世界水泳連盟は構造を細かく定めている
世界水泳連盟の競技規則では、レーンロープの形状や設置方法について、細かな条件が定められています。
レーンロープは、競泳コースの全長にわたって設置しなければなりません。
張力を調整するスプリングや巻き取り装置など、波を弱める機能を持たない部分は、ロープの両端でそれぞれ200ミリメートル未満に収める必要があります。
また、各レーンの境界に設置できるレーンロープは一本だけです。
このほかにも、次のような項目が規定されています。
- ロープを固定するアンカーの位置
- 波を弱める部品が水中に沈む割合
- ワイヤーやアンカーが耐えるべき力
- レーンロープ全体の張力
- 距離を示す色の配置

細かな規定が設けられているのは、泳ぐ位置によって水面の状態が大きく変わると、競技の公平性に影響するためです。
例えば、レーンロープの中央部分にしか円盤がなければ、スタート地点やターン付近で発生した波を十分に弱められません。
スタート時の入水や壁を蹴るターン、浮き上がった直後のストロークでは、短時間に多くの水が動きます。
コースのほぼ全長を同じ構造で区切ることにより、選手がどの位置を泳いでいても、隣のレーンから受ける波の影響を小さくしています。
「中央レーンが有利」とは限らない
競泳では、予選や準決勝で速い記録を出した選手が、中央付近のレーンに配置されます。
そのため、中央レーンには物理的な有利さがあると考えられることがあります。
外側のレーンでは、選手が作った波がプールの壁にぶつかり、反射して戻ってくる可能性があります。中央レーンは左右の壁から離れているため、壁からの反射波を受けにくいという考え方です。
しかし、現代の競技用プールには、波の影響を抑えるための設備が複数設けられています。
- 波を弱める競技用レーンロープ
- 水をプールの外周へあふれさせるオーバーフロー設備
- 競技レーンと壁の間に設けられた空間
- 外側に設置された追加のレーンロープ
- 波の影響を抑えやすい十分な水深
日本国内の主要な全国大会を対象にした研究では、2007年から2019年までの競泳記録が分析されました。
対象となったのは、5,949人の選手による5万6,191件の記録です。
分析の結果、中央レーンが有利であるという主張を支持する明確な統計的証拠は確認されませんでした。
ただし、この結果は、中央レーンによる効果がまったく存在しないことを証明したものではありません。研究者も、中央レーン有利説を支持できなかった一方で、完全に否定することもできないと説明しています。
プールの水深や形状、壁までの距離、排水設備、レーンロープの性能などによって、ごくわずかな差が生じる可能性は残ります。
また、中央レーンの選手が優勝することが多い理由には、予選や準決勝で速かった選手が中央に配置される仕組みも関係しています。
中央レーンの勝率だけを見ても、レーンそのものが有利なのか、配置された選手がもともと速かったのかを簡単に区別することはできません。
