コンパクトな本体に、U字形の金具が付いた南京錠。見た目はとてもシンプルですが、身近な道具だからこそ、そのつくりについて深く考える機会は少ないかもしれません。
第162回雑学調査レポートでは、そんな「南京錠」に関する雑学をご紹介していきます。
南京錠の底にある小さな穴の正体は「水抜き穴」
ロッカーや物置、自転車のチェーンなどに使われている南京錠。底の部分をよく見ると、鍵穴とは別に、小さな丸い穴が開いていることがあります。
この穴は「水抜き穴」と呼ばれ、南京錠の内部に入り込んだ水を外へ排出するために設けられています。
南京錠は金属でできているため、水が入り込む隙間がないように見えるかもしれません。しかし、実際には鍵を差し込む部分や、U字形の金具が本体に出入りする部分などに、小さな隙間があります。
そのため、屋外で雨にさらされると、こうした隙間から水が入り込む場合があるのです。また、気温の変化によって南京錠の内部に結露が発生し、水分が付着することもあります。
内部に入った水が長時間残っていると、金属部品にサビが発生する原因になります。

そこで役立つのが水抜き穴です。
南京錠の内部に入った水が、この小さな穴を通って外へ流れ出ることで、水分がたまりにくくなります。その結果、サビによる故障を防ぐ効果が期待できるのです。
実際に、防犯用品メーカー『ABUS』の南京錠にも、水抜き穴を設けた製品があります。公式製品情報では、内部に水分がとどまるのを防ぎ、品質や性能を維持するための仕組みとして紹介されています。
なぜ南京錠の内部に水がたまると故障するの?
南京錠の内部には、鍵を開け閉めするための小さな金属部品が数多く組み込まれています。
鍵を差し込んで回すと、内部の部品が動き、U字形の金具を固定しているロックが解除されます。
このU字形の金具は「シャックル」と呼ばれ、南京錠を開け閉めするうえで欠かせない部分です。
ところが、南京錠の内部に水がたまると、こうした金属部品にサビが発生することがあります。
サビが進行すると、部品の表面が変化して動きが悪くなったり、部品同士がくっついて動かなくなったりする場合があります。
例えば、次のような不具合です。
- 鍵を差し込んでも回しにくい
- 鍵が途中までしか入らない
- シャックルがスムーズに動かない
- 鍵を回してもロックが解除されない
『日本ロックサービスオンラインストア』のメンテナンス案内でも、水分やチリの侵入、サビなどによって部品同士が固着し、南京錠が正常に動かなくなる場合があると説明されています。
こうした故障を減らすには、内部に水分を長時間残さないことが大切です。
水抜き穴があれば、内部に入り込んだ水を重力によって外へ逃がせるため、サビや部品の固着を防ぐのに役立ちます。
ただし、水抜き穴があっても、南京錠の内部を完全に乾燥させられるとは限りません。サビの発生しにくさには、使用されている金属の種類や表面の加工、設置されている場所なども関係します。
水抜き穴は、南京錠を長持ちさせるための工夫の一つなのです。
水抜き穴は底だけじゃない!背面に4つある南京錠も
南京錠の水抜き穴は、必ずしも底に1つだけ設けられているわけではありません。
製品の形や構造によって、穴の位置や数が異なります。
例えば、『ABUS』の南京錠「EC75IB」シリーズには、本体の底に水抜き穴があります。
この製品は、U字形のシャックルにサビに強いステンレス鋼を使用しているほか、本体にも腐食を防ぐためのメッキ加工が施されています。
こうした対策に加えて、底に水抜き穴を設けることで、内部に水分がたまりにくい構造になっているのです。
一方、同じ『ABUS』の「ディスカス24IB」シリーズには、本体の背面に4つの水抜き穴があります。
この南京錠は、一般的な四角い南京錠とは異なり、円盤のような丸い形をしているのが特徴です。
本体とシャックルにはサビに強いステンレス鋼が使われており、背面に設けられた4つの穴から内部の水分を排出できるようになっています。
また、シャックルが外に出ている部分をできるだけ小さくすることで、切断工具を差し込みにくくする工夫も施されています。
さらに、屋外での使用を想定した「アクアセーフ70IB」シリーズにも水抜き穴があります。
こちらは、南京錠の本体が樹脂製の保護カバーで覆われている製品です。
鍵穴にもカバーが付いており、砂やホコリなどが内部に入り込むのを防ぐ構造になっています。
さらに、この鍵穴カバーには、水を逃がすための細い溝も設けられています。
つまり、内部に入った水を排出するだけでなく、鍵穴の周辺にも水がたまりにくいように工夫されているのです。

このように、南京錠の水抜き穴には、底に1つだけあるもの、背面に複数あるもの、保護カバーにも排水の仕組みを設けたものなど、さまざまな種類があります。
なお、すべての南京錠に水抜き穴があるわけではありません。製品によって水への対策や内部構造が異なるため、穴が見当たらない場合もあります。
南京錠の小さな穴に針を差すと鍵が開くって本当?
