しりとりの起源は平安時代!?【現代よりも複雑な”文字ぐさり”】

子どもから大人まで楽しめる言葉遊びとして、昔から親しまれている「しりとり」。ルールはよく知っていても、「なぜ『しりとり』と呼ぶのか」「いつごろから遊ばれているのか」と聞かれると、すぐには答えられない人も多いでしょう。

第127回雑学調査レポートでは、そんな「しりとり」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

しりとりとよく似た言葉遊びは平安時代に存在していた

「りんご→ごりら→らっぱ」のように、前の言葉の最後の音を使って次の言葉を答える「しりとり」。特別な道具がいらず、ルールも簡単なため、現在でも子どもから大人まで広く知られている言葉遊びです。

『コトバンク』に収録されている『日本大百科全書』では、しりとりについて、前の言葉の最後の音を次の言葉の最初に置きながら、物の名前を順番に言っていく遊びと説明しています。一般的には、一度使った言葉は再び使えず、「ん」で終わる言葉を答えると負けになります。

では、このような「言葉の終わりを使って、次の言葉につなげる遊び」は、いつごろからあったのでしょうか。

その歴史をたどると、平安時代に行われていた「文字ぐさり」という方法に行き着きます。

『日本大百科全書』によると、平安時代には、言葉や句の終わりを次の始まりにつなげながら和歌を作る「文字ぐさり」が行われていました。

ただし、現在の「りんご→ごりら」のようなしりとりが、平安時代から同じ形で遊ばれていたということではありません。現代のしりとりにつながる「前の終わりを受けて、次を始める」という発想を持った言葉遊びが、すでに平安時代に存在していたということです。

そのため、平安時代の文字ぐさりは、現代のしりとりの直接的な起源と断定するよりも、「しりとりとよく似た仕組みを持つ古い言葉遊び」と考えると分かりやすいでしょう。

「文字ぐさり」は言葉や歌を鎖のようにつなぐもの

「文字ぐさり」は、漢字では「文字鎖」と書きます。その名前の通り、文字や言葉を鎖のようにつないでいく表現です。

『コトバンク』に収録されている『デジタル大辞泉』では、「文字鎖」について、和歌などで句の最後の文字を次の句の最初に置き、順番につないでいく修辞法と説明しています。

また、文字鎖には遊びとしての形もありました。一人が昔の歌を詠み、次の人が、その歌の最後の音から始まる別の古い歌を詠んで続けるというものです。

現代のしりとりと比べると、違いが分かりやすくなります。

現代のしりとりなら、

さくら→らっぱ→ぱんだ

というように、一つの単語の最後の音を使って、次の単語を答えます。

一方、文字ぐさりでは、単語だけではなく、句や歌そのものをつなげます。和歌の中で句と句をつなぐ場合もあれば、一つの歌から別の歌へつなぐ場合もありました。

つまり、現代のしりとりが「単語をつなぐ遊び」だとすれば、文字ぐさりは「句や歌をつなぐ遊び」に近いものです。

使うものは違っていても、「前の終わりを次の始まりに利用する」という基本的な仕組みは共通しています。

「源氏文字鎖」では『源氏物語』54帖の巻名まで使われた

文字ぐさりが発展した例として知られているのが、「源氏文字鎖」です。「げんじもじぐさり」と読みます。

『ジャパンサーチ』で公開されている『東京学芸大学附属図書館』の解説によると、「源氏文字鎖」は室町時代末ごろに成立したと考えられている長歌で、『源氏物語』54帖の巻名が織り込まれています。

『源氏物語』には、「桐壺」「帚木」「空蝉」「夕顔」など、全部で54帖の巻があります。「源氏文字鎖」では、それらの巻名を一つずつ歌の中に入れていきました。

基本的には、七音と五音の二句を一つのまとまりとし、一つのまとまりの中に一つの巻名を入れる構成になっています。

さらに特徴的なのが、前後のまとまりもつながるように作られている点です。ほぼ全体を通して、前のまとまりの最後の文字と、次のまとまりの最初の文字または音が合うよう工夫されています。

現代風に表現するなら、「『源氏物語』54帖の巻名をすべて盛り込みながら作る、しりとり風の長い歌」のようなものです。

ただし、「桐壺→○○→帚木」のように、巻名そのものを直接しりとりしているわけではありません。

一つのフレーズの中に決められた巻名を入れ、そのうえで前後のフレーズまで文字や音でつなげる必要があります。

つまり、「指定された言葉を入れること」と「前後をしりとりのようにつなぐこと」を同時に行っていたのです。現在の一般的なしりとりよりも、かなり複雑な言葉の仕掛けだったことが分かります。

