巨大な機体を空高く持ち上げ、そのまま宇宙へと飛び出していくロケット。その姿は今ではおなじみですが、実際にどのような仕組みで動いているのかを考えると、いくつもの不思議が浮かんできます。
第170回雑学調査レポートでは、そんな「ロケット」に関する雑学をご紹介していきます。
ロケットは空気がない宇宙でもなぜ飛べる?
ロケットの打ち上げ映像を見ると、機体の下から大量の炎やガスが噴き出し、ものすごい勢いで空へ飛んでいく様子がわかります。
しかし、ここで一つの疑問が生まれます。それは、空気がほとんど存在しない宇宙空間で、ロケットがどうやって飛んでいるのかということです。
例えば、飛行機は周囲の空気を利用して飛んでいます。また、私たちの身近にあるろうそくやたき火は、空気中の酸素がなければ燃え続けられません。
それなのに、ロケットは空気のない宇宙でもエンジンを動かし、さらに加速することができます。
実は、ロケットは周囲の空気を押して進んでいるわけではありません。
ロケットが前へ進めるのは、機体の後ろから大量のガスを勢いよく噴き出し、その反動を利用しているためです。
例えば、重い荷物を前に向かって勢いよく投げると、自分の体は反対の後ろ方向へ押されます。ロケットもこれと似た仕組みで動いています。
つまり、ロケットが進むためには、周囲に空気があるかどうかよりも、機体から物質を勢いよく噴き出せるかどうかが重要なのです。

この仕組みは、身近にある風船を使うと、さらにわかりやすく理解できます。
ロケットが飛ぶ仕組みは風船と同じ?作用・反作用の法則とは
風船を大きく膨らませ、口を結ばずに手を離したことはあるでしょうか。
膨らませた風船から手を離すと、中に入っていた空気が勢いよく飛び出し、風船はあちこちへ飛んでいきます。
このとき、風船は空気が噴き出す方向とは反対の方向へ進んでいます。
例えば、風船の口を右に向けて空気を噴き出すと、風船には左へ進もうとする力が働くのです。
これは、物理学で「作用・反作用の法則」と呼ばれる仕組みによるものです。
作用・反作用の法則とは、ある物体が別の物体を押すと、押された物体も反対方向へ同じ大きさの力で押し返すという法則です。科学者アイザック・ニュートンが示した運動の法則の一つとして知られています。
風船の場合、中の空気を外へ押し出すと、押し出された空気も風船を反対方向へ押します。その結果、風船は空気を噴き出しながら飛んでいくわけです。
ロケットも、基本的には同じ仕組みで進んでいます。
一般的な化学ロケットでは、エンジンの中で燃料を燃やし、大量の高温ガスを発生させます。そして、そのガスを機体の後ろから非常に速い速度で噴き出します。
すると、噴き出したガスとは反対方向にロケットを押す力が生まれます。この力が、ロケットを加速させる「推力」です。

ここで大切なのは、ロケットから噴き出したガスが、周囲の空気を押す必要はないという点です。
ロケット自身がガスを後ろへ押し出すことで、その反対方向に進む力を得ています。
そのため、周囲に空気が存在しない真空の宇宙空間でも、ロケットはエンジンを使って加速できるのです。
なお、宇宙では空気抵抗がほとんどないため、エンジンを止めても、ロケットがすぐに止まるわけではありません。重力などの力によって動きが変わることはありますが、エンジンを動かしていない間も飛行を続けられます。
このような風船とロケットの共通点は、『JAXA』の宇宙科学研究所キッズサイトでも紹介されています。
ロケットは酸素のない宇宙でどうやって燃料を燃やす?