南京錠の底にある小さな穴を見て、「ここに針を差し込めば鍵が開くのでは?」と思ったことがある人もいるかもしれません。
しかし、水抜き穴は南京錠を開けるための穴ではありません。
一般的な鍵式の南京錠は、対応する鍵を差し込むことで内部の部品が正しい位置に動き、ロックを解除できる仕組みになっています。
一方、水抜き穴は内部に入った水を排出するためのものです。
そのため、水抜き穴に安全ピンや針金を差し込んでも、それだけで南京錠が開く仕組みにはなっていません。
生活に関する情報を紹介している『くらしのレスキュー』でも、南京錠の底にある小さな穴は水抜き穴であり、安全ピンなどを差し込んでも解錠できないと説明されています。
また、細い針金などを無理に差し込むと、内部の部品を傷つけたり、水抜き穴を詰まらせたりするおそれがあります。
穴が小さいからといって、安易に異物を差し込むことは避けましょう。
なお、南京錠の小さな穴がすべて水抜き用とは限りません。製品によって穴の役割が異なる場合もあるため、用途がわからないときはメーカーの説明書などを確認することが大切です。
水抜き穴から油を入れてもいい?南京錠の正しいお手入れ方法
南京錠の水抜き穴を見て、「ここから油を入れれば、鍵の動きがよくなるのでは?」と思う人もいるでしょう。
しかし、水抜き穴は基本的に水を排出するためのものです。
南京錠をお手入れするときは、水抜き穴に適当な油を入れるのではなく、メーカーが案内している方法でメンテナンスすることが大切になります。
南京錠を長期間使っていると、内部にホコリや汚れがたまったり、水分によって金属部品にサビが発生したりすることがあります。
そのため、定期的に汚れを取り除き、適切な潤滑剤を使って部品の動きを保つことが重要です。
南京錠のお手入れは鍵穴とシャックルが基本
例えば、『ABUS』の日本国内向けメンテナンス案内では、純正潤滑剤「PS88」を使用したお手入れ方法が紹介されています。
まず、南京錠の鍵穴に潤滑剤を少量吹き付けます。一度に大量に吹き付けるのではなく、少しずつ様子を見ながら使用するのがポイントです。
続いて、鍵を何度か抜き差しして、潤滑剤を内部になじませます。
次に、U字形のシャックルが本体に入り込む部分の溝にも、潤滑剤を少量吹き付けます。
そのまま少し時間を置き、潤滑剤が内部に行き渡るようにしましょう。
最後に鍵を差し込んで、施錠と解錠を何度か繰り返します。鍵やシャックルがスムーズに動けば、お手入れは完了です。
余分な潤滑剤が出てきた場合は、柔らかい布やティッシュなどで拭き取ります。

ただし、こうした方法は『ABUS』の対象製品に向けた案内です。製品によって適切なお手入れ方法が異なるため、実際に作業するときは使用している南京錠の説明書を確認しましょう。
食用油などを代わりに使うのは避ける
南京錠の動きが悪くなったとき、家庭にある食用油などを使いたくなるかもしれません。
しかし、南京錠の内部には細かな部品があるため、用途に合わない油を使用すると、かえって動作不良につながる可能性があります。
油の種類によってはホコリや汚れが付着しやすくなり、内部の部品がスムーズに動かなくなる場合もあるのです。
『ABUS』では、他社製の潤滑剤やスプレーを使用すると性能が低下する可能性があるとして、純正潤滑剤「PS88」の使用を案内しています。
また、南京錠メーカー『Master Lock』も、専用の潤滑剤を少量使用することを推奨しています。
メーカーによって推奨する潤滑剤が異なるため、南京錠に使う油は、製品に適したものを選ぶことが重要です。
南京錠のお手入れはどのくらいの頻度で必要?
