靴を脱いだ瞬間、足のにおいに驚いたことはないでしょうか。毎日きちんと足を洗っていても、長時間靴を履いていると、においが気になることがあります。
第159回雑学調査レポートでは、そんな「足」に関する雑学をご紹介していきます。
足が臭くなる本当の原因は、汗ではなく皮膚にいる細菌だった
一日中履いていた靴を脱いだとき、足から嫌なにおいがした経験はありませんか。特に、汗をたくさんかいた日や、長時間靴を履いていた日は、においが強くなることがあります。
足が臭くなるのは、汗そのものが臭いからだと思う人もいるでしょう。しかし、足の裏から出る汗は、ほとんどが水分でできており、汗そのものにはほとんどにおいがありません。
それでは、なぜ足は臭くなるのでしょうか。
その理由は、私たちの皮膚に存在する「細菌」にあります。
人間の皮膚には、目には見えない小さな細菌がたくさんすんでいます。これらは「皮膚常在菌(ひふじょうざいきん)」と呼ばれ、健康な人の皮膚にも普通に存在するものです。
足に汗をかくと、その汗に含まれる成分などを、一部の細菌が分解します。このとき、嫌なにおいを持つ物質が作られることがあります。
つまり、汗をかいた瞬間に足が臭くなるのではなく、汗に含まれる成分が細菌によって分解されることで、においが発生するのです。
足のにおいの原因として知られている物質の一つが、「イソ吉草酸(いそきっそうさん)」です。
イソ吉草酸は、蒸れた靴下や、長時間履いた靴を思わせるような、独特の不快なにおいを持っています。
2006年に発表された研究では、皮膚に存在する「表皮ブドウ球菌」という細菌が、汗に含まれる「ロイシン」という成分を分解して、イソ吉草酸を作り出すことが報告されました。
ロイシンは、タンパク質を作る材料となる「アミノ酸」の一種です。こうした汗の成分が細菌によって別の物質に変えられることで、足特有のにおいが生まれます。
ただし、足のにおいには、ほかの細菌やにおい物質も関わっています。そのため、人によってにおいの種類や強さが異なることがあります。

足の裏には汗を出す器官がびっしり!暑くなくても汗をかく理由
足のにおいが発生しやすいのには、足の裏ならではの特徴も関係しています。
実は、足の裏は、体の中でも特に汗をかきやすい場所の一つです。
人間の皮膚には、汗を作って外に出す「汗腺(かんせん)」という小さな器官があります。
足の裏には、この汗腺が非常に多く集まっているのです。
2019年に発表された汗腺の働きに関する研究レビューによると、手のひらや足の裏には、1平方センチメートル当たり約250〜550個もの「エクリン汗腺」が存在するとされています。
1平方センチメートルとは、縦1センチメートル、横1センチメートルの小さな正方形の面積です。
つまり、足の裏には、わずか1センチ四方の範囲に、数百個もの汗腺が存在することになります。
エクリン汗腺は、主に水分や塩分を含む汗を出す器官です。
汗には、皮膚の表面で蒸発するときに熱を奪い、体を冷やす働きがあります。
ただし、汗腺が多いからといって、必ず大量の汗をかくとは限りません。実際に出る汗の量は、それぞれの汗腺がどれくらい活発に働くかによっても変わります。
さらに、足の裏にはもう一つ興味深い特徴があります。
それは、暑いときだけでなく、緊張したときにも汗をかくことです。
例えば、大勢の人の前で発表するときや、大切な試験を受けるときに、手のひらが汗ばんだ経験はないでしょうか。
実は、足の裏でも同じようなことが起こります。
緊張や不安など、精神的な刺激によって起こる発汗は「精神性発汗」と呼ばれています。
手のひらや足の裏は、この精神性発汗が起こりやすい場所として知られています。
そのため、涼しい室内で過ごしていても、仕事や勉強などで緊張している間に、足の裏が湿ってしまうことがあるのです。
靴を履くと足が臭くなりやすいのはなぜ?原因は内部にこもる湿気
足の裏にはたくさんの汗腺がありますが、汗をかいただけで、すぐに強いにおいが発生するわけではありません。
足のにおいを考えるうえで重要なのが、靴の中の環境です。
裸足で過ごしているときは、足についた汗が空気に触れて、比較的蒸発しやすい状態にあります。
ところが、靴下と靴を履くと、汗の水分が外に逃げにくくなります。
特に、通気性の低い靴を長時間履いていると、靴の中に熱と湿気がこもり、足が蒸れやすくなります。
この蒸れた環境が、足のにおいにつながります。
細菌にはさまざまな種類がありますが、足のにおいに関係する細菌の中には、温かく湿った環境で増えたり、活発に働いたりしやすいものがあります。
つまり、靴の中が蒸れると、細菌がにおいの原因となる物質を作りやすい条件が整ってしまうのです。
さらに、足から出た汗は、靴下や靴の中敷きにも染み込みます。
汗を吸った靴下を長時間履き続けたり、十分に乾いていない靴を繰り返し使ったりすると、靴の中に湿気が残りやすくなります。
