金といえば、高価な金属というイメージが強いかもしれません。しかし、調べてみると、その性質や使われ方には意外な事実がいくつもあります。
第152回雑学調査レポートでは、そんな「金」に関する雑学をご紹介していきます。
食用金箔には本物の金が使われている
高級な和菓子やケーキ、日本酒などを見ると、表面にキラキラと輝く金箔がのっていることがあります。
「金色をした食品用の飾りなのでは」と思うかもしれませんが、食用金箔には実際に金が使われています。
日本では、金は食品添加物として扱われています。『国立医薬品食品衛生研究所』が公開している既存添加物の資料にも、品名「金」、別名「金箔」として掲載されています。また、『消費者庁』の資料では、金の用途として「着色料」と「製造用剤」が示されています。
つまり、食品の上で輝いている金箔は、単に金色に着色した素材ではなく、金そのものを含む食品添加物ということです。

ただし、すべての金箔が金100%で作られているわけではありません。
金箔には、金に銀や銅などを加えた合金もあります。食用金箔も製品によって成分が異なり、金を約95%含むものや、金99.99%のものなどが販売されています。
そのため、食用金箔を「本物の金」と表現することに大きな問題はありませんが、より正確には「金を主成分として作られているものがある」と理解するとよいでしょう。
また、金箔という名前が付いていれば何でも食べられるわけではありません。工芸品や美術品に使われる金箔は、食品として口に入れることを前提に作られていない場合があります。
料理やお菓子に使用するときは、「食用」や「食品用」として販売されている金箔を選ぶことが大切です。
金箔が食べられる理由には金の「反応しにくさ」が関係している
「金属を食べて大丈夫なのだろうか」と疑問に思う人もいるでしょう。
食用金箔が食品に利用されている理由を知るうえで重要なのが、金という金属の性質です。
金は、ほかの物質と化学反応を起こしにくい非常に安定した金属です。水などにも簡単には溶けません。
『European Food Safety Authority』が2016年に公表した、食品添加物としての金「E 175」に関する科学的評価でも、元素状の金は非常に溶けにくいことが示されています。
一般的な栄養素は、食べたあとに消化され、小さな物質に分解されて体内へ吸収されます。
しかし、金は食べ物に含まれる糖質やたんぱく質のように消化されるものではありません。そのため、金箔を食べても、金が栄養として体内で利用されるわけではありません。
食用金箔が食品に使われているのは、金から栄養を取るためではなく、主に料理やお菓子を美しく見せるためです。
「食べても大丈夫」と「たくさん食べてもよい」は同じ意味ではない
金箔について、「体に吸収されにくいなら、いくら食べても問題ない」と考えるのは適切ではありません。
『European Food Safety Authority』による2016年の評価では、金は非常に溶けにくいため、全身への移行や全身性の影響は低いと考えられました。
一方で、元素状の金が体内でどのように吸収、分布、代謝、排泄されるのかについては、利用できるデータが限られていることも指摘されています。
食品添加物として使用される金について、十分な毒性学的データがそろっていなかったため、完全なリスク評価を行うには情報が不足しているとされました。
また、金については「ADI」が設定されていません。
ADIとは「許容一日摂取量」のことで、ある物質を一生涯にわたって毎日摂取しても、健康への影響がないと考えられる1日当たりの量を示す指標です。
ADIが設定されていないことだけを理由に、危険だと判断することはできません。一方、「どれだけ食べても安全だと確認されている」という意味でもありません。
食用金箔は、料理の装飾としてごく少量使われるのが一般的です。食品として利用する場合は、食用として製造された製品を、その製品に示された方法で使用することが基本となります。
金箔は約0.0001ミリメートルまで薄くできる
金箔には、食べられること以外にも驚く特徴があります。
その一つが、圧倒的な薄さです。
『政府広報オンライン』が紹介している金沢の金箔は、厚さがおよそ1万分の1ミリメートルです。
