牛のげっぷは生命を守る重要な働き
第一胃で微生物が飼料を発酵させると、揮発性脂肪酸だけでなく、二酸化炭素やメタンなどのガスも発生します。
ミネソタ大学エクステンションの資料では、第一胃内で1時間当たり約30~50米クォートのガスが発生すると説明されています。リットルに換算すると、約28~47リットルです。
牛は、発生したガスの多くをげっぷによって体外へ排出します。このガス排出は、専門的には「噯気(あいき)」と呼ばれます。
何らかの理由でガスを正常に排出できなくなると、第一胃が異常に膨らむ「鼓脹症」が起こることがあります。
第一胃が大きく膨らむと、横隔膜が圧迫され、呼吸が難しくなります。さらに、心臓へ戻る血液の流れにも影響が及ぶ可能性があります。
鼓脹症が重症化すると、牛が倒れたり、死亡したりすることもあります。
人間から見ると何気ない現象に思える牛のげっぷは、第一胃で発酵を行う牛にとって、命を守るために欠かせない機能なのです。
金属片が第二胃にたまりやすい理由
牛は牧草や飼料を食べるとき、舌を使って植物をまとめて口へ運びます。
そのため、飼料の中に針金、くぎ、金属片などが混じっていると、十分に選別しないまま飲み込んでしまうことがあります。
飲み込まれた異物のうち、重くて密度の高いものは、第二胃にたまりやすいとされています。
鋭い金属片が第二胃の壁に刺さると、炎症や感染が起こる可能性があります。金属片が胃壁を突き抜けた場合は、周囲の組織にも影響が及びます。
第二胃は、横隔膜や心臓に近い場所にあります。異物が深く進むと、心臓を包んでいる心膜などに炎症が広がることもあります。
このような金属異物による病気は、一般に「ハードウェア病」と呼ばれます。日本語では、異物の位置や症状に応じて、「創傷性第二胃炎」や「創傷性心膜炎」などと呼ばれます。
予防や治療の方法の一つとして、牛に専用の磁石を飲ませることがあります。
磁石を第二胃内にとどめ、飲み込んだ鉄製の異物を付着させることで、鋭い金属片が胃壁に刺さる危険性を下げます。
ただし、磁石に引き付けられない金属には効果がありません。また、すでに異物が胃壁を突き抜けている場合などには、別の処置が必要です。
牛に磁石を飲ませる方法は奇妙に見えますが、重い異物が第二胃に集まりやすい性質を利用した対策です。
