身長は、年齢や体格などを知るうえで、とても身近な数字の一つです。しかし、身長について詳しく調べてみると、普段は気づかない意外な発見があります。
第169回雑学調査レポートでは、そんな「身長」に関する雑学をご紹介していきます。
朝と夜で身長が違うのは本当?1日で約1〜2cm変わることも
朝起きたときと夜寝る前では、同じ人でも身長が違うことがあります。
一般的に、人間の身長は朝起きた直後が最も高く、日中に立ったり座ったりして過ごすうちに、少しずつ低くなる傾向があります。その差は1〜2cm程度になることもあり、体の中で起こる自然な変化です。
実際に、1993年に発表された研究では、2人の子どもとその母親の計3人を対象に、488日間にわたって身長を測定しています。
測定したのは、朝起きた直後と夜寝る直前の1日2回です。
その結果、朝から夜までに低くなった身長は、年齢が高い子どもで平均1.78cm、年齢が低い子どもで平均1.61cm、母親で平均1.43cmでした。
さらに、夜寝てから翌朝までに身長がどれくらい戻るのかも調べています。
すると、年齢が高い子どもでは平均1.79cm、年齢が低い子どもでは平均1.63cm、母親では平均1.43cm高くなっていました。
つまり、この3人では、日中に約1.4〜1.8cm低くなった身長が、一晩眠ることでほぼ元に戻っていたのです。

もちろん、すべての人に同じ変化が起こるわけではありません。研究対象も3人と少なく、身長の変化には個人差があります。
それでも、この研究からは、私たちの身長が1日の中で変わっていることがわかります。
では、なぜ朝は身長が高く、夜になると低くなるのでしょうか。
朝の身長が高い理由は?背骨にある「椎間板」が関係している
朝と夜で身長が変わる主な理由は、背骨にある「椎間板(ついかんばん)」という部分にあります。
私たちの背骨は、1本の長い骨でできているわけではありません。「椎骨(ついこつ)」と呼ばれる骨が、いくつも積み重なってできています。
そして、背骨の多くの骨と骨の間には、「椎間板」という柔らかい組織が挟まっています。
椎間板は、背骨のクッションのような存在です。歩いたり走ったりしたときの衝撃を和らげたり、体を前後に曲げたりする動きを助けたりしています。
この椎間板には、多くの水分が含まれているのが特徴です。
例えば、水を含んだスポンジを上から押すと、少しつぶれて薄くなります。そして、押す力を弱めると、再び水を吸って厚みが戻ります。
椎間板にも、これと似た変化が起こっています。
朝起きて立ち上がると、背骨には体重や重力による負担がかかります。椎間板が圧縮されることで、内部の水分が少しずつ外へ移動し、厚みが減っていくのです。
一つの椎間板が薄くなる変化はわずかでも、背骨には複数の椎間板があります。そのため、それぞれの変化が積み重なると、身長にも数mmから1〜2cm程度の違いが生じることがあります。
一方、夜になってベッドに横たわると、立っているときに比べて背骨にかかる負担が軽くなります。
すると、椎間板が再び水分を取り込み、少しずつ厚みを取り戻していきます。
こうして一晩休んだ後には、日中に薄くなった椎間板が回復し、朝の身長が高くなるのです。
つまり、寝ている間に身長が戻るのは、骨そのものが一晩で伸びるからではありません。
背骨のクッションである椎間板が、水分を取り戻して厚くなることが大きく関係しています。

椎間板は本当に厚くなる?MRIを使った研究でも変化を確認
椎間板の厚みや水分量が1日の中で変化することは、MRIを使った研究でも調べられています。
MRIは、体の内部を詳しく画像にできる装置です。骨だけでなく、椎間板のような柔らかい組織の状態も確認できます。
1998年に発表された研究では、19〜23歳の女性7人を対象に、日中の活動を終えた後と、一晩休んだ後の腰の椎間板を比較しました。
その結果、一晩休んだ後には、腰の椎間板の体積が増えていました。
また、MRI画像からは、椎間板の中心部分に含まれる水分が増えたと考えられる変化も確認されています。
さらに、参加者の身長を調べたところ、一晩の休息によって平均1.93cm高くなっていました。
この研究では、椎間板の体積が増えることと、朝の身長が高くなることが、実際の測定によって確かめられています。
また、1994年に発表された別の研究でも、成人男性8人の腰の椎間板をMRIで調べています。
この研究では、横になって休んだ場合と、立ったり座ったりして過ごした場合を比較しました。
その結果、立ったり座ったりして過ごした後には、椎間板の体積や厚みが小さくなっていることが確認されました。
これらの研究は、身長の変化が椎間板の状態と深く関わっていることを示しています。
