栗で食べている部分は「種」だった!?【栗のイガにも名前がある】

何気なく食べている栗ですが、よく考えてみると少し不思議な食べ物です。硬い皮に包まれ、さらに木になっているときにはトゲのあるイガにも覆われています。

第129回雑学調査レポートでは、そんな「栗」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

栗の黄色い部分は「果肉」ではなく種子の中の子葉

秋になると、栗ご飯や焼き栗、モンブランなどで栗を食べる機会が増えます。栗の硬い皮をむくと黄色やクリーム色の部分が現れるため、ミカンやモモと同じように、この部分が「果肉」だと思っている人もいるでしょう。

しかし、植物のつくりとして見ると、栗は少し違います。私たちが主に食べている黄色い部分は、種子の中にある「子葉」です。

『日本植物生理学会』も、クリの食べられる部分について「子葉」と説明しています。

子葉とは、種子の中にある新しい植物の体の一部です。植物が発芽するときには、芽生えの成長を助けます。栗では、この子葉が非常に大きく発達しており、でんぷんなどの養分が蓄えられています。

つまり、焼き栗を半分に割ってスプーンですくったときや、栗ご飯に入っている黄色い栗を食べたとき、私たちは一般的な果物のような果肉ではなく、種子の中にある子葉を主に食べていることになります。

「栗で食べている部分は種」と紹介されることもあります。大まかにはこの説明でも意味は通じますが、さらに詳しく見ると、食べている部分は種子全体ではありません。種子を構成する部分のうち、大部分を占めている子葉が、普段食べている栗の中心部分です。

硬くて茶色い「鬼皮」は果実の皮

スーパーなどで売られている生栗を見ると、表面は硬くてツヤのある茶色い皮で覆われています。この部分が、一般に「鬼皮(おにかわ)」と呼ばれているものです。

名前に「皮」と付いているため、種を包んでいる皮のように感じるかもしれません。しかし、植物学では鬼皮は果実をつくる「果皮(かひ)」にあたります

そのため、鬼皮に包まれた一粒の栗そのものが、植物学では一つの果実です。

クリの果実は「堅果(けんか)」と呼ばれる種類に分類されます。堅果は、果皮が硬くなった果実です。『三重県』の林業研究所も、クリの果実を「堅果」として紹介しています。

リンゴやモモでは、果実の中に柔らかくて水分の多い部分があります。そのため、「果実には柔らかい果肉がある」という印象を持ちやすいでしょう。

一方、栗では果皮が硬くなっています。私たちが「栗の硬い皮」と考えている鬼皮が、植物学では果実の外側をつくる部分なのです。

栗の構造を理解するときは、まず「鬼皮に包まれた一粒の栗が果実」と考えると、その内側の構造も分かりやすくなります。

鬼皮の下にある「渋皮」は種子を包む種皮

鬼皮をむくと、その下から薄い茶色の皮が現れます。これが「渋皮(しぶかわ)」です。

渋皮は、種子を包んでいる「種皮(しゅひ)」にあたります。『日本植物生理学会』でも、クリの子葉を囲んでいる渋皮について種皮と説明しています。

つまり、鬼皮と渋皮は、見た目はどちらも「栗の皮」ですが、植物学では役割が違います。

外側の鬼皮は果実をつくる果皮で、その内側にある渋皮は種子を包む種皮です。

渋皮という名前のとおり、そのまま食べると強い渋味があります。この渋味に大きく関係しているのがタンニンです。

タンニンはポリフェノールの一種で、『日本植物生理学会』によると栗の渋皮には多く含まれています。渋皮の細胞が傷つくとタンニンが酸化し、褐色から黒褐色の物質へ変化します。

そのため、栗を蒸したり焼いたりしたあとに渋皮をむくと、指先が茶色や黒っぽくなることがあります。焼いたときのすすが付いているわけではなく、渋皮に含まれる成分が関係しています。

