政治の「右派」と「左派」は本当に”座る場所”だった!?【発祥はフランス革命】

ニュースやSNSを見ていると、「右派」「左派」という言葉を耳にすることがあります。なんとなく政治的な立場を表しているとは分かっていても、なぜそれが「右」と「左」なのかまで考える機会は少ないかもしれません。

第36回雑学調査レポートでは、そんな「政治の左右」に関する雑学についてご紹介していきます。

きっかけはフランス革命期の議会

政治の世界では、保守的な立場を「右派」、改革や平等を重視する立場を「左派」と呼ぶことがあります。

今では思想や政策を表す言葉ですが、もともとの由来はかなり単純で、議会の右側に座ったか、左側に座ったか、という物理的な位置から生まれました。

その舞台になったのは、1789年のフランス革命期に開かれた国民議会です。

フランスではそれまで、王が強い権力を持つ旧体制が続いていました。しかし財政危機や身分制度への不満が高まり、政治の仕組みを大きく変えようとする動きが強まります。

当時の議会では、新しい憲法を作るうえで、国王ルイ16世にどれほど強い拒否権を認めるかが大きな争点になりました。

そして王の権限を強く残したい人々は、議長席から見て右側に集まりました。一方、王の権限を制限し、より急進的な改革を進めたい人々は左側に集まったのです。

つまり、最初から「右=保守」「左=革新」という完成された思想用語があったわけではありません。はじめは、議会内で意見の近い人たちが自然にまとまって座っただけでした。それが新聞などで伝えられ、次第に「右に座る人たち」「左に座る人たち」という呼び方が政治的な意味を帯びていきました。

ただの座席が、世界中の政治のものさしに

この「右」と「左」という分け方は、フランス国内だけでは終わりませんでした。なぜなら、フランス革命がヨーロッパ全体に大きな衝撃を与えたためです。

『TIME』によれば、フランス革命の用語が世界に広がるには時間がかかったものの、20世紀に入るまでに「右」と「左」は政治的な自己認識を表す主要な分類になっていったとされています。

ただし、「右」と「左」の意味は、国や時代によって変わります。

たとえば19世紀フランスの「右」は王政や教会、伝統秩序を重視する立場に近く、現代の多くの国では小さな政府、伝統的価値観、国家の安全保障などと結びつくことがあります。

一方の「左」も、革命派、社会主義、労働運動、福祉国家、リベラルな社会政策など、時代によって強調点が変わってきました。

フランス革命は、1789年から1799年にかけてフランスで起きた、絶対王政を打倒し近代市民社会を誕生させた歴史的な市民革命。ルイ16世やマリー・アントワネットの処刑や、英雄ナポレオン・ボナパルトのクーデターなどで知られる。

「右」と「左」は便利だが、単純すぎることもある

「右派」「左派」という言葉は便利です。複雑な政治的立場を、ぱっと見て分かるように整理できるためです。しかし、現実の政治は単純な言葉では説明しきれません

たとえば、経済政策では市場重視なので「右寄り」でも、社会政策では個人の自由を重視するので「左寄り」と見られる人もいます。逆に、福祉政策では弱者支援を重視しつつも、移民や治安の問題では保守的な考えを持つ人もいます。

そのため、政治的立場を分類する方法は「右派」「左派」以外にも多く提案されているようですが、それでも左右軸が、とくに西洋諸国で政治思想を説明する代表的な方法として残っていることも事実です。

こうした言葉は、政治を理解するための参考にはなりますが、精密なものではありません。あくまで大まかな方向を知るために役立てるのであって、人や政党の考えを細かく見るには、経済や外交、宗教、福祉、環境、ジェンダー、安全保障など、複数の軸で見たほうが正確です。

日本語の「右翼」「左翼」にもつながった

日本語では「右派」「左派」だけでなく、「右翼」「左翼」という言い方もあります。この「翼」は英語の wing にあたり、議会の左右の”翼”のような場所を指す言葉から来ています。

ただし日本語の「右翼」「左翼」は、日常会話ではかなり強い印象を持つことがあります。そのため「右派」「左派」よりも、政治運動や街宣活動、過激な思想と結びつけて受け取られることもあります。

普通に政治的な傾向を説明したいときは、「保守系」「リベラル系」「右派」「左派」などの言い方のほうが、誤解が少ない場合があることを知っておくとよいでしょう。

まとめ

  • 政治の「右派」「左派」は、フランス革命期の議会で座った位置が由来
  • フランス革命がヨーロッパ全体に影響を与え、言葉が広まっていった
  • 「右派」「左派」は大まかな方向性を知る言葉であり、実際の政治は複数の要素を見たほうがよい
  • 日本語の「右翼」「左翼」も同じ意味だが、過激に受け取られることもあるため注意が必要

「右派」「左派」という言葉は、難しい政治思想から突然生まれたものではありません。もともとは、議会の中でどちら側に座ったかという、とても単純な違いから広がった表現でした。

その座席の違いが、フランス革命から200年以上経った今でも政治を語る基準として残っているのは、まさに言葉と歴史が結びついた面白い例だと言えるでしょう。

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