和食を中心に、さまざまな料理で親しまれている「しいたけ」。昔から食べられてきたおなじみの食材ですが、実はちょっとした工夫によって、その特徴をより生かせることがあります。
第172回雑学調査レポートでは、そんな「しいたけ」に関する雑学をご紹介していきます。
しいたけを日光に当てるとビタミンDが増えるのはなぜ?
スーパーで買ってきたしいたけは、料理する前に日光に当てることで、ビタミンDを増やせることをご存じでしょうか。
実は、しいたけには太陽の光を利用して、ビタミンDを作り出す性質があります。この変化は、しいたけが育っている間だけでなく、収穫されてからでも起こります。
その理由は、しいたけに含まれる「エルゴステロール」という成分にあります。
エルゴステロールは、きのこ類に含まれている物質です。この成分に太陽光の紫外線が当たると、化学反応によって「ビタミンD2」という栄養素に変化します。
つまり、しいたけは日光を浴びることで、もともと持っている成分の一部をビタミンD2に変えられるのです。
ここで重要なのは、しいたけを完全に乾燥させる必要がないという点です。水分を抜くこと自体がビタミンD2を増やすのではなく、紫外線が当たることで変化が起こります。
そのため、生しいたけも干ししいたけも、日光浴によってビタミンD2を増やせる可能性があります。

しいたけの日光浴で増えるビタミンDにはどんな働きがある?
ビタミンDは、骨や歯の健康を保つために欠かせない栄養素です。
私たちの骨や歯を作る材料の一つに「カルシウム」があります。カルシウムは牛乳や小魚、豆腐など、さまざまな食品から摂取できます。
しかし、カルシウムを食事から取るだけで、そのすべてが体に吸収されるわけではありません。
そこで重要になるのがビタミンDです。ビタミンDには、腸からカルシウムが吸収されるのを助ける働きがあります。
『厚生労働省』の健康情報サイト『e-ヘルスネット』でも、骨の健康を保つためには、カルシウムだけでなく、ビタミンDなどの栄養素も大切だと説明されています。
しいたけの日光浴で増えるビタミンD2も、体内でビタミンDとして利用されます。
例えば、日光浴させたしいたけを、豆腐の入ったみそ汁や、チーズを使った料理に加えるのもよいでしょう。カルシウムを含む食材と組み合わせることで、栄養のバランスを整えやすくなります。
ただし、骨の健康には、ビタミンD以外にもさまざまな栄養素が必要です。しいたけだけに頼るのではなく、普段の食事に取り入れる工夫として考えるとよいでしょう。
しいたけのビタミンDは何倍になる?研究でわかった変化
しいたけを日光に当てると、ビタミンD2は実際にどのくらい増えるのでしょうか。
この疑問については、日本で行われた研究で具体的な数値が報告されています。
1991年に学術誌『ビタミン』に掲載された「日光照射によるシイタケ中のビタミンD2増量効果」という研究では、生しいたけと干ししいたけを日光に当て、ビタミンD2の量を比較しました。
まず、ビニールハウスで栽培された生しいたけの傘の裏側に、晴れた日の太陽光を当てました。
すると、1時間の日光浴でビタミンD2の量が約3.6倍に増加しました。さらに3時間当てた場合には、約5倍になっています。
干ししいたけでも、大きな変化が確認されました。
同じ研究では、干ししいたけの傘の裏側に1時間日光を当てると、ビタミンD2の量が約24倍になりました。3時間では約27倍に増えたことが報告されています。

ただし、約24倍という数字は、日光浴をする前と比べてどのくらい増えたかを表しています。
例えば、最初に含まれている量が少ない場合、24倍になっても、最初からビタミンD2が多いしいたけより含有量が少ないことも考えられます。
また、これらの数値は、研究で使用したしいたけを特定の条件で日光に当てた結果です。
実際には、日差しの強さや天候、季節、しいたけにもともと含まれるビタミンD2の量などによって、増え方が変わります。
そのため、家庭で1時間干せば必ず3.6倍や24倍になるわけではありませんが、日光に当てることでビタミンD2が増えることは研究によって確認されています。
しいたけを干すときは傘の裏側を上にするのがポイント
