焚き火やバーベキュー、料理など、私たちは日常のさまざまな場面で煙を目にします。あまりにも身近な存在ですが、「煙とはそもそも何なのか」と聞かれると、意外と答えるのは難しいかもしれません。
第139回雑学調査レポートでは、そんな「煙」に関する雑学をご紹介していきます。
煙とは何か?「燃えて出てきた気体」だけではない
焚き火やバーベキューでは、火の上からモクモクと煙が立ち上ります。形がなく、空気の流れに乗って動いていくため、「煙は燃えた物から出てくる気体」と考えたくなるかもしれません。
しかし、実際の煙は気体だけでできているわけではありません。
『NIST』では、煙を、物質が燃焼したり熱によって分解されたりしたときに生じる固体や液体の粒子、ガスに、周囲の空気が混ざったものとしています。
つまり、煙の中には主に次のようなものが一緒に存在しています。
- 非常に小さな固体粒子
- 非常に小さな液滴
- 燃焼によって発生したさまざまなガス
- 周囲から混ざり込んだ空気

たとえば木を燃やすと、目に見えないガスだけでなく、すすなどの細かな粒子も発生します。さらに、水分や燃料から生じた成分が小さな液滴になる場合もあります。
こうした小さな固体粒子や液滴が空気中を漂っている状態は、「エアロゾル」と深く関係しています。
煙を単純な気体として考えるよりも、「細かな粒子や液滴、ガスなどが空気と一緒に漂っているもの」と考えると分かりやすいでしょう。
気体は見えないのに、なぜ煙は見える?
煙について不思議なのが、「なぜ目に見えるのか」という点です。
空気そのものは、普段ほとんど見えません。酸素や窒素などの気体も、一つ一つを肉眼で見ることはできません。
それでも煙が白色や灰色、黒色のモヤとして見えるのは、煙の中に大量の細かな粒子や液滴が含まれているためです。
『NASA Science』によると、空気中を漂うエアロゾルは、その性質によって光を散乱したり、吸収したりします。明るい色や半透明の粒子は光を散乱しやすく、暗い色の粒子は光を強く吸収する傾向があります。
ここで重要なのは、私たちが煙の粒子を一粒ずつ見ているわけではないことです。
一つ一つの粒子は非常に小さく、肉眼では見えないものが少なくありません。しかし、それらが大量に集まって光に影響すると、全体として白や灰色、黒色のモヤのように見えるようになります。
霧や雲をイメージすると分かりやすいでしょう。
水蒸気そのものは目に見えませんが、水蒸気が冷えて非常に小さな水滴になると、その水滴が光を散乱するため雲や霧として見えるようになります。『NOAA』も、水蒸気は気体の状態では見えず、凝結して液滴になることで目に見えるようになると説明しています。
煙でも同じように、空気中に存在する大量の微粒子や液滴と光の作用によって、目に見える状態が生まれています。
煙の粒子はどのくらい小さい?髪の毛の30分の1ほどの粒子もある
モクモクとした煙は大きな塊に見えますが、その中を構成している粒子の一つ一つは非常に小さい場合があります。
『U.S. EPA』では、空気中に存在する固体粒子と液滴の混合物を「粒子状物質」と説明しています。粒子の中には肉眼で見えるほど大きなものもありますが、電子顕微鏡を使わなければ確認できないほど小さなものも存在します。
その代表例として知られているのが「PM2.5」です。
PM2.5とは、一般に直径2.5マイクロメートル以下の微細な粒子を指します。
1マイクロメートルは1ミリメートルの1000分の1なので、2.5マイクロメートルは0.0025ミリメートルです。
数字だけでは大きさを想像しにくいですが、『U.S. EPA』では人間の髪の毛と比較しています。
人間の髪の毛の平均的な直径は約70マイクロメートルです。これに対してPM2.5の上限となる2.5マイクロメートルは、その約30分の1しかありません。
つまり、煙の中には髪の毛の太さよりはるかに小さな粒子が含まれている場合があります。
一粒だけなら見えないほど小さくても、大量に空気中へ広がれば光を散乱したり吸収したりします。その結果、私たちの目には大きな煙の塊として見えるのです。
なお、煙に含まれる粒子がすべてPM2.5というわけではありません。煙にはさまざまな大きさや成分の粒子が含まれており、その中にPM2.5に分類される非常に細かな粒子も存在します。
白い煙はなぜ白く見える?