南京錠のお手入れを行う頻度は、メーカーや使用環境によって異なります。
例えば、『Master Lock』では、一般的な南京錠について3〜6か月ごとの清掃と潤滑を推奨しています。
一方、ホコリが多い場所や金属が腐食しやすい環境で使っている場合は、3か月ごとのお手入れを目安としています。
『ABUS』の日本国内向け案内では、月1〜2回程度のメンテナンスが推奨されています。
さらに、普段あまり使わない南京錠についても、定期的に鍵を開け閉めすることが勧められています。
長期間動かさずに放置すると、水分や汚れの影響で内部の部品が固着しやすくなるためです。
特に、庭の物置や門扉など、雨や湿気の影響を受けやすい場所で使用している南京錠は、日頃から状態を確認するとよいでしょう。
水抜き穴があれば屋外でも安心?南京錠を選ぶときの注意点
屋外で使用する南京錠を選ぶ際は、水抜き穴の有無も確認したいポイントです。
特に、物置や門扉、屋外の収納ボックスなどでは、南京錠が雨にぬれたり、湿気の多い環境に置かれたりすることがあります。
こうした場所では、内部に入った水を排出できる構造が役立ちます。
ただし、水抜き穴があるからといって、必ずしも雨に強い南京錠とは限りません。
水抜き穴は、内部に入り込んだ水を外へ逃がすためのものです。
一方、南京錠をサビから守るには、金属そのものがサビに強いことや、雨水や汚れが内部に入りにくい構造になっていることも重要になります。
そのため、屋外用の南京錠を選ぶときは、水抜き穴だけでなく、次のような部分にも注目するとよいでしょう。
- 本体やシャックルにサビに強い金属が使われているか
- 本体に防サビ加工が施されているか
- 鍵穴を雨やホコリから守るカバーがあるか
- メーカーが屋外での使用を想定しているか
例えば、『ABUS』の「アクアセーフ70IB」シリーズは、屋外での使用を想定した南京錠です。
シャックルにはサビに強いステンレス鋼を使用し、本体は樹脂製の保護カバーで覆われています。
さらに、鍵穴カバーや水抜き穴を組み合わせることで、雨水や汚れによる不具合を減らす工夫が施されています。
また、『ABUS』の「ディスカス24IB」シリーズと「アクアセーフ70IB」シリーズは、168時間の塩水噴霧試験によって防サビ性能が確認されています。
塩水噴霧試験とは、塩分を含んだ水を細かな霧にして製品に吹き付け、サビや腐食に対する強さを調べる試験です。
金属がどの程度腐食に耐えられるかを評価するために利用されています。
ただし、168時間の試験に耐えたからといって、実際の屋外で同じ時間や特定の年数だけ使えるという意味ではありません。
南京錠の寿命は、雨の当たり方や周囲の湿気、海に近い場所かどうかなどによっても変わります。
そのため、屋外で南京錠を使用する場合は、設置場所の環境に合った製品を選び、メーカーが推奨する方法で定期的にお手入れすることが大切です。
まとめ
- 南京錠の底にある小さな穴は、内部に入り込んだ水を排出するための「水抜き穴」
- 水抜き穴には、南京錠の内部に水分がたまるのを防ぎ、サビや部品の固着を抑える役割がある
- 水抜き穴の位置や数は製品によって異なり、底だけでなく背面に設けられているものもある
- 水抜き穴に針や安全ピンを差し込んでも、南京錠を解錠することはできない
- 南京錠のお手入れには、メーカーが推奨する潤滑剤と適切なメンテナンス方法を使用することが重要
- 水抜き穴があるだけで雨に強いとは限らず、屋外用の南京錠は材質や防サビ加工なども確認する必要がある
一見するとシンプルなつくりの南京錠ですが、細かな部分にも長く使うための工夫が施されているのです。
今度南京錠を手に取る機会があれば、底の小さな穴にも注目してみてください。

