隣のレーンから来る波も泳ぎに影響する
選手が受けるのは、自分自身が作った波だけではありません。隣のレーンを泳ぐ選手が発生させた波も、レーンロープを越えて伝わる可能性があります。
隣から波が入ってくると、水面の上下動や水の流れが複雑になります。その結果、選手が姿勢を保ちにくくなったり、ストロークや呼吸のリズムが乱れたりすることがあります。
一般に、選手の泳ぐ速度が高くなるほど、発生する波も大きくなる傾向があります。
レーンロープの性能を調べた実験でも、泳ぐ速度が上がるにつれて、観測された最大波高が大きくなりました。
同じ実験では、波の高さが大きい順に、次のような結果が示されています。
- バタフライ
- クロール
- 背泳ぎ
- 平泳ぎ
バタフライでは、両腕を同時に水面から出し、上半身を上下させながら進みます。短い時間に多くの水を動かすため、比較的大きな波が発生しやすいと考えられます。
ただし、この順位は一つの実験条件で得られた結果です。選手の体格や技術、泳ぐ速度、プールの水深や構造などによって、発生する波の大きさは変わります。
トップ選手が高速で競い合う大会では、プール内に大きな波が連続して発生します。そのため、レーンロープが波をどれだけ弱められるかが重要になります。
円盤状の部品が波を細かく崩している
競技用のレーンロープは、一本の滑らかなロープではありません。
中心に通されたワイヤーを囲むように、多数の円盤状の部品やフロートが並んでいます。この複雑な形状が、波を弱めるために役立っています。
波がレーンロープにぶつかると、波のエネルギーは大きく三つに分かれます。
- 一部はレーンロープの反対側へ通り抜ける
- 一部は波が来た側へ反射する
- 残りは円盤の動きや渦、細かな水流などに変わる

円盤やフロートの周囲では、水の流れが細かく分かれ、複雑な渦が発生します。大きくまとまっていた波のエネルギーが細かな水の動きへ変わることで、波の高さや勢いが弱まります。
レーンロープが波を完全に消すわけではありません。それでも、隣のレーンへ進む波と、元のレーンへ戻る反射波の両方を小さくできます。
円盤の一部が水面下に沈んでいる理由
レーンロープの円盤やフロートは、水面の上に浮いているだけではありません。一定の割合が水面下に沈むように設計されています。
世界水泳連盟の規則では、波を弱める部品の高さのうち、2分の1以上、3分の2以下が水面下に入る構造を求めています。
水面の波は、水面だけが上下する現象ではありません。水面下の水も動きながら、波のエネルギーを周囲へ伝えています。
部品を水面下まで沈めることで、水面の上下動だけでなく、その下にある水の流れにも作用させられます。
反対に、部品の大部分が水面より上にあると、水中の流れを十分に乱せません。波を効果的に弱めるには、水面と水面下の両方に接する構造が必要です。
