ペンギンにも膝はある!?【独特な歩き方にも意外な働きが】

かわいらしい見た目で世界中から親しまれているペンギンですが、その体を詳しく調べてみると、外見からは想像しにくい特徴がいくつも見つかります。

第153回雑学調査レポートでは、そんな「ペンギン」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

ペンギンにも膝はちゃんとある

ペンギンの丸い体を見ると、胴体の下から短い足が直接生えているように見えます。そのため、「ペンギンには膝がないのでは?」と思う人もいるかもしれません。

しかし、ペンギンにも膝があります。

ペンギンの脚は、人間と同じように、太ももの骨にあたる大腿骨があり、その下に膝の関節、さらに脛の部分をつくる骨が続く構造になっています。

『United Parks & Resorts』が運営する『SeaWorld』の解説でも、ペンギンには短い大腿骨、膝、脛骨、腓骨があるとされています。つまり、「ペンギンには膝がない」というのは、見た目から生まれた誤解です。

それでも膝があるように見えないのは、脚の上の部分が羽毛に隠れているためです。私たちが普段見ているのはペンギンの脚全体ではなく、その一部にすぎません。

ペンギンの膝はどこにある?

ペンギンの膝は、外から見えている足よりもかなり上にあります。

脚の骨を上から順番に簡単に見ると、「骨盤→大腿骨→膝→脛の骨→足」という形でつながっています。

ところが、生きているペンギンでは、大腿骨や膝の周辺が胴体の輪郭と重なり、さらに厚い羽毛で覆われています。『SeaWorld』も、脚の上部の多くが羽毛に隠れているため、ペンギンの脚は短く見えると説明しています。

そのため、外見だけを見ると、「丸い胴体」「短い脚」「足」という単純な形に見えます。

実際には、羽毛に隠れた部分にも大腿骨や膝があります。膝が胴体の中に完全に埋まっているというより、「体の輪郭と羽毛によって外から見えにくくなっている」と考えると分かりやすいでしょう。

『American Museum of Natural History』が公開しているコウテイペンギンの骨格標本を見ると、生きている姿からは分かりにくい脚の骨を確認できます。骨盤の下から大腿骨が伸び、その先に脚の骨が続いており、一般的なペンギンのイメージとはかなり違って見えます。

「後ろ向きに曲がっている部分」は膝とは限らない

鳥の脚を理解するときに、もう一つ知っておきたいポイントがあります。

鳥を横から見ると、脚の途中に「後ろ向きに曲がった関節」があるように見えることがあります。この部分を膝だと思いやすいのですが、鳥類では外から目立つこの関節は、多くの場合、足首にあたる部分です。

膝はそれより上に位置しています。

『Carleton College』で公開されている鳥と人間の脚を比較する教材でも、鳥の脚が後ろ向きに曲がって見える部分は一般に足首であり、膝ではないと説明されています。鳥の膝そのものは、より体に近い位置にあります。

ペンギンの場合は羽毛によって脚の上部が特に分かりにくいため、この違いを外見だけから判断するのはさらに難しくなります。

つまり、「見えている関節が膝」という人間の感覚でペンギンを見ると、脚の仕組みを勘違いしやすいのです。

ペンギンの脚はなぜあれほど短く見える?

ペンギンの脚が短く見える理由は、「膝が隠れているから」だけではありません。もともと脚そのものにも特徴があります。

『SeaWorld』は、ペンギンの脚を短くて強い脚と説明しています。また、膝より上にある大腿骨についても短いことが示されています。

そのため、「実は羽毛の下に人間のような長い脚が丸ごと隠れている」と考えるのも正確ではありません。

分かりやすくいえば、「もともと比較的短い脚」「その上部が羽毛で見えない」という2つの特徴が重なることで、外から見ると非常に短い脚に見えています。

ペンギンの骨格を初めて見ると、「こんなところに太ももの骨があったのか」と驚くかもしれません。しかし、隠れている脚が極端に長いわけではなく、外から見えていない部分にも普通に骨や関節が存在しているということです。