数字にすると、0.0001ミリメートルほどしかありません。
1ミリメートルの1万分の1という、肉眼では厚さを確認することが難しいほどの薄さです。
さらに、金はわずか1グラムでも、およそ1平方メートルまで打ち延ばすことができるとされています。
非常に少ない量の金から、大きな金箔を作れるということです。

「高価な金を食べ物に使うのはもったいない」と感じるかもしれません。しかし、料理の上にのっている金箔は極端に薄いため、見た目から想像するほど大量の金が使われているわけではありません。
金箔が少量でも強い存在感を出せるのは、金を極限まで薄く延ばせるからです。
金を薄くできる秘密は「展性」にある
金を0.0001ミリメートルほどまで薄くできるのは、金が「展性」に優れた金属だからです。
展性とは、金属を叩いたり圧力を加えたりしたときに、割れずに薄く広がる性質を意味します。
たとえば、硬い素材をハンマーで強く叩けば、割れたり欠けたりすることがあります。
一方、展性の高い金属は、叩くことで少しずつ平らに広げられます。
金は特に展性に優れているため、非常に薄い箔を作ることが可能です。
ただし、金を薄くする作業は、単純にハンマーで叩くだけではありません。
金沢で受け継がれている伝統的な「縁付金箔(えんつけきんぱく)」では、金箔作りに特別な紙が使われています。
『文化遺産オンライン』によると、加工した手すき和紙で作られる「箔打紙(はくうちがみ)」に金を挟み、繰り返し打ち延ばしていきます。
製造途中の「澄(ずみ)」と呼ばれる段階では、金をおよそ1000分の1ミリメートルまで薄くします。そこからさらに加工を続け、最終的には約1万分の1ミリメートルまで薄く仕上げます。

金箔は7万回以上叩いて作られることもある
伝統的な金箔作りには、非常に多くの工程があります。
『政府広報オンライン』では、完成までに7万回以上叩いて仕上げる縁付金箔が紹介されています。
ただし、最初から最後まで同じ金をひたすら叩き続けるわけではありません。
金を紙の間に挟んで叩き、ある程度薄くなったら切り分けます。そして再び紙の間に並べ、さらに叩いて薄くしていきます。
叩くことで熱を持った箔を冷ましたり、金が均一に広がるように調整したりする作業も必要です。
特に重要なのが、金と金の間に挟む紙です。
金箔作りでは、金の性質だけでなく、箔打紙の状態も仕上がりに大きく関係します。薄い金を均一に延ばすには、金を受け止めながら適度に力を伝える紙が必要になるためです。
食べ物の上では一瞬で口に入ってしまう小さな金箔ですが、その薄さを作り出すまでには長年受け継がれてきた技術があります。
金箔を料理に使う最大の理由は味ではなく見た目
金箔がのった料理を見ると、「金にはどんな味がするのだろう」と気になるかもしれません。
しかし、食品添加物としての金は、味を付ける調味料や、香りを付ける香料として使われているわけではありません。
『消費者庁』の資料では、金の用途として「着色料」と「製造用剤」が示されています。
食用金箔を料理に加える大きな目的は、味を変えることではなく、見た目を華やかにすることにあります。
たとえば、黒い羊羹の上に小さな金箔を散らすと、黒と金の強いコントラストが生まれます。
日本酒に金箔を浮かべれば、透明な液体の中で金色が目立ちます。チョコレートやケーキに少量の金箔を添えた場合も、表面が一気に華やかな印象になります。
金箔は少量でも非常に目立つため、食品の見た目を演出する素材として使いやすいのです。
金はなぜ金色に見えるのか
金箔が装飾として目立つ理由には、金そのものの色も関係しています。
鉄やアルミニウム、銀など、多くの金属は銀色や灰色に近い見た目をしています。
一方、金は特徴的な黄色みを帯びた金色に見えます。
これは、金が光を反射するときの性質がほかの多くの金属とは異なるためです。
私たちが物を見るとき、その物体から目に届いた光によって色を感じています。金は光のうち青色に近い一部の光を吸収しやすく、残った光が反射して目に届くことで、黄色から黄金色に見えます。
金箔になると表面積が非常に大きくなるため、少量の金でも光を反射する面を広く作ることができます。
その結果、料理に少し添えるだけでも、キラキラとした金色が目立ちやすくなります。
わずか1グラムの金でも広い範囲を輝かせられる
