たくさんの三つ葉に囲まれた中で、ひときわ特別な存在として知られる四つ葉のクローバー。幸運の象徴として親しまれ、偶然見つけたときには、何かよいことが起こりそうな気持ちになるものです。そんな身近な植物には、まだあまり知られていない不思議が隠されています。
第173回雑学調査レポートでは、そんな「クローバー」に関する雑学をご紹介していきます。
四つ葉のクローバーはなぜ珍しい?普通の三つ葉との違い
公園や道端で見かけるクローバー。ほとんどは三つ葉ですが、ときどき四つ葉が見つかることがあります。四つ葉のクローバーは幸運の象徴として知られており、見つけるとうれしい気持ちになる人も多いでしょう。
実は、クローバーの三つ葉には、意外と知られていない特徴があります。
一見すると3枚の葉が集まっているように見えますが、植物学では、3つの部分を合わせて1枚の葉と考えます。
この小さな葉のような部分を「小葉」といい、複数の小葉が集まった葉を「複葉」と呼びます。
つまり、三つ葉と四つ葉の違いは、次のようになります。
- 三つ葉のクローバー:1枚の葉が3つの小葉に分かれている
- 四つ葉のクローバー:1枚の葉が4つの小葉に分かれている
四つ葉は、普通の三つ葉に新しい葉が1枚追加されたものではありません。葉が作られるときに、小葉の数が通常より1つ多くなったものなのです。

では、なぜ同じクローバーなのに、小葉の数が変わるのでしょうか。
四つ葉のクローバーができる理由は?遺伝子と育つ環境が関係している
四つ葉のクローバーができる理由には、主に「遺伝子」と「育つ環境」が関係していると考えられています。
植物の葉は、最初から三つ葉や四つ葉の形をしているわけではありません。初めはとても小さな組織で、成長するにつれて少しずつ葉の形が作られます。
この葉のもとになる組織を「葉原基(ようげんき)」と呼びます。簡単にいえば、これから葉になる「葉の赤ちゃん」のような部分です。
クローバーでは、葉原基が成長する途中で、小葉のもとが作られていきます。通常は3つの小葉ができますが、その数が変わることで四つ葉などが現れると考えられています。
この仕組みに関わると考えられているのが、「オーキシン」という植物ホルモンです。
植物ホルモンとは、植物の成長や体の形を作る働きを調整する物質のことです。オーキシンもその一つで、葉や根などが作られる過程に関係しています。
『日本植物生理学会』の植物Q&Aでは、葉のもとになる組織の中で、オーキシンが集まる場所が小葉の形成に関わるという考え方が紹介されています。
オーキシンの集まり方が変化すると、小葉が作られる場所や数にも違いが生じる可能性があるのです。
ただし、シロツメクサで小葉の数が変わる詳しい仕組みは、まだ十分に解明されていません。オーキシンに関する説明にも、ほかの植物の研究結果をもとにした推測が含まれています。
また、四つ葉の形成には遺伝子も関わっています。
遺伝子とは、生き物の体の特徴や成長の仕方に関係する情報のことです。クローバーにも、葉の形や色などに関わる遺伝子があります。
2010年には、アメリカの研究チームが、シロツメクサの四つ葉になる性質に関係する遺伝的な要因を調べました。
この研究では、四つ葉に関係する遺伝的な特徴を調べるための、DNA上の目印が明らかになりました。さらに、四つ葉になる性質の現れ方には、育つ環境も強く関係することが報告されています。
つまり、四つ葉ができやすい遺伝的な性質を持つクローバーでも、すべての葉が四つ葉になるわけではありません。
同じ株に三つ葉と四つ葉が混ざっていることがあるのも、こうした特徴と関係していると考えられます。
クローバーは踏まれると四つ葉になる?よく聞く説の真相
「人によく踏まれる場所には、四つ葉のクローバーが多い」という話を聞いたことがあるかもしれません。
実は、踏まれることによって四つ葉ができるという説には、植物の成長に関係する理由があります。
『日本植物生理学会』の植物Q&Aでは、四つ葉が生じる原因の一つとして、成長途中の葉が傷つくことが挙げられています。
クローバーの葉がまだ小さいうちに、葉原基が踏まれるなどして傷つくと、通常とは違う形に成長する場合があると考えられています。
例えば、普通なら3つの小葉が作られるところで、何らかの影響によって4つの小葉が形成される可能性があるということです。
ここで重要なのは、傷つくと考えられているのが、これから葉になる成長途中の組織だという点です。
すでに完成した三つ葉を踏んでも、その葉が四つ葉に変わるわけではありません。
また、クローバーを踏めば必ず四つ葉ができるということでもありません。踏まれることが、実際にどの程度四つ葉の発生を増やすのかについては、詳しく分かっていない部分があります。
さらに、四つ葉の形成には、土の中の栄養分や植物ホルモンの働きなども影響する可能性があります。
例えば、栄養分の量やバランスが通常と異なると、葉が作られる過程に変化が生じることも考えられます。
そのため、人がよく歩く場所で四つ葉を見つけたとしても、踏まれたことだけが原因とは限りません。
反対に、ほとんど人が踏まない場所でも、四つ葉のクローバーは見つかります。
四つ葉ができる仕組みには、さまざまな要因が関係しているのです。

四つ葉のクローバーの確率は1万分の1?本当はどれくらい珍しい?