煙はいつも同じ色ではありません。
焚き火では白っぽい煙が出ることもあれば、灰色の煙が出ることもあります。燃えている物によっては、真っ黒な煙が立ち上る場合もあります。
この違いには、煙の中にどのような粒子や液滴が含まれているかが関係しています。
白っぽい煙では、光を強く吸収する黒い粒子の割合が比較的少なく、光を散乱しやすい粒子や液滴が多い場合があります。
特に水分が関係する場合には、「水蒸気」と「水滴」を分けて考えることが重要です。
水蒸気とは、気体になった水です。水蒸気そのものは基本的に目に見えません。私たちが熱い鍋ややかんの近くで目にする白いモヤは、水蒸気が冷えてできた非常に小さな水滴です。『NOAA』でも、気体である水蒸気は見えず、冷えて液滴になることで見えるようになると説明されています。
煙の場合も、水分を含む燃料が燃えることで発生した水分が細かな液滴になるなどして、白っぽい見た目に関係することがあります。
『NASA』が2019年にオーストラリアの山火事を解説した事例では、水分を含んだ大きな枝や幹などからは白っぽい煙が生じる一方、乾燥した燃料では黒っぽい煙が生じていたと説明されています。
ただし、「白い煙ならすべて水滴」という意味ではありません。燃えている物の種類によってさまざまな粒子や液滴が発生するため、煙の色だけで成分を正確に判断することは難しくなります。
黒い煙はなぜ黒く見える?
黒い煙では、すすや黒色炭素のような暗い粒子が重要な役割を持ちます。
『NASA Science』によると、黒色炭素は光を反射するよりも吸収しやすい性質があります。明るい粒子が光をさまざまな方向へ散乱するのに対し、黒色炭素のような暗い粒子は光を強く吸収します。
そのため、すすや炭素を多く含む粒子が大量に発生すると、煙は黒っぽく見えやすくなります。
『NASA』がオーストラリアの山火事を紹介した事例でも、黒い煙について、炭素を多く含む細かな粒子が光を吸収するため黒く見えると説明しています。
身近なところでは、ろうそくの炎に金属製のスプーンなどを近づけると、黒いすすが付着することがあります。こうしたすすも、炭素を多く含む微細な粒子です。
燃焼によってこのような粒子が大量に空気中へ放出されれば、黒い煙として見えることがあります。
白煙と黒煙は「燃え方」の違いでも変化する
同じ物を燃やしていても、煙の色が途中で変わることがあります。
たとえば焚き火では、火をつけたばかりのときには白っぽい煙が多かったのに、燃え方が変わると灰色や黒っぽく見えることがあります。反対に、黒っぽかった煙がしばらくすると薄くなる場合もあります。
煙の色は、燃料の種類だけで決まるものではないためです。
燃料に含まれる水分、燃焼温度、酸素の供給量、燃えている物の成分などが変化すると、発生する粒子や液滴の種類と量も変わります。
『NASA』が紹介した山火事の例では、乾いた燃料が燃えた場所では黒い煙が発生し、水分を残した太い枝や幹などが燃える場所では白っぽい煙が発生していました。山火事の中でも、燃えている部分によって白煙と黒煙の両方が発生することがあります。
そのため、「木を燃やせば白煙」「石油を燃やせば黒煙」のように単純に分けられるものではありません。
煙の色は、発生した微粒子や液滴が光をどのように散乱、吸収するかによって変わり、その粒子の種類や量は燃料や燃焼状態によって変化します。
煙の色は光の当たり方によっても違って見える
煙の色を決めるのは、煙の成分だけではありません。
周囲の明るさや太陽の位置、煙を見る方向、背景などによっても、同じ煙の見え方が変わります。