ここまでを外側から見ると、「鬼皮は果皮」「渋皮は種皮」「その内側に子葉がある」という順番です。

普段は鬼皮と渋皮をまとめて「栗の皮」と呼ぶことがありますが、植物のつくりとしては別の部分になります。

トゲだらけの「イガ」は栗の果実ではない

栗と聞いて、鋭いトゲがびっしり生えたイガを思い浮かべる人も多いでしょう。

木になっている栗を見ると、イガの中に栗が入っています。そのため、イガまで含めて果実のように感じるかもしれません。

しかし、イガそのものは果実ではありません。

植物学では、栗のイガは「殻斗(かくと)」と呼ばれます。殻斗は果実を外側から包んで守る器官です。

ドングリを見ると、実の下側に帽子やお椀のような部分が付いています。これも殻斗です。栗では、この殻斗が果実全体を包み込み、表面に非常に長いトゲが発達しています。

『鳥取県』の公式サイトでも、クリのイガにあたる部分を殻斗として説明しています。成熟すると殻斗が割れ、その中から一粒ずつの栗が現れます。

したがって、「イガの中に入っている鬼皮付きの栗」が果実です。イガは、その果実をさらに外側から包んでいる器官になります。

木になっている栗を外側から順番にたどると、「イガである殻斗」「鬼皮で覆われた果実」「渋皮で覆われた種子」「種子の大部分を占める子葉」という構造です。

栗ご飯として食べている部分までたどり着くには、殻斗、果皮、種皮という複数の部分を通っていることになります。

1つのイガに栗が2個から3個入っている理由

栗のイガが自然に割れたところを見ると、中に複数の栗が並んでいることがあります。

これは、栗の花のつくりと関係しています。

クリには雄花と雌花があります。『鳥取県』によると、成長を始めたクリでは、1つの殻斗の中に3個の雌花が入っています

それぞれの雌花には子房があり、受粉と受精を経て成長すると果実になります。そのため、1つのイガの中で複数の栗が育つのです。

成熟したときの数について、『三重県』は、クリの堅果が長いトゲのある殻斗に2個から3個包まれると説明しています。『鳥取県』でも、成熟した殻斗には普通2個から3個のクリの実が入るとしています。

『農林水産省』も、一般的な品種では1つのイガに3個の栗が入る「3つ栗」が見られると紹介しています。

ただし、すべてのイガに必ず大きな栗が3個入るわけではありません。花が付いたあと、受粉やその後の成長などによって、十分に大きくなる果実の数は変わります。

そのため、イガを開いたときに2個だけ大きな栗が入っていたり、小さな栗が混じっていたりすることがあります。

丸い栗と平らな栗があるのもイガの中で育つため

栗をよく見ると、全体が丸いものだけではありません。片側だけ平らになった栗や、両側が平らになった栗もあります。

1つのイガの中では、複数の果実が限られた空間に並んで成長します。そのため、隣の栗と接する側が平らになった形の栗もできます。

イガの中に複数の栗が入っていることを知ると、栗に丸い面と平らな面がある理由もイメージしやすくなります。

一方、栽培方法によって1つのイガに1個の大きな栗を育てる例もあります。

茨城県のブランド栗「飯沼栗(いいぬまぐり)」がその一つです。『農林水産省』の地理的表示「GI」の登録情報では、「飯沼栗」は独自の栽培技術によって1つの毬に1果の大粒の栗を作ることが特徴として紹介されています。

一般的な栗では複数の果実が一緒に育つのに対し、「飯沼栗」では1つのイガに1つの果実を実らせます。

普段はあまり意識しない栗の数や形にも、花のつくりやイガの中での成長の仕方が関係しているのです。

生栗をむくと「果実・種子・子葉」の違いが分かる

栗の構造は、実際に生栗をむいていくと理解しやすくなります。

最初に見えるのは、硬くてツヤのある茶色の鬼皮です。この鬼皮は果皮であり、鬼皮に包まれた一粒の栗全体が果実にあたります。

鬼皮をむくと、薄い茶色の渋皮が出てきます。この渋皮が種皮です。ここから内側が種子になります。

さらに渋皮を取り除くと、黄色やクリーム色をした部分が現れます。これが大きく発達した子葉で、私たちが栗として主に食べている部分です。

木になっている状態では、その果実のさらに外側をトゲのあるイガ、つまり殻斗が包んでいます。

外側から順番にたどると、「殻斗であるイガ」「果皮である鬼皮」「種皮である渋皮」「種子の中にある子葉」となります

普段の言葉であれば、「イガの中に栗があり、栗の皮をむけば中身を食べられる」と考えても問題ありません。

植物学の視点では、もう少し細かく分かれています。殻斗の中に果実があり、その果実の中に種子があり、さらに種子の中にある大きな子葉を私たちは主に食べています。

焼き栗や栗ご飯でいつも食べている黄色い部分は、栗の木が次の世代を育てるため、種子の中に作った部分なのです。

まとめ

  • 栗で主に食べている黄色い部分は果肉ではなく、種子の中にある「子葉」
  • 栗の硬くて茶色い鬼皮は、植物学では果実をつくる「果皮」にあたる
  • 鬼皮の内側にある渋皮は、種子を包んでいる「種皮」にあたる
  • 栗のイガは果実ではなく、果実を包んで守る「殻斗」と呼ばれる器官
  • 1つのイガの中では複数の雌花が育つため、成熟すると2個から3個の栗が入ることがある
  • 栗を外側から見ると「殻斗→果皮→種皮→子葉」という順番で構成されている
  • 普段「栗の実」と呼んで食べている部分は、植物学的には種子の大部分を占める子葉

普段は何気なく食べている栗も、植物のつくりという視点で見てみると、さまざまな発見があります。

次に栗を食べる機会があれば、鬼皮や渋皮にも注目してみると、いつもとは少し違った楽しみ方ができるかもしれません。

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