四つ葉のクローバーは、「1万本に1本の確率で見つかる」といわれることがあります。
この数字を聞くと、四つ葉を見つけるのはとても難しいことのように感じられるでしょう。
しかし、四つ葉が現れる割合は、すべての場所で同じとは限りません。
その理由は、クローバーによって四つ葉のできやすさが違うためです。
例えば、四つ葉ができやすい遺伝的な性質を持つ株では、比較的多くの四つ葉が見つかることがあります。一方、ほとんど三つ葉しか作らない株もあります。
また、日当たりや土の栄養状態など、育つ環境によっても小葉の数が変わる可能性があります。
そのため、ある場所では四つ葉が何枚も見つかっても、別の場所ではなかなか見つからないことがあるのです。
『国立国会図書館』のレファレンス協同データベースには、四つ葉のクローバーができる仕組みや確率について調べた記録があります。
2007年に行われたこの調査では、自然界で四つ葉が現れる確率を確認できる資料は見つからなかったと記されています。これは当時の調査結果であり、現在までに世界中のクローバーを調べて正確な確率が決まったという意味でもありません。
したがって、「1万分の1」という数字は、四つ葉の珍しさを表すためによく使われる目安として考えるとよいでしょう。
そもそも、四つ葉の割合を正確に調べるには、どの場所で、何枚の葉を調べ、そのうち何枚が四つ葉だったのかを記録する必要があります。
四つ葉が多い場所だけを調べた場合と、さまざまな場所を広く調べた場合とでは、結果が異なることもあります。
四つ葉は確かに珍しい存在ですが、実際にどれくらい見つかるかは、探す場所によって変わるのです。
四つ葉のクローバーの見つけ方!1枚見つけたら近くを探そう
四つ葉のクローバーを見つけたいときは、広い場所を歩き回るよりも、同じ場所をじっくり観察するのがおすすめです。
特に、四つ葉を1枚見つけたら、その周辺を丁寧に探してみましょう。
その理由は、クローバーの増え方にあります。
シロツメクサは、地面の上をはうように茎を伸ばして広がる植物です。この茎を「匍匐茎(ほふくけい)」と呼びます。
匍匐茎は地面を横に伸びながら、途中から根や葉を出していきます。
そのため、地面に広がっているクローバーの集まりには、同じ株から伸びた葉がたくさん含まれていることがあります。
もし、その株が四つ葉を作りやすい性質を持っていれば、近くでも四つ葉が見つかる可能性があります。
もちろん、近くに生えているクローバーがすべて同じ株とは限りません。また、四つ葉ができやすい株でも、三つ葉のほうが多い場合があります。
それでも、一度四つ葉が見つかった場所は、続けて観察する価値があるでしょう。
探すときには、葉を1枚ずつ数えるのではなく、葉全体の形に注目するのも一つの方法です。
三つ葉は小葉が3方向に広がっていますが、四つ葉は4方向に広がったり、小葉同士が重なったりしています。
たくさんの三つ葉を眺めていると、周囲とは少し違う形の葉が目に入ることがあります。その葉をよく確認すると、四つ葉だったということもあるでしょう。
ただし、小葉が重なっている場合には、四つ葉でも三つ葉のように見えることがあります。気になる葉を見つけたら、小葉の付け根を確認すると数えやすくなります。
また、四つ葉を探すためにクローバーを踏んだり、葉を傷つけたりする必要はありません。
葉を傷つけないように気をつけながら、ゆっくり観察してみましょう。
四つ葉だけじゃない!五つ葉や六つ葉のクローバーも存在する
クローバーには、三つ葉や四つ葉以外にも、珍しい形の葉が存在します。
例えば、小葉が5枚ある「五つ葉」や、6枚ある「六つ葉」、さらに7枚ある「七つ葉」などです。
『日本植物生理学会』の植物Q&Aでも、五つ葉、六つ葉、七つ葉といったクローバーが野生で見られることが紹介されています。
こうしたクローバーも、葉が作られる途中で小葉の数が通常より多くなったものと考えられます。
小葉の数が増える理由は四つ葉と似ており、遺伝子の変化や成長環境などが関係する可能性があります。
また、遺伝的な性質によって、四つ葉などができやすくなったクローバーもあります。
このような性質を持つ株を育てて増やすことで、四つ葉が多く現れる品種を作ることができます。
実際に、四つ葉ができやすいクローバーは、観賞用の園芸品種としても利用されています。
ただし、四つ葉ができやすい品種だからといって、すべての葉が四つ葉になるとは限りません。遺伝的な性質に加えて、育つ環境も葉の形に関係するためです。
また、五つ葉や六つ葉ができるクローバーでも、同じ株に三つ葉や四つ葉が混ざっている場合があります。
『日本植物生理学会』では、小葉の数が多くなる性質が、遺伝的に受け継がれるようになった例についても紹介しています。
普段はどれも同じように見えるクローバーですが、じっくり観察すると、さまざまな形の葉があることに気づくでしょう。
四つ葉だけを探すのではなく、葉の数や形を比べてみると、身近な植物の新しい発見につながるかもしれません。
まとめ
- 四つ葉のクローバーは、通常3つある小葉が4つに増えたもの
- 四つ葉ができる理由には、遺伝子や植物ホルモン、育つ環境などが関係している
- 成長途中の葉が踏まれるなどして傷つくと、四つ葉ができる可能性がある
- 四つ葉の発生確率として知られる「1万分の1」は、確定した数字ではなく一般的な目安
- 四つ葉ができやすい株の周辺では、別の四つ葉も見つかる可能性がある
- クローバーには四つ葉だけでなく、五つ葉や六つ葉、七つ葉なども存在する
幸運の象徴として親しまれている四つ葉のクローバーですが、その小さな葉には、自然のさまざまな仕組みが関わっています。四つ葉を探す機会があれば、ぜひ周囲の葉にも注目してみてください。
幸運だけでなく、新しい発見にも出会えるかもしれません。

