日本のカレーライスの始まりは「海の上」!?【赤ガエルが具材になることも】

カレーライスは、いまや「日本の国民食」と呼ばれるほど親しまれています。しかし、その姿は世界中のカレー料理と比べるとかなり独特です。

とろみのあるルウ、白いご飯、じゃがいもやにんじんの具材――この組み合わせは、どのようにして定着したのでしょうか。

第35回雑学調査レポートでは、そんな「カレーライス」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

家庭料理の定番の背景に「日本海軍」

カレーライスと聞くと、家庭の鍋や給食、キャンプ、学食などを思い浮かべる人が多いかもしれません。ところが、日本のカレーライスのルーツをたどると、意外にも「海軍の食事」と深く結びついていたという説があります。

農林水産省のホームページの『うちの郷土料理』では、”よこすか海軍カレー”の由来として、明治時代の日本海軍が白米中心の食事による脚気(かっけ)に悩まされていたことその栄養改善のためにイギリス海軍で提供されていたカレー風味のシチューを取り入れたことが紹介されています。

つまり、いま私たちが当たり前のように食べているカレーライスは、単なる「おいしい洋食」ではなく、兵士の健康を守るための実用的な食事として広まった可能性があるのです。

なぜカレーが脚気対策に向いていたのか

明治時代の海軍では、白米をたくさん食べる食生活が一般的でした。しかし、白米だけに偏ると、ビタミンB1が不足しやすくなります。

ビタミンB1が足りないと、脚気という病気になることがあります。脚気は足のしびれやむくみ、だるさなどを引き起こし、重くなると命にもかかわる病気です。

そこで注目されたのが、肉や野菜を一緒に煮込めるカレーでした。カレーであれば、肉、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもなどを一皿で食べられます。さらに、香辛料の香りで食欲も出やすくなり、長い航海中でも大量に作りやすく、白米にも合わせやすいといったメリットもありました。

そのため、カレーは「おいしい料理」であると同時に、「栄養を補いやすい料理」でもあったということです。

こうした肉や野菜をたっぷり使ったカレーで栄養を補うことで、脚気の患者数は激減しました。そして、退役した兵士たちが故郷へ帰ったあと、海軍式のカレーライスを日本各地へ広めていったとされています。

日本式カレーの「とろみ」

日本のカレーライスの大きな特徴は、どろっとした「とろみ」です。インド料理のカレーには、さらっとしたもの、油分の多いもの、豆やヨーグルトを使ったものなど多くの形がありますが、日本の家庭的なカレーは小麦粉やルウでとろみをつけるのが一般的です。

農林水産省によると、このとろみは、カレーをご飯に合うようにするためと、揺れる船の上でこぼれにくくするための工夫だったとされています。

日本のカレーライスは、ただインドのカレーをそのまま輸入した料理ではありません。インド由来の香辛料文化が、イギリスを経由して「カレー風味のシチュー」のような形になり、それが日本海軍の食事として取り入れられ、さらに日本人の主食である米に合うように変化していきました。

つまり、日本式カレーのとろみは、味の好みだけでなく、「ご飯にからむ」「船でこぼれにくい」「大鍋で作りやすい」といった実用性の面で発達した可能性があるのです。

明治時代の日本では、カレーは非常に新しい料理だった

日本にカレーの作り方が紹介されたのは、明治時代の初期です。

『S&Bカレー.com』によれば、1872年に料理書『西洋料理指南』で日本初のカレー調理法が紹介されました。そこでは、鶏肉やえびだけではなく、赤ガエルも具材として挙げられていたとされます。

今の感覚では、カレーに赤ガエルというのはかなり衝撃的だと言えるでしょう。しかし、当時のカレーはまだ「日本人の家庭料理」ではなく、西洋料理を学ぶなかで紹介された新しい料理でした。どの具材が合うのか、どんな形で食べるのかも、まだ定まっていなかった時代です。

その後、1876年には札幌農学校の寮の食堂にカレーライスが登場し、1877年には東京の食堂「風月堂」にライスカレーが登場したとされています。

海軍カレーはいまも横須賀の名物

この海軍とカレーの関係が、現在の「よこすか海軍カレー」にもつながっています。

農林水産省によれば、よこすか海軍カレーは、海軍にゆかりの深い神奈川県横須賀市で、1999年に街おこしの一環として生まれました。

現在では横須賀市を代表する名物料理となり、市内の認定店では、海軍の献立にならってカレーライスにサラダと牛乳を付けて提供することがルールとされています。

この「カレー、サラダ、牛乳」という組み合わせは、ただの観光メニューではありません。これも栄養バランスを考えた海軍の食事を再現する意味があるのです。

そういう意味では、家庭で食べるカレーライスにも、サラダや牛乳を添えると、海軍カレーらしさが少し出ると言えるでしょう。

まとめ

  • 日本のカレーライスは、明治時代の海軍が脚気に悩まされていたために、イギリス海軍のカレー風味のシチューを取り入れたことが始まりとされている
  • カレーライスは栄養を補いやすく、食欲の増進や大量に作りやすい、白米に合うというメリットがあった
  • カレーライスのとろみは、白米に合うようにするためと、揺れる船の上でこぼれにくくするため
  • 明治時代のカレーライスは、まだ発展途上の新しい料理だった
  • 「よこすか海軍カレー」は神奈川県横須賀市の名物料理

何気なく食べているカレーライスも、その歴史をたどると、明治時代の食生活や海軍の工夫、日本人の米食文化と深く関わっていることがわかります。

身近すぎて見過ごしてしまいがちな一皿ですが、実は日本ならではの改良と実用性が詰まった料理なのです。

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