普段は気づきませんが、背骨の中では、活動と休息に合わせて水分が移動し、椎間板の形が少しずつ変わっているのです。
身長が低くなりやすいのは何時ごろ?朝の数時間で大きく変化
朝から夜まで身長が低くなると聞くと、時間がたつにつれて同じペースで低くなっていくように感じるかもしれません。
しかし、実際にはそうではありません。
特に身長が低くなりやすいのは、朝起きてからの数時間です。
1997年に医学誌『Archives of Disease in Childhood』に掲載された研究では、53人の子どもを対象に、午前9時、午前11時、午後1時、午後3時の計4回、身長を測定しました。
その結果、背筋を人為的に引き伸ばさない方法で測定した場合、身長は次のように変化していました。
午前9時から11時までの2時間では、平均0.31cm低くなっていました。
午前11時から午後1時までの2時間でも、平均0.20cm低くなっています。
ところが、午後1時から3時までの2時間では、平均0.045cmしか低くなっていませんでした。
つまり、この研究では、午前中に比較的大きく身長が低くなり、午後になると変化が小さくなっていたのです。
研究者らは、起床してから約6時間が経過すると、それ以上の身長の低下はほとんど見られなくなると報告しています。

ただし、これは研究に参加した子どもたちの結果です。すべての人が起床後6時間で同じ状態になるわけではありません。
また、2005年には、3〜15歳の子ども478人を対象とした研究も発表されています。
この研究では、午前9〜10時と午後3〜4時の身長を比較しました。
その結果、個人差はあったものの、午後の身長は午前より平均0.47cm低くなっていました。
ここで注目したいのが、測定する時間帯によって、確認できる身長差が変わるという点です。
例えば、朝7時に起きた人が、起床直後に身長を測る場合と、午前10時に測る場合では、同じ日でも数値が異なる可能性があります。
午前10時には、すでに起床から3時間が経過しており、その間に椎間板がある程度圧縮されていると考えられるためです。
そのため、朝と夜の身長差を詳しく調べるなら、朝は起床後のできるだけ早い時間に測定することが重要になります。
昼寝をすると身長が伸びる?横になるだけでも回復する可能性
椎間板が水分を取り戻すのは、夜寝ている間だけではありません。
日中でも、横になって背骨への負担を軽くすると、椎間板の厚みが一部回復することがあります。
実際に、1993年に発表された身長の変化に関する研究では、夜間の睡眠だけでなく、昼寝の後にも身長が高くなる現象が観察されています。
この変化にも、椎間板に含まれる水分が関係していると考えられます。
立ったり座ったりしているときは、背骨に縦方向の負担がかかっています。しかし、横になると負担が軽くなり、椎間板が水分を取り戻しやすくなります。
その結果、日中に薄くなっていた椎間板が少し厚くなり、身長がわずかに高くなる可能性があるのです。
ここで重要なのは、眠ることだけが身長の回復に関係しているわけではないという点です。
横になって背骨にかかる負担を軽くすること自体も、椎間板の回復に関わっています。
ただし、どのくらい身長が戻るかは人によって異なります。横になっていた時間や、それまでの活動内容、椎間板の状態などが影響するためです。
また、昼寝の後に身長が高くなったとしても、それは一時的な変化です。子どもの成長によって骨が伸びることとは、仕組みが異なります。
昼寝をすれば大人でも身長を伸ばし続けられる、という意味ではありません。
それでも、昼寝の前後で身長を測り比べると、背骨の状態が変化していることを確かめられるかもしれません。
朝と夜の身長はどちらが本当?健康診断で違う数値が出る理由
朝と夜で身長が違うと、「本当の身長はどちらなのだろう」と気になるかもしれません。
実際には、朝も夜も、その時点で測った身長として正しい数値です。
身長は1日を通して少しずつ変化するため、測定する時間帯によって違いが生じます。
例えば、ある日の朝に170.0cm、夜に168.8cmだったとします。
この場合、1日の間に身長が1.2cm低くなったことになりますが、それだけで骨が短くなったり、体が縮んだりしたとは判断できません。
椎間板の厚みが変化したことによって、身長に違いが生じている可能性があります。
この仕組みを知っておくと、健康診断で以前と違う身長が出たときにも役立ちます。
例えば、昨年の健康診断では午前9時に身長を測り、今年は午後2時に測ったとしましょう。
今年のほうが少し低い数値だったとしても、その原因の一部は測定した時間帯の違いかもしれません。
2005年に発表された子どもの身長に関する研究でも、測定時刻が異なると、成長の評価に影響する可能性が指摘されています。
