古本のいい匂いは劣化のサイン!?【ほこりやカビとは違う】

古本屋や図書館で古本を開いたとき、独特の甘い匂いを感じたことはないでしょうか。実はこれは単なる”ほこり”の匂いではなく、もっと別の理由が隠されているのです。

第28回雑学調査レポートでは、そんな「古本」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

古本の匂いは化学反応

古本の甘くて少しほこりっぽい匂いの主な正体は、紙やインク、接着剤、装丁材料などが時間とともに分解されることで空気中に放出される「揮発性有機化合物(VOC)」です。

紙の主成分はセルロースです。さらに、木材パルプ由来の紙にはリグニンという成分も含まれます。これらが酸化や加水分解などで少しずつ壊れると、さまざまな匂いの成分が発生します。

たとえば、リグニンの分解に関係するバニリンはバニラのような香り、ベンズアルデヒドはアーモンドのような香り、フルフラールは甘く香ばしい香りに関係するといった形です。

スクロールできます
成分香りのイメージ主な由来
バニリンバニラのような甘い香りリグニンの分解
ベンズアルデヒドアーモンドのような香りリグニン由来成分
フルフラール甘い、香ばしい香りセルロースなどの分解
トルエン甘い、やや刺激のある香り紙・インクなどの劣化
ヘキサナール土っぽい、青っぽい、古い部屋のような香り紙成分の分解

古い本ほど、素材の劣化や保存環境の影響が積み重なるため、一冊ごとに匂いの個性も変わってきます。

古本の匂いは「本が古いから何となく匂う」のではなく、紙の中で起こる化学反応が作り出す”本の熟成香”のようなものだと言えるでしょう。

新しい本の匂いとは違う

新刊の匂いもVOCによるものですが、古本とは由来が少し異なります。

新しい本の匂いは、紙そのものだけでなく、印刷インクや製本用接着剤、紙を加工するための薬品などの影響が大きいとされています。

一方で古本の匂いは、そうした材料が時間をかけて分解されることで生まれるため、より「乾いた」「甘い」「木っぽい」「ほこりっぽい」印象になりやすいのです。

「古い本=匂いが強い」とは限らない

本の匂いは、紙の種類やインク、接着剤、革や布の装丁、保存されていた部屋の湿度、日光、カビ、タバコ、食べ物、持ち主の扱い方などに左右されます。『Science History Institute』によれば、古本の匂いは「本がどう作られ、どこで保管され、誰に使われてきたか」が混ざったものです。

たとえば、同じ50年前の本でも、乾燥した暗所で保存された本と、湿気の多い押し入れで保存された本では、香りも劣化の進み方も大きく変わります。

ただ、保存の観点でいえば紙が分解されていることには変わりないため、いい匂いがするということは劣化のサインでもあります。

とくに木材パルプを使った紙は、リグニンや酸の影響で黄ばみやすく、もろくなりやすい性質があります。『NEDCC』によれば、リグニンは酸性で紙を弱くもろくし、光にさらされると酸化して紙を暗く変色させます。

そのため、図書館や公文書館では「酸性紙」が問題になります。酸がセルロースの結合を切ると、紙は柔軟性を失い、やがてパリパリと崩れやすくなってしまうためです。

古本のページが黄色くなったり、端から欠けたりするのは、単なる経年劣化ではなく、紙の内部で進む化学的な劣化の結果なのです。

劣化とカビは同じではない

古本の甘い香りと、湿ったカビ臭は分けて考えたほうがよいです。

強い湿気臭や土臭さ、鼻に刺さるカビ臭がある場合は、保存環境が悪かったり、実際にカビが関係していたりする可能性があります。

古本らしい匂いは必ずしも危険ではありませんが、「湿っている」「黒や白の斑点がある」「触ると粉っぽい」といった特徴がある場合は注意が必要であることを知っておきましょう。

まとめ

  • 古本の甘い匂いは「揮発性有機化合物(VOC)」と呼ばれる化学反応によるもの
  • 新しい本は薬品の匂いが強い
  • 同じ古本でも、保存環境によって匂いや劣化具合は変わる
  • 甘い香りとカビ臭は異なる

多くの人が古本の匂いで「懐かしい」「落ち着く」と感じるのは、甘いバニラやアーモンド、古い木のような香りが混ざるためだったのです。しかし一方で、それは紙が少しずつ劣化している証拠でもあります。

つまり古本の匂いとは、”本が歩んできた時間そのものが空気中ににじみ出た香り”と言えるかもしれませんね。

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