ロケットがガスを噴き出す反動で進むことはわかりました。しかし、もう一つ気になるのが、酸素がほとんどない宇宙でどうやって燃料を燃やしているのかという点です。
例えば、ろうそくの火にコップをかぶせると、しばらくして火が消えます。これは、燃焼に必要な酸素が十分に供給されなくなるためです。
車のエンジンも、基本的には周囲の空気から酸素を取り込み、ガソリンなどの燃料を燃やしています。
では、宇宙を飛ぶロケットはどうしているのでしょうか。
実は、一般的な化学ロケットは、燃料だけでなく、燃料を燃やすために必要な「酸化剤」も機体に積んでいます。
酸化剤とは、燃料と化学反応を起こして燃焼を進めるための物質です。
例えば、燃料として液体水素を使用するロケットエンジンには、酸化剤として液体酸素を使用するものがあります。
この方式では、液体水素と液体酸素を別々のタンクに入れて運び、エンジン内部の「燃焼室」と呼ばれる場所へ送り込みます。
燃焼室に入った液体水素と液体酸素は反応し、非常に高い温度と圧力を持つガスを発生させます。
そして、そのガスをエンジンの後ろから高速で噴き出すことで、ロケットを進ませる力が生まれるのです。
また、ロケットには液体を使う方式だけでなく、「固体ロケット」と呼ばれる種類もあります。
固体ロケットでは、燃料と酸化剤を混ぜ合わせて固めた「固体推進剤」を使用します。燃焼に必要な成分があらかじめ含まれているため、周囲の空気から酸素を取り込む必要がありません。
ちなみに、ロケットを進ませるために使用する燃料と酸化剤は、まとめて「推進剤」と呼ばれています。
このように、化学ロケットはガスを発生させるために必要な物質を自分で運んでいるので、空気がほとんどない宇宙でもエンジンを動かせるのです。
ロケットとジェット機は何が違う?宇宙まで飛べる理由を比較
ロケットとジェット機は、どちらもガスを後ろへ噴き出し、その反動で前に進むという共通点があります。
しかし、燃料を燃やすために必要な酸素をどこから手に入れるのかという点が大きく異なります。
一般的なジェット機は、飛行中に周囲の空気をエンジンへ取り込みます。そして、取り込んだ空気に含まれる酸素を使って燃料を燃やし、高温のガスを後ろへ噴き出すことで前に進みます。
つまり、一般的なジェットエンジンを動かすには、周囲に空気が必要です。
一方、化学ロケットは、燃料と酸化剤の両方を機体に積んでいます。そのため、周囲から空気を取り込む必要がありません。
これが、ジェット機は空気のほとんどない宇宙では飛べないのに、ロケットは飛べる大きな理由です。
また、ジェット機と打ち上げロケットでは、機体を空へ持ち上げる仕組みにも違いがあります。
ジェット機は、主に翼の周囲を流れる空気を利用し、「揚力」と呼ばれる上向きの力を発生させて飛んでいます。翼が飛行機の重さを支える役割を持っているのです。
一方、打ち上げロケットは、エンジンが生み出す大きな推力を使って上昇します。
ただし、ロケットには一つ大きな負担があります。それは、燃料だけでなく、大量の酸化剤も機体に積まなければならないことです。
推進剤をたくさん積めば、それだけ長くエンジンを動かせますが、その分だけ機体も重くなります。
しかも、ロケットは重い機体を持ち上げながら、宇宙へ到達するために必要な速度まで加速しなければなりません。
そこで、大型の打ち上げロケットでは、機体を効率よく加速させるための工夫が取り入れられています。

大きなロケットが途中で分離するのはなぜ?
ロケットの打ち上げ映像を見ていると、飛行の途中で機体の一部が切り離される場面があります。
これは「多段式ロケット」と呼ばれる仕組みです。
多段式ロケットは、複数のロケットを段のようにつなげた構造になっています。
例えば、2段式ロケットでは、最初に1段目のエンジンを動かして機体を上昇させます。その後、1段目の推進剤を使い終えると、その部分を切り離し、2段目のエンジンを使ってさらに加速します。
では、なぜわざわざ機体を分離するのでしょうか。
その理由は、使い終わった部分を切り離すことで、ロケットを軽くできるからです。
例えば、水を使い切った大きなタンクを持ったまま走るよりも、空になったタンクを手放したほうが、体を動かしやすくなります。
ロケットも同じで、使い終わった燃料タンクやエンジンなどを運び続けると、その分だけ余計な重さを抱えることになります。
そこで、不要になった部分を切り離し、残った機体を軽くすることで、より効率よく加速できるようにしているのです。
『JAXA』の説明によると、大型のロケットで多段式が採用されるのは、このように不要になった機体を切り離しながら、人工衛星などを運ぶために必要な速度を得ることが目的です。
ロケットが飛行中に分離するのは、単に機体を小さくするためではなく、限られた推進剤を使って、できるだけ効率よく加速するための工夫なのです。
ロケットエンジンは地上より宇宙のほうが推力が大きくなる?