短い脚は水の中で暮らす体と深く関係している

ペンギンの体を考えるときは、陸上だけを見ると分かりにくくなります。

ペンギンは鳥ですが空を飛ばず、水中で泳ぐことに強く適応しています。

『SeaWorld』によると、ペンギンの体は両端に向かって細くなる流線形をしており、脚と水かきのある足は体のかなり後ろ側に配置されています。この位置に脚があることで水中での流線形を保ちやすくなり、陸上では体を起こした姿勢になります。

ペンギンが泳ぐとき、大きな推進力を生み出しているのは翼から変化したフリッパーです。『SeaWorld』も、ペンギンがフリッパーを動かして水中を進むと説明しています。

一方、足も重要です。

『Australian Antarctic Program』によると、ペンギンはフリッパーで推進し、足と尾を舵のように使って水中で方向を調整します。

つまり、ペンギンの脚は「陸上を歩くためだけの脚」ではありません。泳いでいるときにも、姿勢や方向を調整する体の一部として働いています。

陸上の歩きやすさだけを基準にすると少し不思議な体型に見えますが、水中生活まで含めて考えると、ペンギンらしい脚の位置や形には意味があることが分かります。

ペンギンが「よちよち歩き」になるのは膝がないからではない

ペンギンといえば、体を左右に揺らしながら歩く姿がよく知られています。

この「よちよち歩き」を見ると、「膝がないから脚を曲げられないのでは?」と思うかもしれません。

しかし、ペンギンには膝があります。

特徴的な歩き方には、比較的短い後肢を持っていることや、脚が体の後ろ側に配置されていることなどが関係しています。水中生活に適した体型が、陸上での歩き方にも影響しているわけです。『SeaWorld』も、脚が体の後方にあることが、ペンギンが陸上で直立した姿勢を取る理由につながっていると説明しています。

そして、ペンギンの左右への揺れには、意外な働きがあります。

よちよち歩きの左右の揺れにはエネルギーを利用する働きがある

ペンギンの歩き方は、人間から見ると少し不器用に見えます。

実際、ペンギンは同じくらいの体重を持つ一般的な陸上動物と比べると、一定の距離を歩くために多くの代謝エネルギーを必要とすることが知られています。

以前は、体を左右に大きく揺らすことがエネルギーを余計に消費する原因だと考えられていました。

ところが、Timothy M. Griffin氏とRodger Kram氏がコウテイペンギンの歩行を調べた研究では、別の結果が示されました。

『Nature』に掲載された研究によると、ペンギンの左右への揺れは単なる無駄な動きではなく、歩いている間の機械的エネルギーを回収することに役立っています。

つまり、体を左右に動かすことで、一歩ごとに生まれるエネルギーの一部を次の動きに利用していると考えられます。

では、なぜ歩行には多くのエネルギーが必要なのでしょうか。

同研究では、ペンギンの脚が短いため、歩くときに筋肉が短い時間で力を発生させる必要があり、それが高いエネルギー消費につながる可能性が示されています。

見た目には非効率そうな「よちよち歩き」ですが、左右に揺れる動きそのものは、むしろ使ったエネルギーを有効に利用するための働きを持っているのです。

ペンギンの体が泳ぐことに適しているのは潜水能力からも分かる

ペンギンがどれほど水中生活に適応しているかは、その潜水能力を見ると分かりやすくなります。

なかでもコウテイペンギンは非常に高い潜水能力を持っています。

『Australian Antarctic Program』によると、コウテイペンギンの多くの潜水は水深100~200メートルほどで行われています。それより深く潜ることもあり、同機関が記録した最も深い潜水は565メートルです。

コウテイペンギンは通常、1回の潜水を3~6分ほど行いますが、22分間続いた潜水も記録されています。

もちろん、こうした潜水能力を脚だけが生み出しているわけではありません。流線形の体、フリッパー、羽毛、脂肪、呼吸や循環の仕組みなど、さまざまな特徴が組み合わさっています。