しいたけの日光浴では、どちらの面を太陽に向けるかが重要です。
しいたけには、茶色い傘の表側と、白っぽいひだが並んだ裏側があります。
ビタミンD2を増やす目的で日光に当てるなら、白っぽいひだがある裏側を上にして並べる方法がおすすめです。
1991年の研究では、傘の茶色い表面に日光を当てる場合より、裏側のひだに日光を当てた場合のほうが、ビタミンD2の量が大きく増加しました。
つまり、しいたけをただ日当たりのよい場所に置くだけでなく、ひだに光が直接当たるようにすることが大切なのです。

『大分県』の公式サイトでも、しいたけを日光浴させる際には、容器から取り出して、ひだを上に向ける方法が紹介されています。
家庭では、清潔なザルや網などを使えば十分です。しいたけを裏返して、ひだが太陽の方を向くように並べましょう。
しいたけ同士が重ならないようにすると、それぞれのひだに光が届きやすくなります。
しいたけの日光浴は30分でいい?時間の目安と正しい干し方
しいたけの日光浴は、家庭でも簡単に試せます。
時間については、晴れた日に30分ほど日光に当てる方法が一つの目安になります。
『島根県』の公式サイトでは、干ししいたけを料理に使う前に、傘の裏側のひだを30分から1時間ほど日光に当てる方法が紹介されています。
また、『JAグループ』では、生しいたけを食べる前に1~2時間ほど軽く干す方法が紹介されています。
このように、しいたけの種類や紹介されている方法によって、日光浴の時間には違いがあります。
30分は手軽に試せる時間ですが、その時間だけでどのくらいビタミンD2が増えるかは、日差しの条件によって変わります。
家庭で生しいたけを日光浴させる場合は、次のように行うとよいでしょう。
まず、しいたけを購入したパックから取り出します。汚れが付いている場合は、軽く払い落とすか、湿らせたキッチンペーパーなどで拭き取ってください。
次に、ザルや清潔な網の上に、傘の裏側を上にして並べます。しいたけを重ねず、少し間隔を空けることがポイントです。
準備ができたら、日当たりのよい屋外に置きましょう。ベランダや庭など、直射日光が届く場所を選びます。
最初は30分ほどを目安にし、時間に余裕があれば、1時間程度の日光浴を試す方法もあります。
ただし、真夏の強い日差しの下では、しいたけの温度が上がりやすくなります。長時間放置せず、日光浴が終わったら速やかに取り込みましょう。
また、屋外では、ほこりや虫、鳥などによって汚れが付くことがあります。清潔な場所を選び、必要に応じて風通しのよい食品用の干し網を利用してください。
なお、30分から1時間程度の日光浴は、ビタミンD2を増やすための方法です。
しいたけを長期間保存できる状態まで乾燥させる方法とは異なります。短時間干しただけの生しいたけは、日光浴後も生鮮食品として扱いましょう。
窓際でも大丈夫?ガラス越しの日光浴では効果が変わる
「ベランダや庭がない場合、室内の窓際に置いてもよいのでは?」と思う方もいるでしょう。
窓際は明るく、日光がよく当たることもあります。しかし、しいたけのビタミンD2を増やす目的では、窓ガラスの影響に注意が必要です。
その理由は、ビタミンD2を作るために必要な紫外線の一部が、窓ガラスによって遮られるためです。
太陽の光には、目に見える明るい光だけでなく、紫外線も含まれています。
しいたけのエルゴステロールがビタミンD2に変化するには、この紫外線が重要な役割を果たします。
しかし、一般的な窓ガラスは、ビタミンD2の生成に関係する紫外線を通しにくい性質があります。
そのため、窓を閉めた室内にしいたけを置いても、屋外で直接日光に当てる場合より、ビタミンD2が増えにくいと考えられます。
『大分県』の公式サイトでも、窓越しに日光浴させるより、窓を開けて光を取り込む方法が紹介されています。
屋外に置けない場合は、安全や衛生に気を付けながら、窓を開けて日光を当てる方法も選択肢になります。
また、曇りの日や日差しが弱い日でも、屋外には紫外線が届いています。ただし、その量は天候や季節、時間帯によって変化します。
効率よく日光浴させたい場合は、晴れている日に、ひだへ直接光が届く環境を選ぶとよいでしょう。
市販の干ししいたけも日光浴させるとビタミンDが増える?
