パトカーと聞くと、多くの人が、白と黒に塗り分けられた車を思い浮かべます。しかし、なぜその姿が全国的に定着しているのかを説明できる人は、それほど多くないでしょう。
第74回雑学調査レポートでは、そんな「パトカー」に関する雑学をご紹介していきます。
最初のパトカーは一般車と見分けにくかった
日本のパトカーといえば、白い車体の下半分を黒く塗った姿がよく知られています。この白黒模様は、単なる飾りや警察のイメージカラーとして決められたものではありません。もともとは、一般の自動車とパトカーを見分けやすくするために生まれました。
日本にパトカーが登場したころ、国内で生産されていた自動車には白色のものが多く、警察が使用していた車両も白色でした。そのため、遠くから見ると一般の白い自動車と区別しにくいという問題がありました。そこで、白い車体の下半分を、対照的な色である黒に塗り分ける方法が採用されたのです。白と黒を組み合わせれば色の差が大きくなり、道路を走っているときでもパトカーだと気づきやすくなります。

白黒模様が全国に広がったのは1955年
警視庁では、1950年6月に自動車警ら隊が発足し、18台のパトロールカーが配置されました。
「警ら」とは、犯罪や事故を防ぐために、警察官が地域を見回ることです。徒歩や自転車だけでなく、自動車を使って広い地域を巡回できるようになったことで、事件や事故の現場へ、より早く向かえるようになりました。
当初から、全国の警察車両が現在とまったく同じ姿だったわけではありません。白いジープなどがパトカーとして使われていた時期もあり、その後、警視庁が車体の上側を白、下側を黒にした塗装を採用しました。
この白黒の塗り分けが全国で統一されたのは、1955年、昭和30年のことです。
つまり、現在まで続く白黒パトカーの基本的なデザインには、70年以上の歴史があることになります。車種や赤色灯の形、車内の装備などは時代とともに変化してきましたが、白と黒を組み合わせた外観は長く受け継がれています。
なぜ黒くしたのは「下半分」だったのか
白い車に黒を加えるだけなら、屋根やボンネットを黒くする方法も考えられます。しかし、日本のパトカーは、ドアや車体側面の下部を黒くする塗り方が基本になりました。
第一の目的は、白い一般車との違いをはっきりさせることです。車体側面の広い範囲を黒くすれば、横から見たときに白と黒の差が目に入りやすくなります。警察車両であることを周囲の人にすぐ知らせるという点で、分かりやすい塗り方でした。
さらに、当時は現在ほど道路の舗装が進んでいなかったため、土や泥による汚れを目立ちにくくする目的もあったといわれています。未舗装の道路を走ると、タイヤが巻き上げた泥は、車体の上側よりも下側に付きやすくなります。下半分を黒くしておけば、白いままの場合よりも汚れが目立ちにくくなります。
ただし、警察の公式説明で中心となっているのは、あくまでも「一般の白い自動車と見分けるため」という理由です。汚れを目立たなくするためだったという話は、補助的な理由、あるいは一つの説として紹介されることが多いため、二つを同じ確かさの事実として扱わないよう注意が必要です。
白黒に塗っただけではパトカーにならない
一般の自動車を白と黒に塗ったとしても、その車が本物のパトカーになるわけではありません。白黒模様はパトカーを見分けるための重要な特徴ですが、緊急自動車としての資格を決めるものではないからです。
特に重要なのが、屋根に取り付けられている赤色の警光灯です。警察庁の通知では、緊急自動車以外の車両に、赤色回転灯などを装着してはならないとされています。
映画やテレビドラマで使われるパトカー風の劇用車であっても、一般の道路を移動するときには、赤色回転灯を取り外すなどの対応が必要です。
交通規制によって一般車が入れない撮影場所では使用できる場合がありますが、普段の道路を本物のパトカーと同じ状態で走れるわけではありません。

このことから、白黒模様には「警察車両だと分かりやすくする役割」があり、赤色警光灯などには「緊急自動車として活動していることを示す役割」があると考えられます。
見た目が似ているだけの車と、法律上の緊急自動車は別のものなのです。
まとめ
- 日本のパトカーは、白い一般車と見分けやすくするために白黒の塗装になった
- 当時は白い車が多く、白いパトカーでは遠くから区別しにくかった
- 車体の下半分を黒くすることで、白黒の差が大きくなり目立つようになった
- 白黒模様の目的は、警察車両だとひと目で気づかせることにある
- 白黒に塗っただけでは緊急自動車にならず、赤色警光灯などの条件も必要になる
白黒の車体や赤色の警光灯など、パトカーには役割を分かりやすく伝える工夫が数多くあります。
ほかの装備にも、まだ知られていない意外な理由が隠されているかもしれません。

