飴が腐りにくいのは「水分が少ないから」だけではない!?【梅雨や夏にベタベタする理由】

お菓子にはさまざまな種類がありますが、その中でも飴は少し不思議な存在です。長い間置いてあっても見た目がほとんど変わらず、「これってまだ食べられるの?」と思った経験がある人もいるのではないでしょうか。

第120回雑学調査レポートでは、そんな「飴」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

飴が腐りにくいのは、単に水分が少ないからではない

飴は、ほかのお菓子と比べてもかなり長持ちします。袋の奥から昔買った飴が出てきて、「そういえば飴ってあまり腐らないな」と思ったことがある人もいるでしょう。

一般的なハードキャンディが腐りにくい理由を知るうえで、重要になるのが「水分活性」です。

少し難しそうな言葉ですが、簡単にいえば「食品の中にある水を、微生物がどれくらい利用しやすいか」を示す数字です。

食品に水分が多ければ、必ず微生物が増えやすいとは限りません。同じ量の水が入っていても、その水がどのような状態になっているかによって、微生物の増えやすさは変わります。

水分活性は0から1までの数字で表され、純粋な水は1です。数字が低くなるほど、細菌や酵母、カビなどが利用できる水が少なくなります

砂糖や塩がたくさん溶けている食品では、水がそれらの成分と強く関わるため、微生物が利用しやすい水が減ります。

そのため食品が腐りやすいかどうかを考える場合、単純な水分量だけを見るのではなく、「その水を微生物が使えるのか」という点も大切です。

『U.S. Food and Drug Administration』も、細菌や酵母、カビなどが増えるためには利用可能な水が必要であり、砂糖や塩を加えることで水分活性を下げられると説明しています。

飴は砂糖が多いので、微生物が増えにくい

ハードキャンディが長持ちする大きな理由の一つが、大量の砂糖です。

砂糖を水に溶かすと、水分活性が低くなります。食品の中に水が残っていても、微生物が自由に利用できる水が少なくなるため、細菌やカビなどが増えにくくなるのです。

ジャムや砂糖漬けが比較的長持ちするのも、同じように砂糖によって水分活性が下がることが理由の一つです。

さらにハードキャンディは、砂糖が多いだけでなく、そもそもの水分量もかなり少なく作られています。

菓子類の保存についてまとめた研究では、ハードキャンディの水分量はおよそ2〜5%、水分活性はおよそ0.25〜0.40とされています。別の研究レビューでは、一般的なハードキャンディの水分量として2〜3%程度が紹介されています。

製品の材料や作り方によって数字には差がありますが、一般的なハードキャンディは「水分がかなり少なく、水分活性もかなり低い食品」と考えられます。

『U.S. Food and Drug Administration』の資料では、水分活性0.85という数字が食品に関する一部の規制上の区切りとして使われています。また、多くの食品は水分活性が0.95を超えていて、細菌や酵母、カビが増えるために十分な水があると説明されています。

それに対して、ハードキャンディで報告されている水分活性は0.25〜0.40ほどです。

つまり、微生物から見るとハードキャンディの中は「使える水がほとんどない環境」になっています。

飴に大量の砂糖が使われているのは、単に甘くするためだけではありません。砂糖が多く、水分が少ないことによって水分活性が低くなっている点も、長持ちしやすさにつながっています。

ハードキャンディは「砂糖でできたガラス」のようなもの

ハードキャンディには、もう一つ面白い特徴があります。

食品科学では、一般的なハードキャンディの内部は「ガラス状態」になっていると考えられています。

もちろん、窓ガラスのような本物のガラスが入っているわけではありません。

ここでいう「ガラス」とは、分子がきれいな結晶として並ばず、バラバラな配置のまま固まっている状態のことです。

ハードキャンディを作るときは、砂糖や水、グルコースシロップなどを混ぜ、高い温度まで加熱します。

研究レビューでは、一般的な製造方法として135〜160℃ほどまで加熱する方法が紹介されています。砂糖と水を中心に作る場合には、145〜160℃ほどの「ハードクラック」と呼ばれる温度帯まで加熱することもあります。

