第三胃「オマサム」は水分などを吸収する
第三胃はオマサムと呼ばれ、日本語では葉胃といいます。
第三胃の内部には、薄いひだが何枚も重なっています。その形が本のページや植物の葉に似ていることから、葉胃という名前が付けられました。
第一胃と第二胃で発酵され、十分に細かくなった内容物は、第三胃へ送られます。
第三胃では、内容物に含まれる水分のほか、揮発性脂肪酸や電解質などの一部が吸収されます。
多数のひだによって内側の表面積が広くなっているため、効率よく吸収できる構造になっています。
水分などがある程度吸収された内容物は、その後、第四胃へ送られます。
第四胃「アボマサム」は人間の胃に近い
第四胃はアボマサムと呼ばれ、日本語では皺胃といいます。
4つの区画の中で、人間、犬、豚などが持つ胃に最も近い働きをするのが第四胃です。そのため、「真胃」と呼ばれることもあります。
第四胃には、消化液を分泌する腺が発達しています。塩酸やペプシンなどが働き、主にタンパク質の消化が進められます。
第一胃では、微生物による発酵が行われます。一方、第四胃では、酸と消化酵素による消化が行われます。
第四胃で消化されるのは、牛が食べた飼料だけではありません。
第一胃で増殖した微生物の一部も、内容物と一緒に第四胃や小腸へ運ばれます。微生物を構成しているタンパク質は消化され、最終的にはアミノ酸として牛の体内へ吸収されます。
牛は微生物に植物を発酵してもらうだけでなく、増殖した微生物そのものも、重要なタンパク質源として利用しているのです。
牛が草を栄養に変えられる仕組み
人間が大量の草を食べても、牛と同じように栄養を取り出すことはできません。
人間の消化器官には、牛の第一胃のような大規模な発酵区画がありません。また、人間自身も、セルロースを直接分解する消化酵素を持っていません。
人間の大腸でも、腸内細菌による食物繊維の発酵は行われています。しかし、牛の第一胃に比べると規模が小さく、草の繊維から十分なエネルギーを得ることは困難です。
牛の場合は、第一胃に生息する微生物が、セルロースなどの植物繊維を発酵させ、揮発性脂肪酸へ変えます。
牛はその揮発性脂肪酸を吸収し、体を動かす、成長する、妊娠を維持する、乳を作るといった活動に利用します。
第一胃の微生物は、ビタミンKや一部のビタミンB群も作ります。健康な第一胃を持つ成牛では、通常の飼養条件で必要となる量の多くが、微生物の働きによって補われると考えられています。

ただし、牛がどのような草だけを食べても健康に育つわけではありません。
牛にも、水、エネルギー、タンパク質、ミネラルなどが必要です。必要な栄養量は、年齢、体重、成長段階、妊娠の有無、乳の生産量などによって変化します。
牛が繊維の多い植物を効率よく利用できるのは、4つの区画を持つ胃の構造と、微生物との共生関係があるためです。

