黄色い「点字ブロック」は、駅や歩道の風景にすっかり溶け込んでいます。それだけ身近な存在でありながら、じっくり注目してみると意外と感じられるポイントが見つかります。
第143回雑学調査レポートでは、そんな「点字ブロック」に関する雑学をご紹介していきます。
世界初の点字ブロックは1967年に岡山市で設置された
駅や歩道、公共施設などで見かける黄色い点字ブロック。今では身近な設備ですが、実は日本で生まれました。
世界で初めて点字ブロックが道路に設置されたのは、1967年3月18日です。場所は、現在の岡山市中区にある岡山県立岡山盲学校の近く、原尾島交差点周辺でした。岡山市や岡山県も、この場所を世界初の点字ブロックの敷設場所として紹介しています。
点字ブロックを考案したのは、岡山県出身の三宅精一氏です。三宅氏は、視覚障害者が道路を安全に歩けるようにするため、1965年に点字ブロックを考案・開発しました。そして約2年後の1967年、実際の道路に初めて設置されています。
つまり、今では日本全国の駅や道路で当たり前のように使われている設備が、最初に登場したのは岡山でした。
世界初の設置から2026年で59年になります。比較的新しい発明でありながら、現在では社会を支える重要なバリアフリー設備の一つになっています。
「点字ブロック」には点字の文章が書かれているわけではない
一般には「点字ブロック」という名前で知られていますが、正式には「視覚障害者誘導用ブロック」と呼ばれています。
名前に「点字」と付いているため、表面の突起で文字や文章を表していると思う人もいるかもしれません。しかし、点字ブロックの突起は文字を読むためのものではありません。
視覚障害者に「こちらへ進む」「ここでは注意する」といった歩行に必要な情報を伝えるために使われています。
基本的な点字ブロックは、大きく2種類に分けられます。
一つは「線状ブロック」です。細長い線のような突起が何本も並んでいて、基本的には進む方向を知らせる役割があります。線の向きをたどることで、移動する方向を確認できます。
もう一つが「点状ブロック」です。丸い突起が並んでいるタイプで、注意を知らせるために使われます。横断歩道の手前や階段の前、進行方向が変わる場所など、周囲の状況を確認する必要がある場所に設置されています。
駅のホームでは、「内方線付き点状ブロック」と呼ばれるタイプも見かけます。
これは点状ブロックの一部に1本の線状の突起を付けたものです。この線がある側がホームの内側であることを示しており、線路側と安全な側を判断する手掛かりになります。

このように、点字ブロックの突起には一つひとつ意味があります。視覚障害者は足裏で突起を感じたり、白杖で確認したりしながら必要な情報を受け取っています。
単なる滑り止めや道路の飾りではなく、足元から情報を伝える案内表示なのです。
点字ブロックが黄色いのは見つけやすくするため
「点字ブロックといえば黄色」というイメージを持つ人も多いでしょう。
黄色が多く使われているのにも理由があります。
点字ブロックを利用する人の中には、まったく見えない人だけでなく、ある程度の視力が残っている弱視者やロービジョンの人もいます。こうした人にとっては、床と点字ブロックの色の違いも大切な情報になります。
そのため、『国土交通省』の建築設計標準などでは、視覚障害者誘導用ブロック等について黄色を原則としています。
ただし、大切なのは「黄色であること」だけではありません。周囲の床と見分けやすいことが重要です。
例えば、黄色いブロックを白や非常に明るい床の上に設置すると、明るさが似てしまい、かえって見分けにくくなる場合があります。
『国土交通省』の資料では、弱視者などが識別しやすいように、ブロックと周囲の床の輝度比を2.0以上確保することが望ましいとされています。
輝度比とは、簡単にいえば「どれくらい明るさに差があるか」を示すものです。
周囲との違いが分かりにくい場合には、ブロックの周りに濃い色の縁取りを設けるなど、見つけやすくする工夫も行われます。
点字ブロックの黄色には、目で確認できる人が発見しやすくするという役割もあるのです。
岡山で生まれた点字ブロックは海外にも広がった
点字ブロックは、日本だけで使われている設備ではありません。
国や地域によって形状や設置方法には違いがありますが、現在では触覚を利用して視覚障害者の移動を支える設備が世界各地で使われています。
さらに、日本で使われていた点字ブロックは、国際的な規格づくりにも影響を与えました。
『独立行政法人製品評価技術基盤機構』の資料によると、『International Organization for Standardization』では点字ブロックを国際的に標準化するため、技術委員会「TC 173」の中に「WG8」という作業グループが設けられました。
『独立行政法人製品評価技術基盤機構』はWG8の事務局を担当し、日本で使われていた点字ブロックをもとに規格案を作り、各国との調整を進めています。
その結果、2012年3月には点字ブロックに関する国際規格「ISO 23599」が制定されました。
現在の規格は「ISO 23599:2019」です。
この規格では、視覚障害者が安全に自立して移動できるよう、足裏や白杖で確認する「触覚による歩行面の表示」について、形状や設置方法などの考え方が定められています。