高温まで加熱する大きな目的の一つが、水分を飛ばすことです。

水分を十分に減らした後、飴を冷やします。すると糖の分子がきれいな結晶として並ぶよりも先に動きにくくなり、バラバラな配置のまま固まります。

これが「ガラス状態」です。

ガラス状態になると分子が動きにくいため、ハードキャンディらしい硬くてパキッと割れる食感が生まれます。

透明なハードキャンディは、科学的に見ると「砂糖を中心に作られたガラス状の固体」ともいえるのです。

梅雨に飴がベタベタするのは、空気中の水分を吸うから

長持ちするはずの飴でも、梅雨や夏になると表面がベタベタすることがあります。

袋から出そうとしたら包装紙にくっついていた、という経験がある人もいるでしょう。

このベタつきにも「水分」が関係しています。

ハードキャンディはもともと非常に水分が少ない食品ですが、糖を中心とした成分は空気中の水分を吸収します。

そのため湿度の高い場所に置いておくと、少しずつ空気中の水分を取り込んでしまいます。

水分が増えると、硬かった飴の内部が動きやすい状態に変わっていきます。

この現象を理解するために使われるのが「ガラス転移温度」という考え方です。

少し難しい言葉ですが、「硬いガラスのような状態から、やわらかく動きやすい状態へ変わりやすくなる温度」と考えると分かりやすいでしょう。

水は、飴をやわらかくする働きを持っています。空気中から水分を吸収するとガラス転移温度が下がり、普段保存しているような温度でも糖の分子が動きやすくなります。

すると表面がやわらかくなり、包装紙にくっついたり、飴同士がくっついたりします。

ハードキャンディについて調べた研究でも、高い湿度による水分の吸収は、ベタつきを起こす大きな原因の一つとされています。

つまり飴の「パキッとした硬さ」は、乾燥した状態だからこそ保たれているのです。

飴は高温多湿を避けて保存する

ハードキャンディをできるだけ良い状態で保存したい場合は、特に湿気を避けることが大切です。

梅雨や夏場は空気中の水分が多いため、開封した袋をそのまま置いておくと、飴が湿気を吸いやすくなります。

開封した後は袋の口をきちんと閉じるか、チャック付きの袋や密閉容器などを利用すると、外の空気に触れる量を減らせます。

温度にも注意が必要です。

ハードキャンディは高い温度や湿度の影響を受けると、表面がベタつくだけでなく、砂糖が結晶化することがあります。

砂糖が結晶化すると、透明だった飴が白っぽくなったり、ザラザラした食感になったりする場合があります。こうした変化は「グレイニング」と呼ばれることもあります。

研究レビューでも、ハードキャンディを保存するときに起こりやすい問題として「ベタつき」と「砂糖の結晶化」が挙げられています。

どちらが起こりやすいかは、湿度や温度だけでなく、砂糖やグルコースシロップなどの配合によっても変わります。

飴は腐りにくい食品ですが、保存方法によって食感や味は変化します。商品に書かれている保存方法を確認し、基本的には高温多湿や直射日光を避けて保存するのがよいでしょう。

腐りにくい飴にも賞味期限があるのはなぜ?

一般的なハードキャンディは水分活性が低いため、多くの微生物が増えにくい食品です。

ただし、「微生物が増えにくいこと」と「いつまでも買ったときと同じ状態であること」は別です。

時間がたつにつれて、湿気を吸ってベタついたり、砂糖が結晶化したりすることがあります。香りや味、色、食感などが少しずつ変化することもあります。

食品の品質は、細菌やカビだけで決まるものではありません。温度、湿度、光、酸素、使われている材料など、さまざまな条件から影響を受けます。

さらに「飴」と呼ばれるお菓子にも、多くの種類があります。

ここまで説明してきた内容は、主に一般的なハードキャンディについてのものです。

ミルクを多く使った飴や果汁入りの飴、中にジャムやクリームが入った飴、やわらかいソフトキャンディなどでは、水分量や材料が異なります。

そのため、ハードキャンディの水分活性や保存性を、すべての飴にそのまま当てはめることはできません。

『消費者庁』では賞味期限について、決められた方法で保存した場合に、期待される品質を十分に保つことができる期限としています。

賞味期限を過ぎた瞬間に食べられなくなるという意味ではありません。一方で、期限表示は未開封で、表示された保存方法を守っていることが前提です。

特に開封した後は湿気などの影響を受けやすくなります。袋や容器に書かれている保存方法に従い、できるだけ早めに食べるのが安心です。

まとめ

  • 飴が腐りにくい大きな理由は、水分が少なく「水分活性」も低いこと
  • 水分活性とは、食品中の水を微生物がどれくらい利用しやすいかを示す指標
  • ハードキャンディは砂糖が多く、水分量も少ないため微生物が増えにくい
  • 一般的なハードキャンディの水分活性はおよそ0.25〜0.40とかなり低い
  • ハードキャンディは「ガラス状態」と呼ばれる構造になっている
  • 飴が湿気を吸うとガラス転移温度が下がり、ベタつきやすくなる
  • 飴は高温多湿や直射日光を避けて保存することが大切
  • 飴は腐りにくくても、湿気や結晶化などによって品質は少しずつ変化する
  • ハードキャンディの保存性を、すべての種類の飴にそのまま当てはめることはできない
  • 賞味期限は未開封で、表示された保存方法を守っていることが前提

「なぜ飴は長く置いていても変化しにくいのか」という素朴な疑問の裏には、水分活性や砂糖の性質など、食品科学の仕組みが隠れていました。

身近すぎて深く考えることの少ない飴ですが、知ってみると意外と奥深いお菓子です。いつも食べている一粒も、少し違って見えてくるかもしれません。

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