紅葉の赤は「隠れていた色」ではない!?【落ちる葉が赤く染まる理由】

秋の風景と聞いて、紅葉を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。色とりどりの木々は見慣れた存在ですが、その裏側には意外と知られていない話がたくさんあります。

第148回雑学調査レポートでは、そんな「紅葉」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

モミジが赤くなるのは、秋に赤い色素が作られるから

秋になると、モミジなどのカエデ類は緑色から鮮やかな赤色へ変わります。

この変化を見ると、「葉の中にはもともと赤色が隠れていて、緑色が消えたため赤く見えるようになった」と思うかもしれません。

しかし、赤い紅葉では、実際には少し違ったことが起こっています。

葉を赤く見せる代表的な色素は「アントシアニン」です。秋に赤くなる多くの植物では、春や夏の葉にアントシアニンが大量に含まれているわけではありません。秋になり、葉が落ちる準備を始めるころに新しく作られます。

つまり、赤い紅葉は「隠れていた赤色が見えるようになる」というより、「秋になって赤い色素が作られることで赤くなる」現象なのです。

では、春や夏の葉が緑色なのはなぜでしょうか。

葉には「クロロフィル」という緑色の色素がたくさん含まれています。クロロフィルは、植物が光合成をするときに光のエネルギーを受け取る大切な色素です。

秋になると日が短くなり、気温も下がっていきます。落葉樹では葉を落とす準備が進み、それまで多く含まれていたクロロフィルが分解されていきます。そのため、葉の緑色は少しずつ薄くなります。

一方、赤く紅葉する植物では、この時期にアントシアニンが作られます。緑色が弱くなり、赤いアントシアニンが増えることで、葉は鮮やかな赤色へ変わっていくのです。

イチョウが黄色くなる仕組みは、赤い紅葉とは違う

秋には赤い葉だけでなく、イチョウのような黄色い葉も見られます。

では、黄色も赤色と同じように、秋になってから新しく作られるのでしょうか。

黄色い葉では、赤い葉とは違う仕組みが働いています。

葉には「カロテノイド」という黄色やオレンジ色の色素があります。この色素は秋になって突然作られるものではなく、春や夏の緑色の葉にも含まれています。

それでも春や夏の葉が黄色く見えないのは、クロロフィルの緑色が強いためです。黄色やオレンジ色のカロテノイドも存在していますが、緑色に隠れて目立ちません。

秋になるとクロロフィルが分解され、緑色が薄くなります。すると、それまで目立たなかったカロテノイドの黄色やオレンジ色が見えやすくなります。

イチョウが黄色くなるのは、主にこの変化によるものです。

赤い紅葉と黄色い黄葉の違いを簡単に表すと、黄色は「春や夏からあった色が見えるようになる」、赤色は「秋になって新しい赤い色素が作られることが多い」と考えると分かりやすいでしょう。

