の名前は同じでも、時代や地域によって調理方法が異なっていたことに注意する必要があります。

肉ひき機の普及で現在のパティに近づいた

19世紀末になると、肉を簡単に細かくできるミートグラインダーが広まり始めました。

肉を手作業で細かく刻んだり、たたいたりするには時間と労力がかかります。一方、肉ひき機を使えば、大量の肉を短時間で均一に細かくできます。

細かくした肉は一つにまとめやすいため、円盤状のパティを作ることも簡単になりました。こうして、牛肉をひき、形を整えて焼く調理方法が広がっていったと考えられています。

『Smithsonian Magazine』は、ハンバーガーの発祥として主張されている出来事の多くが1885年から1904年ごろに集中しており、この時期が機械式の肉ひき機が普及し始めた時期と重なると説明しています。

現在のハンバーグやハンバーガーのパティに近い形が一般的になった背景には、料理人の工夫だけでなく、調理器具の発達も関係していたとみられます。

「Hamburg steak」がアメリカで広まった理由

19世紀には、多くのドイツ人がアメリカへ移住しました。ドイツ系移民の増加に伴い、ビールやソーセージをはじめとするドイツに関係する食文化も、アメリカ各地へ広がっていきます。

当時のハンブルクは、ヨーロッパから大西洋を渡ってアメリカへ向かう船が出航する主要な港でした。移民や船員の移動を通じて、ハンブルクに関係する肉料理や料理名がアメリカへ伝わった可能性があります。

19世紀後半になると、アメリカの新聞や料理本に「Hamburg steak」という名前の肉料理が登場するようになりました。

ただし、当時の「Hamburg steak」は、現在のハンバーガーのように肉をパンへ挟んだ料理ではありません。基本的には皿に盛り付け、ナイフとフォークを使って食べる肉料理でした。

また、肉をたたいたもの、包丁で刻んだもの、機械でひいたものなど、資料によって作り方が異なります。「Hamburg steak」という名前が、最初から一つの決まった料理だけを指していたとは限りません。

調理器具や食べ方が変化するなかで、少しずつ現在のひき肉料理に近づいていったと考えるのが適切です。

肉料理がパンに挟まれてハンバーガーになった

皿に盛って食べられていた「Hamburg steak」は、やがてパンと組み合わされるようになります。

19世紀末から20世紀初頭のアメリカでは、見本市や祭り、遊園地、屋外の売店などで、歩きながら簡単に食べられる料理が求められていました。

肉をパンに挟めば、皿やナイフ、フォークを用意する必要がありません。購入した人は、手に持ってその場で食べられます。

こうした便利さから、焼いた肉をパンに挟む料理が複数の地域で販売されるようになったと考えられています。

アメリカ議会図書館のブログでは、テキサス州シャイナーで、1894年4月に「hamburger steak sandwiches」が提供されていた記録が紹介されています。これは、一般に知られている1904年のセントルイス万国博覧会よりも前の記録です。

「hamburger steak sandwiches」は、Hamburg steakをパンに挟んだサンドイッチを意味します。

『Online Etymology Dictionary』によると、「hamburger sandwich」という表現は1902年までに確認されています。パンと肉を組み合わせた料理そのものを、短く「hamburger」と呼ぶ用法は1909年までに現れました。

初期のハンバーガーには、現在一般的な丸いバンズではなく、食パンのように薄く切ったパンが使われていた可能性もあります。当時は専用のハンバーガーバンズが一般化していなかったためです。

やがて、肉をパンに挟んだ料理全体を「hamburger」と呼ぶことが定着し、現在のハンバーガーに近い形へと変化していきました。

最初にハンバーガーを作った人物は分かっていない

ハンバーガーの歴史には、「自分たちが最初に作った」とするさまざまな発祥説があります。

アメリカ各地の店や料理人がハンバーガーの発明を主張していますが、最初に焼いた肉をパンへ挟んだ人物が誰なのかについては、現在も明確な結論が出ていません

発祥説の多くは、1880年代から1900年代初頭に集中しています。この時代には肉ひき機が普及し始め、ひき肉のパティを短時間で作りやすくなっていました。

同時に、見本市や祭り、屋外の売店では、手に持って食べられる料理が求められていました。皿に盛って提供していた肉料理をパンに挟むことは、販売する側にとっても、食べる側にとっても自然な工夫だったと考えられます。

そのため、複数の料理人や販売店が、それぞれ別の場所で「焼いた肉をパンに挟む」という方法を思いついた可能性があります。『Smithsonian Magazine』や『HISTORY』も、ハンバーガーの発祥地や最初の考案者について、複数の説があり確定していないことを紹介しています。

ハンバーガーは、一人の発明家が突然完成させた料理というよりも、ハンブルクに関係する肉料理がアメリカで変化し、各地でパンと組み合わされていった料理と考えるほうが実情に近いでしょう。