その一部として、体の後ろ側にある脚と足も、水中での方向調整に利用されています。

「陸上では歩きにくそう」という一面だけを見るのではなく、「泳ぐことを中心に形づくられた体で陸上も移動している」と考えると、ペンギンの姿を理解しやすくなります。

骨格を見ると生きているペンギンと別の動物のように見える

『American Museum of Natural History』にはコウテイペンギンの骨格標本の記録があり、『Digital Morphology』ではCTデータを使ったコウテイペンギンの骨格資料も公開されています。

骨格を見ると、「ペンギンにも他の鳥と同じように脚の骨がある」という当たり前の事実が、外見から想像する以上にはっきり分かります。

水族館では「足」より少し上の動きに注目すると分かりやすい

水族館や動物園でペンギンを見る機会があれば、足先だけを見るのではなく、胴体の下側全体に注目すると脚の仕組みを想像しやすくなります。

普通に歩いているときは、外から見えている短い部分だけを使って歩いているように感じるかもしれません。しかし、その上には羽毛に隠れた膝や大腿骨があり、複数の関節と筋肉が連動して体を動かしています。

特に観察しやすいのは、方向を変えるとき、段差を上るとき、体を低くするときです。

普段より大きく姿勢が変わるため、「足先だけが動いているのではなく、胴体の近くから脚全体が動いている」ことをイメージしやすくなります。

ただし、膝関節そのものを羽毛の上からはっきり見つけるのは簡単ではありません。

「見えている足のすぐ上で脚が終わっているわけではない」と知ってから観察すると、同じペンギンの歩き方でも見え方がかなり変わってきます。

まとめ

  • ペンギンにも膝があり、大腿骨や脛の骨などがつながっている
  • 膝や大腿部は羽毛と体の輪郭に隠れているため、外からは脚が短く見える
  • ペンギンの脚は、もともと比較的短いうえに上部が見えにくいことで、さらに短く見える
  • ペンギンの脚や足は体の後方にあり、水中では姿勢や方向の調整にも使われる
  • よちよち歩きは「膝がないから」ではなく、短い後肢や脚の位置などが関係している
  • 歩くときの左右への揺れには、機械的エネルギーを回収する働きがある
  • ペンギンの骨格を見ると、外から見えている部分より上にも脚の構造が続いていることが分かる

普段はかわいらしい姿に目が行きがちなペンギンですが、体の中には外見からは分からない工夫が隠されています。

次に水族館や動物園でペンギンを見る機会があれば、歩き方や脚の動きにも注目してみると、これまでとは少し違った楽しみ方ができるかもしれません。

参考文献

United Parks & Resorts「Frequently Asked Questions」
URL:https://seaworld.org/animals/ask-shamu/faq/

United Parks & Resorts「All About Penguins – Physical Characteristics」
URL:https://seaworld.org/animals/all-about/penguin/physical-characteristics/

Australian Antarctic Program「Penguins」
URL:https://www.antarctica.gov.au/about-antarctica/animals/penguins/

Australian Antarctic Program「Emperor penguins diving and travelling」
URL:https://www.antarctica.gov.au/about-antarctica/animals/penguins/emperor-penguin/how-deep-can-they-dive/

American Museum of Natural History「Skeleton of Emperor penguin – Aptenodytes forsteri」
URL:https://digitalcollections.amnh.org/archive/Skeleton-of-Emperor-penguin–Aptenodytes-forsteri–2URM1T5XSCX.html

Digital Morphology「Aptenodytes forsteri, Emperor Penguin」
URL:https://digimorph.org/specimens/Aptenodytes_forsteri/juvenile/whole/

Carleton College「Comparative anatomy of bird vs. human leg bones」
URL:https://serc.carleton.edu/34730

Nature「Penguin waddling is not wasteful」
URL:https://www.nature.com/articles/35050167

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