漫才、落語、コント――日本のお笑いには、さまざまな形があります。その中でもコントは、笑いだけでなく「演じる」要素が強い芸としても知られていると言えるでしょう。
第37回雑学調査レポートでは、そんな「コント」に関する雑学をご紹介していきます。
「コント」という言葉の意外な正体
「コント」と聞くと、多くの人はお笑い芸人が舞台やテレビで演じる短い劇を思い浮かべるはずです。
たとえば、コンビニ店員と変な客、学校の先生と生徒、会社の上司と部下、刑事と犯人など、特定の場面を設定して、登場人物になりきって笑わせる芸です。
しかし、この「コント」という言葉は、もともと「お笑い」を意味する言葉ではありません。
語源はフランス語の「conte」です。フランス語の conte は、短い物語、想像上の話、童話、おとぎ話のような意味を持つ言葉です。つまり、もともとのコントは「笑わせる短い劇」ではなく、「短いおとぎ話」に近い言葉でした。
なぜ「短い物語」が「お笑いの寸劇」になったのか
コントには、基本的に短い物語があります。
登場人物がいて、場面があり、何かの事件やズレが起こり、最後にオチがつきます。
- 病院に来た患者が、医者よりも病気に詳しすぎる
- 面接に来た人が、面接官を逆に審査し始める
- 刑事が犯人を追い詰めるはずなのに、犯人のほうが常識人だった
これらはすべて、短い物語です。
小説ほど長くもなければ、映画ほど大がかりでもありません。しかし、数分の中に人物、状況、展開、結末があります。
つまり、日本のお笑いでいうコントは、単なるギャグの連発ではなく、「笑える短編物語」なのです。
そういった点では、フランス語の conte が持っていた「短い物語」という意味と、日本語の「コント」はつながっていると言えるでしょう。
違うのは、日本ではそこに「笑いを目的とする」という条件が強く加わったことなのです。
漫才との違いを比べると、コントの意味がよくわかる
コントの特徴は、漫才と比べるとわかりやすくなります。
漫才では、基本的に演者は「本人」として舞台に立ちます。もちろん、途中で医者や客、先生の役を少し演じることはありますが、基本の形は、演者同士の会話です。
一方、コントでは、最初から登場人物になりきることが多くなります。コンビニ店員や警察官、宇宙人、教師、強盗、会社員、ロボットなど、演者は「本人」ではなく、物語の中の人物として現れます。
そのため、漫才は「話芸」の要素が強く、コントは「演劇」の要素が強いと言えるでしょう。
もちろん、現代のお笑いでは境界があいまいな場合もあります。漫才の中で役に入り込む「コント漫才」というジャンルもあれば、コントの中に漫才のような掛け合いが入ることもあります。
それでも、コントの中心には「設定された世界」があります。
舞台上に病院、教室、会社、レストラン、家庭、あるいは何もセットがなくても、演者の演技によって観客はその場面を想像します。
つまり、コントは観客に「短い物語の世界」を見せる芸でもあるのです。
コントは「小さな演劇」でもある
コントは、よく「寸劇」と説明されます。
寸劇とは、短い劇のことです。「寸」という字には「わずかな長さ」という意味があります。
コントもまさにそれに近いものです。ただし、普通の演劇と違って、コントは笑いを中心に組み立てられます。
物語の完成度だけでなく、どこで笑いが起きるか、どこで意外な展開を入れるか、どこで観客の予想を裏切るかが重要になります。
たとえば、まじめな刑事ドラマであれば、刑事が証拠を集めて犯人を追い詰める流れになります。
しかしコントでは、刑事がやたらと怖がりであったり、犯人が礼儀正しすぎたり、取り調べ室にまったく関係のない人が次々入ってきたりします。
ここがコントの面白い部分で、設定は演劇のように作られていますが、あくまでも目的は”笑い”にあります。
コントは物語であり、演劇であると同時に、お笑いでもあるのです。
コントが数分で成立する理由
コントは物語でありながら、長い時間をかけなくても成立します。
この理由の一つは、観客がすぐに理解できる設定を使うことが多いためです。
舞台に机が一つあるだけでも、演者が「いらっしゃいませ」と言えば、そこは店になります。白衣を着れば病院に見えますし、スーツで机を挟んで座れば、面接会場にも見えるでしょう。
観客がすでに知っている場所や関係性を使うことで、コントは説明を短くすることができるのです。結果として、すぐに笑いの展開に入ることができるようになります。
これは、短い物語として非常に効率的な仕組みです。短編小説でも、読者がすぐに理解できるように、ありふれた場所や人間関係を使うことがあり、コントもそれに似たものがあります。
短編小説との違いを挙げるとすれば、文章で読ませるのではなく、演者の声や表情、間、動きで見せるという点です。
コントの笑いは「設定のズレ」から生まれやすい
コントでは、よく「普通ならこうなるはず」という予想が裏切られます。
たとえば、病院では医者が患者を診察するはずです。ところが、患者が医者を診察し始めたら状況がおかしくなります。
学校では先生が生徒を指導するはずです。ところが、生徒のほうが先生より冷静で大人びていたら、そこにズレが生まれます。
レストランでは店員が注文を取るはずです。ところが、店員が料理名をすべてポエムのように説明し始めたら、観客は「そんな店員はいないだろう」と感じます。
このような「普通」と「変」の差が笑いになります。
コントは短い物語であるため、設定を素早く示すと同時に、その中でズレを大きくしていく必要があります。そのため、コント師は設定作りに非常に気を遣うとされています。
ただ面白いセリフを発するだけではなく、「どういう場所で、誰と誰が、どんな関係で、何が変なのか」が、コントにおいて重要になってくるのです。
まとめ
- お笑いの「コント」の語源はフランス語の「conte」で、短い物語、想像上の話、童話、おとぎ話のような意味がある
- コントは、フランス語の conte に「笑いを目的とする」という条件が強く加わったもの
- 漫才は「話芸」の要素が強く、コントは「演劇」の要素が強い
- コントは物語であり、演劇であると同時に、お笑いでもある
- コントが数分で成立する理由の一つは、観客がすぐに理解できる設定を使うことが多いため
- コントは「設定のズレ」から笑いが生まれやすいため、コント師は設定作りに非常に気を遣う
普段何気なく笑って見ているコントも、言葉の由来を知ると、少し違ったものに見えてきます。
単なる短いお笑いではなく、数分の中に物語を詰め込んだ芸だと考えると、コントの奥深さがより感じられるかもしれません。
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