「バーガー」はハンバーガーから生まれた言葉

現在では、さまざまな料理に「バーガー」という名前が付けられています。

代表的なものには、次のような料理があります。

  • チーズバーガー
  • チキンバーガー
  • フィッシュバーガー
  • ベジバーガー

しかし、英語の「burger」は、最初から独立した料理名として存在していたわけではありません。

「hamburger」は本来、地名の「Hamburg」に、関係や出身を表す「-er」が付いた言葉です。

Hamburg+er=Hamburger

本来は、「ham+burger」という構造ではありません。

ところが、英語を使う人々の間で「hamburger」という言葉が、「ham」と「burger」を組み合わせた単語のように捉え直されるようになりました。

その結果、後半の「burger」が切り出され、新しい料理名を作るための要素として使われ始めます。このように、もともとの言葉の区切りとは違う形で単語が捉え直されることを、言語学では「再分析」と呼びます。

たとえば、チーズを加えたものは「cheeseburger」、鶏肉を使ったものは「chicken burger」と呼ばれるようになりました。

『Online Etymology Dictionary』では、「cheeseburger」は1938年、「burger」という独立した短縮形は1939年の用例として記録されています。

この記録を見る限り、「burger」という独立した単語が先に定着し、その後に「cheeseburger」が作られたわけではありません。「-burger」を新しい料理名に使う動きと、「hamburger」を「burger」と短く呼ぶ動きが、ほぼ同じ時期に進んだと考えられます。

言葉の変化を順番に並べると、次のようになります。

  • Hamburg
  • Hamburger/Hamburg steak
  • Hamburger sandwich
  • Hamburger
  • 「-burger」が料理名を作る要素として使われる
  • Cheeseburgerやchicken burgerなどが生まれる
  • Burgerが独立した短縮形として定着する

普段使われている「バーガー」という言葉は、「ハンバーガー」の一部が新しい単語として捉え直されたことで生まれたのです。

日本の「ハンバーグ」と「ハンバーガー」が似ている理由

日本では、ひき肉を小判形などに整えて焼き、ソースをかけて皿に盛る料理を「ハンバーグ」と呼びます。

一方、焼いたパティをパンに挟んだ料理は「ハンバーガー」と呼ばれています。

この二つの名前が似ているのは、どちらも「Hamburg steak」や「hamburger」に関係する言葉だからです。

日本語の「ハンバーグ」は、「ハンバーグステーキ」を短くした言葉として辞書に掲載されています。

日本のハンバーグには、牛肉や豚肉のひき肉に、タマネギ、パン粉、卵などを加える作り方が広く定着しています。焼いた後は皿に盛り、デミグラスソースや和風ソースなどをかけて食べるのが一般的です。

これに対して、アメリカで発展したハンバーガーは、焼いたパティをパンに挟んで食べるサンドイッチです。日本語の辞書でも、ハンバーガーは丸いパンにハンバーグステーキを挟んだものなどと説明されています。

日本では現在、ハンバーグとハンバーガーは異なる料理として扱われています。しかし、名前をたどっていくと、どちらもハンブルクに関係する肉料理の名称につながります

ハンバーガーの名前を説明するときの注意点

ハンバーガーの名前について簡単に説明する場合は、次のように伝えられます。

「ハンバーガーの『ハム』は、食べ物のハムを意味しているわけではありません。名前はドイツの都市ハンブルクに関係しています」

さらに詳しく説明する場合は、次のように続けると分かりやすいでしょう。

「もともとはパンに挟んだ料理の名前ではなく、Hamburg steakと呼ばれる肉料理に関係する名前でした。その肉料理がアメリカで変化し、パンと組み合わされて、現在のハンバーガーに近い形になりました」

ただし、「現在のハンバーガーがハンブルクで発明された」と断定するのは正確ではありません。

また、「特定の人物が世界で初めて肉をパンに挟んだ」と言い切ることもできません。

言葉の由来がハンブルクに関係していることは辞書などで確認できますが、料理が現在の形になるまでの詳しい経路や、最初の考案者については、複数の説が残っています。

まとめ

  • ハンバーガーの「ハム」は食材のハムではなく、ドイツの都市ハンブルクに由来する
  • 「hamburger」は本来「Hamburg+er」であり、「ハンブルクに関係するもの」という意味を持つ
  • 初期の「Hamburg steak」は、現在のハンバーグと同じ料理ではなかった
  • 肉ひき機の普及により、ひき肉を円盤状に整えた現在のパティに近い形が広がった
  • 「Hamburg steak」をパンに挟んだ料理が、現在のハンバーガーへ発展した
  • 最初にハンバーガーを作った人物は特定されておらず、複数の発祥説が残っている
  • 「バーガー」は「hamburger」の一部が独立したことで生まれた言葉である
  • 日本のハンバーグとハンバーガーは、どちらもハンブルクに関係する料理名につながっている

チーズバーガーにはチーズが入り、フィッシュバーガーには魚が使われています。しかし、ハンバーガーの「ハム」は、同じ考え方で付けられた名前ではありません。

名前と中身の間に感じる小さな違和感は、ハンブルクに関係する肉料理と、アメリカで生まれた食文化の変化を知る手がかりになります。身近な言葉をあらためて見直すと、思いがけない歴史が見つかることもあるのです。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

この雑学をもっと広めよう!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次