見た目はどちらも秋の色づきですが、葉の中では異なる変化が起きています。

なぜ、もうすぐ落ちる葉をわざわざ赤くするのか

ここで疑問になるのが、「どうせ落ちる葉なのに、なぜ木はわざわざアントシアニンを作るのか」という点です。

アントシアニンを作る意味については現在も研究が続いており、一つだけの理由ですべてを説明できるわけではありません。いくつかの考え方が提案されています。

その中でよく研究されているのが、「強い光から葉を守るため」という考え方です。

秋の葉では、クロロフィルが分解されるだけでなく、光合成を行う仕組みそのものも少しずつ片付けられていきます。

ところが、葉は落ちる直前まで太陽の光を受け続けます。

葉の内部で光を利用する能力が低下している状態で強い光を受けると、その光を十分に処理できず、葉の細胞や光合成に関係する組織がダメージを受けることがあります。

そこで役立つ可能性があるのが、赤いアントシアニンです。

アントシアニンには光の一部を吸収する性質があります。そのため、葉の奥まで届く光を弱める「日よけ」のような働きをしていると考えられています。

実際に、秋に赤くなる葉を調べた研究では、アントシアニンを多く含むことで、強い光によるダメージを抑えられる可能性が示されています。

木は葉を落とす前に「使える栄養」を回収している

「もうすぐ落ちるなら、葉が多少傷んでも問題ないのでは」と思うかもしれません。

しかし、木にとって秋の葉は、すぐに捨ててしまってよいものではありません。

葉の中には窒素をはじめ、植物の成長に必要な栄養分が残っています。木は葉を落とす前に、その一部を葉から回収し、枝や幹などへ移します。

回収した栄養分は木の中に蓄えられ、翌年に新しい芽や葉を作るときなどに再び利用されます。

つまり、落葉前の葉では「使えるものを回収してから葉を捨てる」という作業が進んでいるのです。

この途中で葉が強い光による大きなダメージを受けると、栄養分の回収を十分に進めにくくなる可能性があります。

そこで、アントシアニンが葉に入る光をやわらげ、葉の働きをしばらく保つことで、栄養分を回収する時間を確保しているのではないかと考えられています。

研究でも、アントシアニンによる光の遮蔽が、老化していく葉から栄養を回収する過程に役立つ可能性が示されています。

私たちには美しい景色に見える赤い紅葉ですが、葉の中では、木が冬や翌年に備えるための作業が進んでいるのです。

晴れた日と冷え込む夜が、鮮やかな赤色につながることがある

同じ場所の紅葉でも、年によって色の鮮やかさが違います。

「今年は真っ赤だったのに、去年は少しくすんでいた」ということもあります。

紅葉の色は、植物の種類や木の状態、日当たりなどさまざまな要素によって変わります。さらに、その年の天候も関係します。

赤い色素であるアントシアニンが作られる過程には、光や葉の中にある糖が関係しています。

一般的には、秋の日中に十分な日光が当たり、夜は冷え込むものの凍るほどにはならない環境では、鮮やかな赤色が現れやすいとされています。

日中に葉へ十分な光が当たると、光合成によって糖が作られます。

また、夜の気温が低くなると、葉の中で作られた糖がほかの場所へ移動しにくくなり、葉にたまりやすくなる場合があります。こうした条件がアントシアニンの合成に関係し、赤色が濃くなることがあります。

ただし、気温は低ければ低いほどよいわけではありません。

強い霜や凍結で葉の細胞が傷つくと、十分に色づく前に葉が傷んだり、落ちたりすることがあります。

一方、秋になっても気温の高い状態が続けば、赤い色素が十分に作られなかったり、紅葉を楽しめる期間が変わったりする場合があります。

その年の紅葉は、秋の気温だけで決まるものではありません。日照や雨、夏から秋にかけての気象条件、さらに樹木そのものの状態など、多くの条件が重なって生まれます。

同じ一本の木でも、葉によって色が違う

紅葉した木を近くで見ると、すべての葉が同じ色ではないことに気づきます。

真っ赤な葉がある一方で、オレンジ色や黄色の葉、少し緑色が残っている葉もあります。

同じ一本の木でも、日当たりのよい外側と、枝が重なって日陰になっている内側では、色づき方が違うことがあります。

その理由の一つが光です。

アントシアニンの合成は光の影響を受けます。そのため植物によっては、日光をよく受けた葉のほうが赤くなりやすいことがあります。

実際に、同じ植物でも日なたにある葉は赤くなり、日陰の葉は黄色くなる例が研究されています。

葉によって赤、オレンジ、黄色などに見えるのは、それぞれの葉に含まれる色素の種類や量が違うためです。

アントシアニンの赤色が強ければ赤く見えます。カロテノイドの黄色が目立てば黄色く見えます。

赤色と黄色の両方が目立つと、オレンジ色に近く見えることもあります。さらにクロロフィルの緑色が少し残っていれば、また違った色合いになります。

一本の木の中に赤、黄、オレンジ、緑などが混ざって見えるのは、葉ごとに色素の状態が少しずつ違っているからです。

紅葉狩りでは「赤い葉」と「黄色い葉」を見比べてみよう

紅葉を見に行ったときは、遠くから景色を眺めるだけでなく、一枚一枚の葉にも注目すると違った楽しみ方ができます。

たとえばイチョウの黄色い葉を見たら、「この黄色のもとになる色素は、春や夏にも葉の中にあった」と考えてみてください。

春や夏には強い緑色に隠れていたカロテノイドが、秋になってクロロフィルが減ったことで目立つようになっています。

一方、赤く染まったモミジなどでは、秋になってアントシアニンが作られています。

同じ「葉の色が変わる」という現象でも、黄色と赤では仕組みが違うのです。

一本の木の中で色を比べるのもおすすめです。

太陽がよく当たっている外側の葉と、枝の内側の日陰にある葉を見比べてみると、赤色の濃さが違っていることがあります。

赤、オレンジ、黄、緑が混じった葉を見つけたら、それぞれの色素がどのくらい残っているのか、どの色素が目立っているのかを想像してみるのも面白いでしょう。

紅葉は、葉が単純に緑色から赤色や黄色へ塗り替えられる現象ではありません。

緑色のクロロフィルが減り、それまで隠れていた黄色やオレンジ色のカロテノイドが目立つ葉もあれば、新しく赤いアントシアニンを作る葉もあります。

木々の色をよく観察すると、秋の景色の中で起きている植物の変化をより身近に感じられます。

まとめ

  • 赤い紅葉では、秋になってアントシアニンという赤い色素が新しく作られる
  • 黄色い黄葉では、春や夏から葉にあるカロテノイドが目立つようになる
  • 赤い紅葉と黄色い黄葉では、葉が色づく仕組みが異なる
  • アントシアニンは、強い光から葉を守る「日よけ」のような働きをしている可能性がある
  • 木は葉を落とす前に、葉に残った栄養分の一部を回収して再利用する
  • 日中に十分な日光があり、夜に適度に冷え込むと、鮮やかな赤色が現れやすい
  • 同じ一本の木でも、日当たりや色素の量の違いによって葉の色が変わる

美しい秋の景色として楽しんでいる紅葉の中では、目には見えないさまざまな変化が起きています。

仕組みを知ったうえで眺めてみると、いつもの紅葉もこれまでとは少し違った景色に感じられるかもしれません。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

この雑学をもっと広めよう!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次