そもそも煙が見えるのは、煙の粒子が光を散乱したり吸収したりしているからです。そのため、煙と観察者、光源の位置関係が変われば、目に届く光の量も変化します。
明るい空を背景にすると煙が濃く見えることもあれば、見る角度によって白っぽく見える場合もあります。
『NASA Science』でも、エアロゾルによる光の散乱や吸収の程度は、粒子の物理的性質や成分、色などによって異なると説明しています。
そのため、煙の色だけを見て「この物質が多い」と断定することは難しく、実際の成分を調べるには測定が必要です。
煙の中には目に見えないほど小さな粒子も漂っている
煙が目に見える仕組みは興味深い現象ですが、煙に含まれる微粒子は健康との関係でも重要です。
『U.S. EPA』によると、粒子状物質の中には、吸い込むことで肺の奥まで到達するほど小さな粒子があります。特に直径2.5マイクロメートル以下のPM2.5は、健康への影響という点から重視されています。
直径10マイクロメートル以下の粒子の一部は肺の奥まで入り込むことがあり、さらに細かな粒子では血流に入るものもあると説明されています。
焚き火やバーベキューで風向きが変わり、突然煙が顔にかかった経験がある人もいるでしょう。
そのとき目の前に見えている白や灰色の煙だけでなく、その周辺には肉眼では一粒ずつ確認できない小さな粒子も浮遊しています。
そのため、煙が大量に発生している場所では、顔を煙の中へ近づけたり、煙を意図的に吸い込んだりすることは避けたほうがよいでしょう。焚き火などを楽しむ場合にも、風向きを確認し、煙が自分や周囲の人へ直接流れ続けない位置を選ぶことが大切です。
「煙は気体」と思いやすいのはなぜ?
煙を気体だと思いやすい理由の一つは、その動き方にあります。
石や水とは違い、煙には決まった形がありません。空気の流れに乗り、広がったり細くなったりしながら移動します。
そのため、見た目だけでは気体そのものが動いているように感じられます。
しかし実際には、その流れの中にガスだけでなく、非常に小さな固体粒子や液滴が含まれています。
一つ一つは見えなくても、大量に集まれば光を散乱したり吸収したりします。その結果、「煙」という大きなモヤとして目に見えるようになります。
『NIST』の定義でも、煙は燃焼や熱分解によって生じる固体粒子、液体粒子、ガスと、それらに混ざった空気によって構成されるものとされています。
つまり、私たちが見ている煙は、単なる「色のついた気体」ではありません。
空気の中を漂う無数の小さな粒子や液滴が光と作用することで、白、灰色、黒などの姿を見せているのです。
まとめ
- 煙は気体だけではなく、固体粒子や液滴、ガス、周囲の空気などが混ざったもの
- 煙が目に見えるのは、微粒子や液滴が光を散乱したり吸収したりするため
- 煙の中には、髪の毛の太さよりはるかに小さな粒子が含まれることがある
- 白い煙には光を散乱しやすい粒子や液滴が関係し、水蒸気そのものは基本的に見えない
- 黒い煙は、すすや黒色炭素など光を強く吸収する粒子が多いと生じやすい
- 煙の色は、燃料の種類だけでなく、水分量や燃焼状態、発生する粒子の種類によっても変化する
- 煙に含まれる細かな粒子の中には、吸い込むと肺の奥まで到達するものもある
- 煙は「色のついた気体」ではなく、無数の粒子や液滴などが光と作用して見えている現象
普段は何気なく目にしている煙も、その仕組みを知ると少し違ったものに見えてきます。
次に焚き火やバーベキューなどで煙を見かけたときは、その色や見え方にも注目してみると、新たな発見があるかもしれません。

