時計の「4」がIVではなくIIIIなのはデザインのため!?【IIIIの表記も間違いではない】

普段使っているものほど、細かな違いには気づきにくいものです。時計もその一つで、何度も目にしているはずなのに、文字盤をじっくり見ると「なぜこうなっているのだろう」と感じる部分があります。

第156回雑学調査レポートでは、そんな「時計」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

時計では「4」を「IIII」と書くことがある

ローマ数字が使われた時計を見ると、4時の位置に「IV」ではなく「IIII」と書かれていることがあります。

学校などでは、ローマ数字の4は「IV」と習うのが一般的です。そのため、「IIIIは間違いなのでは」と感じる人もいるかもしれません。

しかし、「IIII」は時計メーカーの誤表記ではありません。腕時計や掛け時計、塔時計などで昔から使われてきた表記で、「時計の4」と呼ばれることもあります。

では、なぜ時計では「IV」ではなく「IIII」が使われるのでしょうか。

実は、その理由が一つだけに決まっているわけではありません。『セイコーミュージアム 銀座』などでは複数の説が紹介されており、文字盤の見た目を整えやすいことや、数字を読み取りやすくなること、昔から「IIII」という表記が使われていたことなどが理由として挙げられています。

そもそも「IIII」は間違ったローマ数字ではない

現在のローマ数字では、4を「IV」と書くのが一般的です。

「I」は1、「V」は5を表します。「IV」は、5を表す「V」の前に1を表す「I」を置くことで、「5から1を引いた4」を示しています。

このように、小さい数字を大きい数字の前に置いて引き算をする書き方を減算式と呼びます。

一方、「IIII」はとても単純です。

「I」は1なので、4つ並べれば「1+1+1+1」となり、4を表せます。このように数字を足し合わせて表す方法は加算式です。

ローマ数字では、もともと加算式の表記も広く使われていました。

『Fondation Haute Horlogerie』によると、古代には4を「IIII」、9を「VIIII」、19を「XVIIII」のように表す例がありました。その後、「IV」や「IX」のような減算式も使われるようになったとされています。

つまり、「IIII」は時計を作るために考案された特別な数字ではありません。

現在では「IV」が標準的な表記として広く知られていますが、「IIII」にも非常に長い歴史があります。時計の文字盤には、昔から存在していたローマ数字の書き方が残っていると考えることができます。

「IIII」のほうが文字盤の左右のバランスを整えやすい

時計で「IIII」が使われる理由として特によく知られているのが、文字盤の見た目に関する説です。

アナログ時計では、4時と8時がおおよそ左右で対応する位置にあります。

8時をローマ数字で表すと「VIII」です。「V」と3本の「I」で構成されるため、全部で4文字あります。

一方、4時を「IV」とすると2文字しかありません。

文字盤に「IV」と「VIII」を配置すると、8時側のほうが文字数が多く、見た目に重たく感じられることがあります。

そこで4時を「IIII」にすると、4時も8時も4文字になります。

4時は「IIII」、8時は「VIII」となり、文字が占める面積やボリュームが近くなるため、文字盤の左右を整えやすくなるわけです。

『セイコーミュージアム 銀座』では、「IIII」を使うと左右対称の位置にある「VIII」とのバランスが良くなるという説が紹介されています。『Fondation Haute Horlogerie』でも、視覚的なバランスが理由の一つとして挙げられています。

時計は時刻を確認するための道具ですが、文字盤そのものの美しさも重視されます。特に高級時計や装飾時計では、数字や針、目盛りを円の中へどのように配置するかがデザインを大きく左右します。