特に子どもの成長を継続して確認する場合、数mmの差でも、成長の速さを判断する際に重要になることがあります。
そのため、過去の身長と比較するときは、できるだけ同じ時間帯に測ることが大切です。
また、身長は測り方によっても数値が変わります。
米国疾病予防管理センター『CDC』では、子どもの身長を正確に測るために、靴を脱ぐこと、硬く平らな床に立つこと、顔をまっすぐ前に向けることなどを案内しています。
背筋や膝を自然に伸ばし、肩の高さをそろえて測ることも重要です。
さらに、頭の上に当てる定規などは水平に保ち、髪形によって測定位置がずれないようにします。
朝と夜の小さな身長差を正確に比べるには、時間帯だけでなく、姿勢や測定器具などの条件もそろえる必要があるのです。
自分の身長は朝と夜で何cm違う?自宅でできる簡単な実験
朝と夜で身長がどのくらい変わるのかは、自宅でも調べられます。
必要なのは、身長計、または壁とメジャーなどの測定道具です。家族などに協力してもらうと、より正確に測りやすくなります。
まず、朝起きたら、できるだけ早い時間に身長を測ってみましょう。
靴を脱ぎ、硬く平らな床に立って、膝と背筋を自然に伸ばします。顔はまっすぐ前に向け、体を無理に引き伸ばさないようにします。
測った身長と時刻は、忘れずに記録しておきましょう。
次に、夜寝る直前に、もう一度身長を測ります。このときは、朝と同じ場所、同じ測定方法を使うことが重要です。
例えば、朝の身長が165.2cm、夜の身長が164.1cmだった場合、その日の身長差は1.1cmになります。
ただし、1回の測定だけでは、姿勢や道具のずれが結果に影響することもあります。
できれば、それぞれの時間帯に2〜3回測り、数値に大きな違いがないかを確かめるとよいでしょう。
また、数日間にわたって同じ実験を繰り返すと、自分の身長が1日の中でどのように変わっているのか、傾向が見えてくるかもしれません。
さらに詳しく調べたい場合は、起床直後と起床2時間後の身長を比べる方法もあります。
朝起きてすぐに測った身長が、2時間後にはどのくらい変わっているのかを調べれば、午前中の変化を観察できます。
休日と平日で身長差が違うのか、昼寝の前後で変化があるのかを調べてみるのも興味深いでしょう。

ただし、身長の変化には、測定時刻や活動内容、姿勢など、さまざまな条件が関係します。数日間の記録だけで原因を決めつけず、身近な科学実験として観察するのがおすすめです。
毎日当たり前のように測っている身長ですが、その数値には、背骨にかかる重力や椎間板の水分の移動といった、普段は気づきにくい体の働きが表れています。
朝と夜の身長を実際に比べてみれば、自分の体の中で起こっている小さな変化を発見できるかもしれません。
まとめ
- 人間の身長は朝起きた直後が高く、夜までに約1〜2cm低くなることがある
- 身長が低くなる主な原因は、背骨にある椎間板が圧縮され、水分が移動して厚みが減ること
- 睡眠中に身長が回復するのは、骨が伸びるからではなく、椎間板が水分を取り戻すため
- 身長は特に起床後の数時間で低くなりやすく、午後になると変化が小さくなる傾向がある
- 昼寝や横になって休むことでも、椎間板の厚みが一部回復し、身長が高くなる可能性がある
- 身長を正確に比較するには、測定する時間帯や姿勢、測定方法をそろえることが重要
普段は何気なく測っている身長ですが、その数字にも、私たちの体のさまざまな働きが関係しています。
次に身長を測る機会があれば、測定する時間帯にも注目してみると、新しい発見があるかもしれません。
参考文献
- PubMed「Twice-daily measurements of stature and body weight in two children and one adult」
- PubMed「Quantitative analysis of diurnal variation in volume and water content of lumbar intervertebral discs」
- PubMed「In vivo diurnal variation in intervertebral disc volume and morphology」
- Archives of Disease in Childhood「Diurnal variation in stature: is stretching the answer?」
- PubMed「Diurnal variation of height in children」
- Centers for Disease Control and Prevention「Measuring Children’s Height and Weight」