実は、ロケットエンジンには、さらに興味深い特徴があります。
それは、同じエンジンを同じ条件で動かした場合、地上よりも宇宙の真空中のほうが大きな推力を発生させられるということです。
この違いには、周囲の空気の圧力が関係しています。
私たちが暮らしている地上には空気があり、その空気には「大気圧」と呼ばれる圧力があります。
大気圧は地上付近で大きく、高度が上がるほど小さくなります。そして、宇宙の真空ではほぼゼロになります。
この大気圧の違いが、ロケットエンジンの推力にも影響しているのです。
ロケットの噴射口にはどんな役割がある?
ロケットエンジンの後ろには、「ノズル」と呼ばれるガスの噴射口があります。
多くのロケットエンジンでは、ノズルが途中で細くなり、その先が大きく広がるような形になっています。
これは、燃焼によって発生した高温・高圧のガスを、効率よく加速させるための形です。
燃焼室で発生したガスは、ノズルの中を通るときに膨張し、非常に速い速度で外へ噴き出します。
このとき、エンジンが生み出す推力には、ガスを後ろへ噴き出すことで生まれる力に加え、ノズル出口のガスの圧力と周囲の大気圧の差による影響も含まれます。
地上では、ノズル出口の周囲にも大気圧が存在します。一方、宇宙では周囲の大気圧がほとんどありません。
そのため、噴き出すガスの量や速度、ノズル出口の圧力などが同じであれば、周囲の大気圧が低いほど大きな推力を得られます。
例えば、まったく同じロケットエンジンを地上と宇宙の真空中で同じ条件で動かせたとすると、真空中のほうが推力は大きくなります。
この関係は、『NASA』のグレン研究センターが公開しているロケットの推力の説明でも示されています。
宇宙用のロケットエンジンは噴射口が大きい?
ロケットエンジンは、使用する場所に合わせてノズルの形を変えることがあります。
例えば、宇宙空間で使用することを想定したエンジンには、地上付近で使用するエンジンよりも、出口が大きく広がったノズルを採用するものがあります。
周囲の圧力が低い宇宙では、ノズルの中でガスを大きく膨張させることで、噴射速度を高め、効率よく推力を生み出せる場合があるためです。
ただし、ノズルを大きくすると、エンジン自体も重くなりやすくなります。また、地上付近ではガスの膨張の仕方によって、ノズル内部の流れが不安定になる場合もあります。
そのため、実際のロケットエンジンは、地上で使うのか、宇宙空間で使うのかといった条件に合わせて設計されているのです。
さらに、宇宙空間には空気がほとんど存在しないため、飛行中の空気抵抗もほぼありません。
これは、周囲の大気圧が低くなることでエンジンの推力が大きくなる現象とは別の特徴ですが、宇宙空間を飛ぶロケットにとって重要な違いです。
ロケットの大きな噴射口には、ガスを勢いよく噴き出すだけでなく、地上や宇宙の環境に合わせて、できるだけ効率よく推進力を生み出すための工夫が詰まっているのです。
まとめ
- ロケットは機体の後ろからガスを勢いよく噴き出し、その反動で前に進む
- ロケットの推進力には、風船が飛ぶ仕組みと同じ「作用・反作用の法則」が利用されている
- ロケットは周囲の空気を押して進むわけではないため、真空の宇宙空間でも加速できる
- 化学ロケットは燃料と酸化剤を機体に積んでいるため、宇宙でも燃料を燃やせる
- ジェット機は周囲の空気を利用するのに対し、化学ロケットは空気を取り込まずにエンジンを動かせる
- 多段式ロケットは使い終わった部分を切り離し、機体を軽くすることで効率よく加速する
- ロケットエンジンは同じ運転条件であれば、地上よりも大気圧の低い真空中のほうが大きな推力を発生させる
何気なく見ているロケットの打ち上げにも、さまざまな科学の法則や技術が活用されているのです。
仕組みを知ったうえで打ち上げ映像を見てみると、これまでとは違った面白さを感じられるかもしれません。