金箔は、少ない金で大きな面積を覆えるという点でも、装飾に向いています。
金1グラムを塊のまま置いた場合、見える表面積はそれほど大きくありません。
しかし、非常に薄い金箔へ加工すると、およそ1平方メートルまで広げることができます。
同じ1グラムでも、薄く広げれば人の目に見える部分が大幅に増えるわけです。
そのため、料理全体を金で覆わなくても、小さな金箔を数か所に置くだけで、金色の輝きを強く感じさせることができます。
金は高価な金属ですが、金箔に加工すれば非常に少ない量でも華やかな見た目を作れます。
食用金箔は、金という素材の「色」と「薄く広げられる性質」の両方をうまく利用した装飾方法といえるでしょう。
金箔は食べ物以外にも長く使われてきた
金箔は、食品の装飾のために生まれたものではありません。
日本では、寺院や仏像、仏具、屏風、漆器など、さまざまな場所で金箔が使われてきました。
金は化学的に安定しているため、鉄のように簡単にさびて色が変わる金属ではありません。さらに、非常に薄く延ばして広い範囲を覆うことができます。
こうした性質から、建築物や美術工芸品を華やかに見せる素材として重宝されてきました。
金箔で有名な地域の一つが石川県金沢市です。
金沢では長い歴史の中で金箔の製造技術が発達し、現在でも伝統的な金箔作りが受け継がれています。
食用金箔も、こうした金箔文化から生まれた活用方法の一つとして見ることができます。
食用金箔と工芸用金箔は区別して考える
ここで注意したいのが、「金なら何でも食べられる」というわけではないことです。
食品に使う金箔と、アクセサリーや美術工芸品に使う金は、同じ感覚で扱うものではありません。
日本では、食品添加物について食品衛生法に基づくルールが設けられています。『消費者庁』では、人の健康を損なうおそれがないと認められるものについて、必要に応じて成分規格や使用基準などを定めています。
一方、アクセサリーや工芸品は、そもそも人が食べることを想定して作られていません。
金以外の金属が含まれている場合もあれば、製造や加工の工程で食品用途とは異なる材料が使用されることもあります。
そのため、工芸用の金箔を見て「金だから食べられる」と判断するのは避けたほうがよいでしょう。
料理やお菓子に使う場合は、「食用金箔」「食品用」などと表示された製品を選び、商品に記載されている使用方法に従うことが重要です。
金箔を食べても金の栄養が取れるわけではない
金箔には高級なイメージがあるため、「体に良い成分も含まれているのでは」と思う人もいるかもしれません。
しかし、金はビタミンやミネラルのように、人間が栄養として摂取することを目的とした物質ではありません。
食用金箔を食べても、金からエネルギーを得たり、不足している栄養素を補ったりできるわけではありません。
金箔が料理に使われる大きな意味は、食べ物を華やかに見せることです。
極端に薄くできるため少量でも目立ちやすく、金特有の色と輝きによって特別感を演出できます。
つまり、食用金箔の価値は栄養面というよりも、見た目や文化、加工技術にあると考えると分かりやすいでしょう。
まとめ
- 食用金箔には実際に金が使われており、日本では食品添加物として扱われている
- 金は化学的に安定していて非常に溶けにくく、一般的な栄養素のように消化・吸収される物質ではない
- 食用金箔は栄養を取るためではなく、主に料理やお菓子を華やかに見せるために使われている
- 金箔は約0.0001ミリメートルまで薄くでき、わずか1グラムの金を約1平方メートルまで広げられる
- 金を極端に薄くできるのは、叩いても割れずに広がる「展性」に優れているためである
- 伝統的な金箔作りでは、金を特別な紙に挟み、7万回以上叩いて仕上げることもある
- 金箔は少量でも広い面積を輝かせられるため、料理の装飾に適している
- 工芸用の金箔やアクセサリーは食用を前提に作られていないため、食べる場合は「食用」「食品用」と表示された製品を選ぶ必要がある
普段は高価な金属として目にすることの多い金ですが、食用金箔として使われたり、驚くほど薄く延ばせたりと、意外な一面をいくつも持っています。
料理の上に金箔を見かけたときは、その輝きだけでなく、金ならではの性質や職人の技術にも注目してみると、これまでとは少し違った見方ができるかもしれません。