そのため、「IV」よりも文字量の多い「IIII」が、文字盤を美しく見せるうえで都合が良かったと考えられています。

1から12までを4個ずつ3つのグループに分けられる

「IIII」を使うと、文字盤全体にも分かりやすい規則が生まれます。

1から12までをローマ数字で並べると、次のように4個ずつ分けることができます。

I・II・III・IIII

V・VI・VII・VIII

IX・X・XI・XII

最初の4個は「I」だけで構成されています。

次の4個は「V」が使われる数字です。

最後の4個は「X」が使われる数字になります。

つまり、「IIII」を採用すると、12個の数字を「I」「V」「X」を中心とする3つのまとまりとして配置できます。

4を「IV」にすると、最初のグループに「V」が入ってしまうため、この規則性が崩れます。

『Fondation Haute Horlogerie』でも、この3グループへの分け方が文字盤の視覚的な調和につながる特徴として紹介されています。

4時だけを見ると「IV」のほうが短くて簡単に思えます。しかし、時計の文字盤は12個の数字を一つの円の中に並べるデザインです。文字盤全体で見ると、「IIII」を使うことで数字の配置にまとまりが生まれます。

「IV」より「IIII」のほうが読みやすかったという説もある

数字の読みやすさも、「IIII」が使われてきた理由として考えられています。

普通の文章では、文字は同じ方向を向いて横一列に並んでいます。

ところが時計では、数字が円形の文字盤に沿って配置されます。古い時計では、文字盤の中心に数字の上側を向けるように、数字を放射状に配置したものもあります。

このような文字盤では、数字を見る位置によって向きが大きく変わります。

「IV」は「I」と「V」という形の違う2文字を組み合わせた数字です。向きが変わることで、数字の形を瞬間的に判断しにくくなる場合があります。

一方、「IIII」は同じ形の「I」が4本並ぶだけなので、構造が単純です。

『Fondation Haute Horlogerie』は、数字を文字盤の中心へ向けて配置した場合、「IV」が読みにくくなることを「IIII」が使われる理由の一つとして紹介しています。

また、『セイコーミュージアム 銀座』では、「IV」にすると6を表す「VI」と見分けにくくなるため、「IIII」が使われたという説も挙げられています。

現代では時計のデザインも多様になっているため、必ず「IIII」のほうが読みやすいとは限りません。それでも、昔の時計の配置方法を考えると、単純な「IIII」が数字を識別するうえで便利だった可能性があります。

昔は「IIII」自体が珍しい表記ではなかった

時計に「IIII」が残っている理由を考えるうえでは、時計が作られ始めた時代の数字表記も重要です。

現在は「IV」が一般的なので、「IIII」は時計だけに残った特殊な書き方のように見えます。

しかし、昔のヨーロッパでは事情が違いました。

『セイコーミュージアム 銀座』では、ヨーロッパでは17世紀頃まで、4を「IV」ではなく「IIII」と表す方法が一般的だったという説が紹介されています。また、17世紀頃までに建設された有名な機械式塔時計には「IIII」が多く見られるとされています。

『Fondation Haute Horlogerie』によると、時を知らせる機械式時計は13世紀末頃に登場し、15世紀頃になると時計師たちが文字盤を設けるようになりました。そこへ、当時広く使われていたローマ数字が採用されたと説明されています。