現在では長編物語として有名な『源氏物語』ですが、その巻名がこうした高度な言葉遊びにも利用されていました。

江戸時代になると文字ぐさりは遊びとしても広がった

尻取り式の言葉遊びは、平安時代や室町時代だけで終わったわけではありません。時代が進むにつれて、より遊びとして楽しめる形へ変化していきました。

『日本大百科全書』によると、江戸時代中期になると、文字ぐさりは純粋な遊びとしても行われるようになります。

その例の一つが「火回し」です。

火回しでは、火をつけた線香やこよりを参加者の間で順番に回しながら、文字ぐさりや尻取り式の言葉遊びを続けました。

普通のしりとりであれば、次の言葉が思い浮かばなくても、ある程度は時間をかけて考えられます。しかし、火回しでは考えている間にも火が少しずつ燃え進んでいきます。

そのため、参加者には「火が自分のところまで来る前に答えなければならない」という時間的な緊張感が生まれます。

言葉を考える遊びに、燃えていく火を利用した時間制限を組み合わせていたわけです。

言葉遊びについて研究した綿谷雪の『言語遊戯の系譜』でも、「尻取り文句の変遷」という項目の中で、「文字ぐさり」「源氏文字ぐさり」「文字鎖の遊び」「火廻し・火文字ぐさ」「尻取り遊戯文句の発生」などが扱われています。

尻取り式の遊びは一つの決まった形だけで続いたのではなく、歌をつなぐもの、文字をつなぐもの、遊びとして競うものなど、時代に応じてさまざまな形へ変化していったことが分かります。

幕末から明治には「単語ではなく文章をつなぐしりとり」が流行した

現代のしりとりでは、「りんご」「ごま」「まり」のように、比較的短い単語をつなぐのが一般的です。

ところが幕末から明治時代にかけては、単語ではなく、ある程度まとまった文句をつないでいく遊びも人気になりました。

それが「尻取り文句」です。

『日本大百科全書』では、代表例として「牡丹に唐獅子竹に虎」から始まる尻取り文句が紹介されています。

この遊びでは、一つの文句の最後に出てきた言葉を、次の文句の最初に置いて続けていきます。

たとえば、ある文句が「虎」で終われば、次は「虎」から始まる文句へ進みます。その文句の最後に出てきた言葉を、さらに次の文句の最初に使うという流れです。

現代のしりとりでは、「とら」の最後の音である「ら」だけを使って「らっぱ」などにつなげます。

それに対して尻取り文句では、最後に出てきた言葉そのものを次の文句の頭に使うことがありました。そのため、現在のしりとりとはルールが少し異なります。

それでも、「前の終わりを使って、次の始まりを作る」という考え方は同じです。

『日本大百科全書』によれば、このような新しい尻取り文句は、幕末から明治にかけて盛んに楽しまれました。

平安時代には和歌や句をつなぎ、江戸時代には遊びとして楽しみ、幕末から明治には文句を次々につなぐ。時代によって形を変えながら、「終わりを次の始まりにする」という言葉遊びが受け継がれてきたことが分かります。

「しりとり」を漢字で書くと「尻取り」になる

普段はひらがなで書かれることが多い「しりとり」ですが、漢字では「尻取」または「尻取り」と書きます。

ここで使われている「尻」は、人の体の一部という意味ではありません。

「尻」には、物事の最後や後ろの部分という意味があります。言葉について使う場合には、言葉の終わりや語尾を指します。

『コトバンク』に収録されている『精選版 日本国語大辞典』では、「尻取」について、前の人が挙げた物の名前の語尾の一音を、次の人が語頭に置いて別の物の名前を言う遊びと説明しています。

つまり、「りんご」であれば、その言葉の「尻」にあたる「ご」を取り、「ごりら」のような次の言葉につなぐわけです。

さらに「尻取」という言葉は、現在一般的なしりとりだけを指すものではありません。詩歌や文句の最後の言葉を次の句の最初に置いて、順番につないでいく文字つなぎの遊びにも使われています。

「尻取り」という漢字をそのまま見ると、遊び方は非常に分かりやすいものです。

前の言葉の「尻」、つまり最後の部分を「取って」、次の言葉へつなげる――この仕組みそのものが、「しりとり」という名前になっています。

まとめ

  • 現代のしりとりと共通する「前の終わりを次の始まりにつなげる」言葉遊びは、平安時代の「文字ぐさり」までさかのぼる
  • 文字ぐさりは、単語ではなく句や歌を鎖のようにつなげていく言葉遊びだった
  • 室町時代末ごろの「源氏文字鎖」では、『源氏物語』54帖の巻名を織り込みながら、前後のフレーズを文字や音でつないでいた
  • 江戸時代中期には、文字ぐさりが「火回し」などの遊びとしても楽しまれるようになった
  • 幕末から明治時代には、単語ではなく文句をつなげていく「尻取り文句」も流行した
  • 「しりとり」は漢字で「尻取り」と書き、前の言葉の「尻」、つまり最後の部分を取って次につなげることが名前の由来になっている

単純なルールで楽しめるしりとりですが、「言葉の終わりを次につなげる」という発想は、さまざまな形で受け継がれてきました。

身近な遊びにも、意外な歴史が隠れているものです。

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