昔の眼鏡には「つる」がなかった!?【手で支える必要があっても大発明】

眼鏡と聞いて、どのような形を思い浮かべるでしょうか。多くの人は、レンズが2枚あり、顔にしっかり固定できる道具を想像するはずです。

しかし、そのイメージは、眼鏡の歴史全体から見ると、比較的新しい姿でもあります。

第49回雑学調査レポートでは、そんな「眼鏡」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

眼鏡は最初から耳にかける道具ではなかった

現在の眼鏡と聞くと、多くの人は「レンズ」「フレーム」「鼻当て」、そして「耳にかけるつる」を思い浮かべます。ところが、眼鏡の長い歴史をたどると、この「耳にかけるつる」は最初からあったものではありません。

眼鏡の原型は、13世紀の北イタリアで生まれたと考えられています。当時の眼鏡は、現代のように顔に安定して装着できるものではなく、2枚のレンズを枠にはめ、それを中央で留めたような構造でした。

この初期の眼鏡は、英語では「rivet spectacles(リベット・スペクタクルズ)」と呼ばれます。rivet は「鋲」や「留め具」を意味します。つまり、2つのレンズ枠を留め具でつないだ眼鏡という意味です。

13世紀にイタリアで誕生した、人類の歴史上最も古い形式の眼鏡とされるリベット・スペクタクルズ(著作者:Ziko van Dijk、ライセンス:CC BY-SA 4.0)。

鼻をはさむだけの眼鏡

初期の眼鏡には、耳にかける部分がありませんでした。では、どうやって顔に固定していたのでしょうか。

答えは、鼻をはさむことです。

レンズを入れた2つの枠を中央でつなぎ、その部分で鼻を軽くはさむようにして使っていました。ただし、現在の眼鏡のように安定しているわけではありません。少し動けばずれやすく、落ちることもありました。

そのため、初期の眼鏡を使う人は、じっとした姿勢で読書をしたり、手で支えたりしながら使っていたと考えられています。現代の感覚で言えば、「かける眼鏡」というより、「目の前に当てる道具」に近い存在でした。

なぜそれでも役に立ったのか

不便そうに見えますが、当時の人々にとって眼鏡は画期的な道具でした。

特に役に立ったのは、年齢とともに近くの文字が見えにくくなる人たちです。これは現在でいう老眼にあたります。中世ヨーロッパでは、写本を読む聖職者や学者、細かい作業をする職人にとって、文字や細部を見やすくする道具はとても重要でした。

眼鏡が登場する以前にも、拡大鏡のような道具は存在していました。しかし、両目の前にレンズを置き、文字を読みやすくする眼鏡は、読書や筆写の効率を大きく変えたと考えられます。

たとえ手で支えなければならなくても、「小さな文字が読める」という利点は、それを上回るほど大きかったのです。

「つる」は18世紀ごろに重要になる

現代的な眼鏡に近い形が広がるのは、ずっと後のことです。

耳の方向へ伸びる部品、つまり「つる」が重要な改良として登場したのは18世紀ごろです。イギリス・ロンドンの眼鏡商エドワード・スカーレットは、腕のような部品で顔に固定する現代的な眼鏡の発展に関わった人物として知られています。

英語では、眼鏡のつるを temples(テンプル) と呼ぶことがあります。temple は「こめかみ」という意味です。眼鏡のつるが顔のこめかみのあたりを通るため、この名前で呼ばれるようになりました。

この改良によって、眼鏡は「手で支えるもの」から「顔に装着して使い続けられるもの」へと変わっていきました。

眼鏡の大きな進化はレンズだけではなかった

眼鏡の歴史というと、レンズの性能に注目しがちです。たしかに、度数の調整、近視用レンズ、遠視用レンズ、乱視補正、遠近両用レンズなど、レンズの進歩は非常に重要です。

しかし、眼鏡を日常的な道具にしたもう一つの大きな要素は、「どうやって顔に固定するか」でした。

どれほどよく見えるレンズでも、すぐに落ちてしまうなら使いにくいものです。読書のたびに手で支えなければならないなら、書き物や作業には向きません。耳にかけるつるの発展は、眼鏡を実用的な生活道具に変えるうえで大きな意味を持っていたと言えるでしょう。

昔の眼鏡は「不完全な発明」だった

初期の眼鏡は、現代の基準ではかなり不完全でした。

鼻をはさむだけなので安定しません。顔の形に合わなければ使いにくく、長時間の使用にも向いていません。動きながら使うことも難しかったはずです。

それでも眼鏡は広まりました。理由は単純で、見えなかったものが見えるようになるからです。

道具の歴史では、最初から完成形が生まれることはあまりありません。眼鏡も同じです。最初は不便でも、人々が必要としたから使われ続け、少しずつ改良されていきました。

まとめ

  • 眼鏡は13世紀ごろに生まれたが、当時は「耳にかけるつる」がなかった
  • 初期の眼鏡は、2枚のレンズを枠にはめ、それを中央で留めたような構造だった
  • 初期の眼鏡は鼻に挟んで固定し、じっとした姿勢や手で支えて使っていた
  • 手で支える必要があっても、両目の前にレンズがあり、文字が読みやすくなる眼鏡は画期的な発明だった
  • 「つる」が重要な改良として登場したのは18世紀ごろ

初期の眼鏡は、現代の眼鏡とは大きく違うものでした。しかし、不便さを抱えながらも使われ続けたからこそ、改良が重ねられ、現在の形へと近づいていきました。

眼鏡は、見えにくさを解決するためだけでなく、使いやすさを追い求めて進化してきた道具なのです。

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