例えば、朝から夕方まで同じ靴を履いていると、足から出た汗が靴下や中敷きにたまり、靴の内部も湿った状態になりがちです。
その間に細菌が汗の成分などを分解し、におい物質が作られていきます。
そして、帰宅して靴を脱ぐと、靴の中にこもっていたにおいが周囲に広がることがあります。
これが、長時間靴を履いたあとに、足のにおいを強く感じやすい理由の一つです。
ただし、同じ時間だけ靴を履いていても、足のにおいには個人差があります。
汗の量に加えて、皮膚にいる細菌の種類、靴の通気性、靴下の素材、足の洗い方なども関係しているためです。
そのため、汗をたくさんかく人が、必ずしも足のにおいも強くなるわけではありません。
足のにおいを防ぐには?今日からできる5つの対策
足のにおいを抑えるためには、足を清潔に保つことと、靴の中に湿気をためないことが大切です。
英国の公的医療サービスである『NHS』でも、足のにおいを防ぐ方法として、足を清潔で乾いた状態に保つことや、靴を十分に乾燥させることなどを推奨しています。
ここからは、普段の生活で取り入れやすい5つの対策を紹介します。

足の指の間まで丁寧に洗う
足のにおいを防ぐ基本は、毎日足を洗い、汗や汚れを落とすことです。
特に意識したいのが、足の指と指の間です。
指の間は狭く、汗や汚れが残りやすい場所です。また、洗ったあとも水分が残りやすいため、蒸れた状態になることがあります。
足を洗うときは、石けんをよく泡立て、足の裏だけでなく、指の間や爪の周りも優しく洗いましょう。
洗い終わったら、石けんを十分に洗い流し、清潔なタオルで水分を拭き取ります。
特に指の間は、濡れたままにしないことが大切です。
また、足の裏やかかとに厚い角質がたまっている場合は、適切にケアすることも役立ちます。
ただし、硬くなった皮膚を無理に削ったり、強くこすったりすると、皮膚を傷つけるおそれがあります。角質をケアするときは、削りすぎに注意しましょう。
靴下は毎日交換し、汗をかいたら履き替える
靴下には、足から出た汗や皮膚の汚れが付着します。
見た目がきれいでも、一日履いた靴下には水分や汚れが残っていることがあります。
そのため、靴下は毎日清潔なものに交換しましょう。
運動したあとや、足に大量の汗をかいた場合は、一日の途中で履き替えることも効果的です。
例えば、朝から長時間靴を履く予定がある日は、予備の靴下を一足持っておくと便利でしょう。
また、靴下の素材も重要です。
汗を吸いやすい綿素材や、汗を吸って乾かしやすい吸汗速乾性のある素材などは、足の湿気を減らすのに役立ちます。
ただし、綿は汗を多く吸うと乾くまで時間がかかる場合もあります。汗をかきやすい人は、吸汗性だけでなく、乾きやすさも確認して選ぶとよいでしょう。
同じ靴を毎日履かず、しっかり乾燥させる
足のにおいが気になる人は、靴の使い方も見直してみましょう。
靴の中には、足から出た汗が少しずつ染み込んでいます。
特に中敷きや靴の内側の素材は水分を吸収するため、靴を脱いだあとも湿気が残っている場合があります。
その状態で翌日も同じ靴を履くと、十分に乾燥しないまま、さらに汗が加わることになります。
できれば靴を2足以上用意し、交互に履くようにしましょう。
一日履いた靴は、風通しのよい場所に置き、内部まで乾燥させることが大切です。
取り外せる中敷きがある場合は、靴から出して別々に乾かすと、湿気を逃がしやすくなります。
また、雨で濡れた靴や、運動で大量の汗を吸った靴は、内部が十分に乾いてから使用しましょう。
靴の外側が乾いて見えても、中敷きや内側に水分が残っていることがあります。
通気性がよく、足に合った靴を選ぶ
靴の種類によって、内部の蒸れやすさは変わります。
通気性の低い靴では、足から出た汗の水分が外に逃げにくくなり、湿気がこもりやすくなります。
そのため、足のにおいが気になる場合は、靴の通気性にも注目しましょう。
例えば、メッシュ素材を使ったスニーカーなどは、靴の構造によっては内部の湿気を逃がしやすくなります。
一方、防水性を重視した靴や、空気が通りにくい素材の靴では、内部が蒸れやすい場合があります。
また、靴のサイズも大切です。
足に対して小さすぎる靴は、指が圧迫されたり、蒸れや不快感が生じたりする原因になります。
靴を購入するときは、見た目やデザインだけでなく、足に合うサイズであることや、長時間履いても蒸れにくい構造になっているかを確認しましょう。
足用の制汗剤やパウダーを使う
足の汗が多い人は、足用の制汗剤やパウダーを活用する方法もあります。
ただし、これらの製品は、それぞれ働きが異なります。
「制汗剤」は、汗の量を抑えることを目的とした製品です。足から出る汗を減らすことで、靴の中が蒸れにくくなる効果が期待できます。