代表的なものとして、注意を知らせる「attention pattern(アテンション・パターン)」と、進む方向を示す「guiding pattern(ガイディング・パターン)」があります。
日本国内にも点字ブロックに関する規格があります。
「JIS T 9251」では、視覚障害者誘導用ブロック等について、突起の形、大きさ、並び方などが定められています。
この規格があるのは、場所によって点字ブロックの形や意味が大きく変わってしまうと、利用する人が正しく情報を読み取りにくくなるためです。
どの場所でもできるだけ同じ方法で情報を受け取れるようにすることが、安全な移動につながっています。
3月18日は「点字ブロックの日」
毎年3月18日は「点字ブロックの日」です。
この日付は、1967年3月18日に岡山市で世界初の点字ブロックが設置されたことに由来しています。
『岡山市』によると、その歴史を記念するため、岡山県視覚障害者協会が2010年に記念日として申請し、「点字ブロックの日」として認められました。
発祥の地である岡山市では、3月18日に合わせて点字ブロックについて知ってもらうための取り組みも行われています。
2026年3月18日には、『岡山城』が点字ブロックをイメージした黄色にライトアップされました。『岡山城』の公式サイトでも、2026年のライトアップとして「3月18日 点字ブロックの日 黄」と記録されています。
普段は何気なく通り過ぎる点字ブロックですが、3月18日は、その歴史が岡山から始まった日なのです。
点字ブロックの上に物を置いてはいけない理由
点字ブロックは、設置されているだけで役割を果たせるわけではありません。
ブロックの上を安全に通れる状態にしておくことも重要です。
視覚障害者は、足裏で突起を感じたり、白杖でブロックを確認したりしながら歩いています。そのため、点字ブロックの上に自転車や荷物、看板などが置かれていると、歩行の妨げになります。
特に線状ブロックは、安全に進むためのルートとして利用されています。
その途中に自転車などが置かれていると、点字ブロックをたどって歩いている先に突然障害物が現れることになります。
『警察庁』も、視覚障害者は足裏や白杖で点字ブロックの突起を確認しているため、ブロックの上に自転車を止めたり、物を置いたりしないよう呼びかけています。
点字ブロックを避けて自転車を止める、荷物や看板を置かないといった行動だけでも、安全な移動を支えることができます。
何気なく見ている点字ブロックには多くの情報が詰まっている
街を歩くと、点字ブロックはさまざまな場所に設置されています。
線状の突起は進む方向を伝え、丸い突起は注意が必要な場所を知らせます。黄色は弱視者やロービジョンの人が見つけやすくするために使われ、駅のホームでは内方線によって安全な側を判断できるよう工夫されています。
こうした仕組みの原点となった点字ブロックが、1960年代の岡山で考案されたというのは興味深い点です。
一人の発明から始まった設備が日本全国へ広がり、さらに国際規格づくりにもつながりました。
普段は足元にあるため目立ちにくい設備ですが、表面の小さな突起には、安全に移動するための大切な情報が込められています。
まとめ
- 点字ブロックは日本で生まれ、世界で初めて岡山市に設置された
- 点字ブロックを考案したのは岡山県出身の三宅精一氏
- 点字ブロックには進行方向を示す「線状ブロック」と注意を促す「点状ブロック」がある
- 点字ブロックが黄色いのは、弱視者やロービジョンの人が見つけやすくするため
- 日本で使われていた点字ブロックは国際規格づくりにも影響を与えた
- 3月18日は世界初の設置日に由来する「点字ブロックの日」
- 点字ブロックの上に自転車や荷物を置くと、視覚障害者の安全な移動を妨げる
- 点字ブロックの突起や色には、安全に移動するための情報が込められている
点字ブロックについて知ってみると、いつも見ている黄色いブロックにも多くの意味があることが分かります。
何気ない街の風景の中にも、私たちが知らない歴史や工夫はまだまだ隠れているのかもしれません。
参考文献
- 岡山市「3月18日は『点字ブロックの日』です 岡山城でライトアップを実施します」
- 岡山県「点字ブロックは岡山で生まれました!」
- 国土交通省「視覚障害者誘導用ブロック等の形状・色」
- 国土交通省「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構「生活安全ジャーナル 2013.07 Vol.15 ユニバーサルデザインを考慮した標準化活動」
- International Organization for Standardization「ISO 23599:2019 Assistive products for blind and vision-impaired persons — Tactile walking surface indicators」
- 日本規格協会「JIS T 9251:2014 高齢者・障害者配慮設計指針―視覚障害者誘導用ブロック等の突起の形状・寸法及びその配列」
- 警察庁「自転車の交通安全教育ガイドライン」