時計の文字盤が作られるようになった時代に「IIII」が普通に使われていたのであれば、時計に「IIII」が採用されたことも不思議ではありません。

その後、一般的なローマ数字の表記では「IV」が広く定着していきましたが、時計では昔のデザインが伝統として残った可能性があります。

フランス国王シャルル5世が「IIII」を使わせたという有名な説

時計の「IIII」には、フランス国王シャルル5世にまつわる有名な逸話もあります。

『CITIZEN WATCH』の公式FAQでは、1364年のパリに由来するという説が紹介されています。

この話では、宮殿に設置された塔時計の4時が「IV」と書かれていました。しかし、シャルル5世がその表記を気に入りませんでした。

そこで「IV」を「IIII」へ変更するよう命じ、それが時計の世界へ広がったとされています。

『セイコーミュージアム 銀座』でも、シャルル5世が「自分の称号である5から1を引くIVは縁起が悪い」と考え、「IIII」に変更させたという説が紹介されています。

ただし、この話を「IIIIという数字が初めて生まれた出来事」と考えることはできません。

「IIII」という表記は、シャルル5世が生きた14世紀よりはるか以前から使われていました。

そのため、この逸話は「IIIIの発明」に関する話ではなく、「時計でIIIIが使われるようになった理由」を説明する伝承の一つとして見るほうが分かりやすいでしょう。

神の名前を避けるため「IIII」にしたという説もある

「IIII」に関しては、古代ローマの神ユピテルに由来するという説も知られています。

ユピテルは英語の「Jupiter」に当たる神で、古代ローマでは最高神として信仰されていました。

ラテン語ではユピテルの名前を「IVPPITER」のように表記していたため、冒頭の「IV」が神の名前を連想させます。

そのため、数字の4として「IV」を使うことを避け、「IIII」と書いたという説です。

『Fondation Haute Horlogerie』も、この宗教的な理由を「IIII」に関する説の一つとして取り上げています。

ただし、「IIII」が時計に定着した理由を、この説だけで説明することは難しいと考えられています。時計の文字盤で「IIII」が使われる背景には、歴史的な数字表記やデザイン、読みやすさなど、複数の事情が関係していると見るのが自然です。

「IIII」は時計の決まりではなく、長く続く伝統

ローマ数字を使った時計が、すべて「IIII」を採用しているわけではありません。

時計によっては、一般的なローマ数字と同じ「IV」が使われています。

つまり、「時計では必ず4をIIIIと書かなければならない」という規則が存在するわけではありません。

「IIII」と「IV」のどちらを使うかは、ブランドやメーカー、時計が作られた時代、文字盤のデザインなどによって異なります。

現代の時計では、数字そのものを使わない文字盤もありますし、アラビア数字の「4」を使う製品も数多く存在します。

その中で現在も「IIII」が使われ続けているのは、この表記が時計文化の一つとして長く受け継がれてきたためと考えられます。

実際の時計を見ると「IIII」を使う理由が分かりやすい

ローマ数字の時計を見かけたときは、4時の位置を確認すると「IIII」の特徴を実際に観察できます。

特に分かりやすいのは、4時と8時の比較です。

4時が「IIII」、8時が「VIII」になっている時計では、どちらも4文字です。文字盤の左右に同程度の文字量が配置されるため、全体としてまとまりのある印象になります。

次に、1時から12時まで順番に数字を追ってみると、

「I・II・III・IIII」

「V・VI・VII・VIII」

「IX・X・XI・XII」

という3つのグループも確認できます。

別の時計では4時が「IV」になっていることもあります。その時計と「IIII」を使った時計を見比べると、同じローマ数字の文字盤でも印象がかなり変わることが分かります。

普段何気なく見ている時計の「4」には、古代から続く数字の歴史と、時計職人が文字盤を美しく見せるために積み重ねてきた工夫が残されているのです。

まとめ

  • 時計の「IIII」は誤表記ではなく、昔から使われてきたローマ数字の表し方の一つ
  • 「IIII」を使うと4時の「IIII」と8時の「VIII」の文字量が近くなり、文字盤の左右のバランスを整えやすい
  • 「IIII」を採用すると、1〜12の数字を「I」「V」「X」を中心とした3つのグループに分けられる
  • 「IIII」は形が単純なため、文字盤上で「IV」より識別しやすかったという説もある
  • 昔のヨーロッパでは「IIII」自体が珍しい表記ではなく、その習慣が時計文化に残った可能性がある
  • フランス国王シャルル5世が「IV」を「IIII」に変更させたという有名な逸話もある
  • 時計で「IIII」を使うことに決まりはなく、「IV」を採用する時計も存在する
  • 「IIII」が現在も使われている背景には、歴史、読みやすさ、文字盤の美しさなど複数の理由がある

普段は何気なく見ている時計も、細かな部分に目を向けると、そこには長い歴史やデザイン上の工夫が隠れています。「IIII」という表記も、その一つです。

今度ローマ数字の時計を見かけたときは、ぜひ4時の位置に注目してみてください。これまでとは少し違った見方で、時計を楽しめるかもしれません。

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