一方、「足用パウダー」は、余分な湿気を吸収し、足をさらっとした状態に保つために使われます。
また、「デオドラント製品」は、においを抑えることを目的としています。製品によって、においを覆い隠すものや、においの発生に関係する細菌の働きを抑えるものなどがあります。
例えば、足の汗そのものが多い場合は制汗剤、湿気による不快感が気になる場合はパウダー、においを抑えたい場合はデオドラント製品が選択肢になります。
製品によって使用方法や適した部位が違うため、説明を確認してから使いましょう。
また、皮膚に傷や炎症がある場合は使用上の注意を確認し、赤みやかゆみなどの異常が出たときは使用を中止してください。
足を洗っても臭いときは?水虫や多汗症が関係していることも
足のにおいは、洗い方や靴の使い方を見直すことで改善する場合があります。
しかし、毎日足を洗い、靴や靴下を清潔に保っていても、強いにおいが続くことがあります。
そのような場合は、皮膚の病気や汗の異常などが関係している可能性も考えられます。
水虫によって足の皮膚に異常が起きている場合
水虫は、「白癬菌(はくせんきん)」というカビの仲間が皮膚に感染して起こる病気です。
足の指の間が白くふやけたり、皮がむけたり、かゆみが出たりすることがあります。
水虫そのものが必ず強いにおいを発生させるわけではありませんが、皮膚の状態が悪くなったり、細菌が増えたりすることで、においに関係する場合があります。
また、水虫ではかゆみがほとんど出ないこともあります。
指の間が白くなっている、皮が繰り返しむけるなどの症状がある場合は、皮膚科で確認してもらうとよいでしょう。
細菌による皮膚の病気が隠れている場合
足のにおいには、細菌による皮膚の病気が関係していることもあります。
その一つが「点状角質融解症(てんじょうかくしつゆうかいしょう)」です。
これは、細菌の働きによって、足の裏の皮膚の表面に小さなくぼみができる病気です。
特に足の裏が蒸れやすい人に起こることがあり、強いにおいを伴う場合があります。
足の裏に小さな穴のようなくぼみがたくさん見られる場合や、足を洗っても強いにおいが続く場合は、こうした病気の可能性も考えられます。
足の汗が多すぎる「足底多汗症」の場合
足の裏から出る汗の量が非常に多い場合は、「足底多汗症」が関係している可能性もあります。
多汗症とは、体温を調節するために必要な量を超えて、汗が過剰に出る状態のことです。
例えば、涼しい場所にいても足の裏が汗で濡れたり、短時間で靴下が湿ってしまったりすることがあります。
足底多汗症があると、靴の中が湿った状態になりやすく、においが発生する条件が整いやすくなります。
汗の量が多く、仕事や学校生活などに支障が出ている場合は、医療機関で相談することができます。汗を抑える薬など、症状に応じた治療法が検討されます。
また、足のにおいだけで病気を判断することはできません。
足を清潔にしてもにおいが改善しない場合や、皮むけ、かゆみ、皮膚のふやけ、小さなくぼみなどが見られる場合は、皮膚科を受診するとよいでしょう。
特に、足に痛みや腫れ、赤みなどがある場合は、感染症などの可能性もあるため、早めに医師へ相談することが大切です。
まとめ
- 足の汗そのものはほぼ無臭で、主なにおいの原因は皮膚にいる細菌の働き
- 足のにおいを生み出す代表的な物質の一つが「イソ吉草酸」
- 足の裏には汗腺が密集しており、1平方センチメートル当たり約250〜550個存在する
- 足の裏は暑さや運動だけでなく、緊張や不安によっても汗をかく
- 靴の中に熱や湿気がこもると、細菌が活動しやすくなり、においが発生しやすくなる
- 足のにおいを防ぐには、足を清潔に保ち、靴や靴下に湿気をためないことが重要
- 強いにおいが続く場合は、水虫や細菌による皮膚の病気、足底多汗症などが関係している可能性もある
普段はあまり意識することのない足のにおいですが、その裏には、私たちの体と細菌の意外な関係が隠されていました。
足のにおいが気になる人は、毎日の足のケアだけでなく、靴や靴下の使い方も見直してみてはいかがでしょうか。
参考文献
- PubMed「Foot odor due to microbial metabolism and its control」
- PubMed Central「Physiology of sweat gland function: The roles of sweating and sweat composition in human health」
- NHS「Smelly feet」
- Cleveland Clinic「7 Reasons Why Your Feet Smell Bad」
- Cleveland Clinic「Body Odor: Causes, Changes, Underlying Diseases & Treatment」