すでに乾燥している干ししいたけも、日光浴によってビタミンD2を増やせます。
「干ししいたけは、最初から太陽の光で乾燥させているのでは?」と思うかもしれません。
しかし、市販の干ししいたけが、すべて天日干しで作られているわけではありません。
しいたけの乾燥には、専用の乾燥機を使う方法もあります。『大分県』の公式サイトでも、収穫したしいたけを乾燥機で乾燥させる工程が紹介されています。
乾燥機を使った場合、乾燥している間に太陽の紫外線を十分に受けるとは限りません。
そのため、見た目が同じ干ししいたけでも、含まれているビタミンD2の量には違いが生じます。
実際に、1990年に『日本家政学会誌』で発表された「キノコ中のエルゴステロールおよびビタミンD2の定量」という研究では、市販の干ししいたけを調べたところ、ビタミンD2が含まれているものと、ほとんど検出されないものがありました。
さらに、この研究では、干ししいたけに日光や紫外線を当てると、ビタミンD2が新たに作られることも確認されています。
乾燥したしいたけにも、ビタミンD2の材料となるエルゴステロールが残っているためです。
干ししいたけを料理に使う場合は、水で戻す前に、ひだを上にして30分から1時間ほど日光に当てる方法があります。
その後は、普段どおり水で戻して調理できます。
すでに乾燥している商品でも、調理前に日光を当てることで、ビタミンD2を増やせる可能性があるのです。
日光浴したしいたけのおすすめの食べ方と注意点
日光浴を終えたしいたけは、普段と同じように料理に使えます。
例えば、生しいたけなら、フライパンやグリルで焼いて、しょうゆやバターで味付けすると、香りのよい一品になります。
みそ汁やスープに加えるのもおすすめです。豆腐や小松菜など、カルシウムを含む食材と組み合わせると、栄養のバランスを整えやすくなります。
炊き込みご飯や煮物にも利用できます。干ししいたけなら、水で戻してから使うことで、独特のうま味や香りを料理に生かせます。
また、干ししいたけの戻し汁にはうま味成分が含まれるため、だしとして使うのもよいでしょう。
ただし、しいたけを食べるときには、一つ重要な注意点があります。
それは、中心部まで十分に加熱することです。
しいたけを生のまま、または加熱が不十分な状態で食べると、「しいたけ皮膚炎」と呼ばれる皮膚症状が起こることがあります。
しいたけ皮膚炎では、強いかゆみが生じたり、皮膚に線状の赤い発疹が現れたりする場合があります。

『食品安全委員会』が掲載している海外の食品安全関係情報でも、フランスの食品衛生当局が2021年に、しいたけを十分に加熱して食べるよう注意を呼びかけたことが紹介されています。
この注意喚起では、生しいたけだけでなく、干ししいたけや粉末状のしいたけについても、十分に加熱することが重要だと説明されています。
日光浴はビタミンD2を増やすための工夫であり、加熱調理の代わりになるものではありません。
また、短時間の日光浴を終えた生しいたけは、早めに調理することをおすすめします。すぐに使わない場合は、キッチンペーパーなどで包み、食品保存用の袋や容器に入れて冷蔵保存しましょう。
日光浴によってどのくらいビタミンD2が増えるかは、しいたけの状態や日差しの条件によって異なります。
まずは、料理に使う前にひだを上にして日光に当て、十分に火を通してから、いつものしいたけ料理に取り入れてみてください。
まとめ
- しいたけに紫外線を当てると、エルゴステロールがビタミンD2に変化する
- ビタミンDにはカルシウムの吸収を助け、骨や歯の健康を支える働きがある
- 研究では、1時間の日光浴で生しいたけのビタミンD2が約3.6倍、干ししいたけでは約24倍に増加した
- しいたけを日光浴させる際は、傘の裏側にある白っぽいひだを上に向けるのが効果的
- 日光浴は30分ほどから試せるが、ビタミンD2の増加量は日差しの強さや天候などによって変わる
- 窓ガラスは紫外線を遮るため、屋外で直接日光を当てるほうが効果的
- 市販の干ししいたけも、水で戻す前に日光浴させることでビタミンD2を増やせる
- 日光浴したしいたけも、生や加熱不足で食べず、中心部まで十分に火を通すことが大切
太陽の光に当てるだけで、しいたけの栄養成分が変化するとは意外な話です。
普段の料理に取り入れやすい方法なので、晴れた日には試してみるのもよさそうです。

