キリンの首の骨は人間と同じ数!?【一つの頸椎の長さが人間の○○と同じ】

地上で暮らす動物の中でも、ひときわ個性的な姿をしているキリン。見慣れた動物ではありますが、その体について少し掘り下げてみると、思い込みとは違う事実がいくつも見えてきます。

第119回雑学調査レポートでは、そんな「キリン」に関する雑学をご紹介していきます。

目次

キリンの首の骨は何個?実は人間と同じ7個

キリンといえば、まず思い浮かぶのが長い首です。大人のキリンでは、首の長さが約1.8メートルにもなります。これほど長ければ、「人間よりたくさんの骨が並んでいるのでは?」と思うかもしれません。

ところが、キリンの首を作っている頸椎(けいつい)は7個です。頸椎とは、頭の下から背中の手前までに並んでいる背骨のことです。人間にも7個あるため、キリンと人間では首の長さがまったく違うのに、基本的な頸椎の数は同じなのです。『San Diego Zoo Animals & Plants』でも、キリンと人間はいずれも7個の頸椎を持つと紹介されています。

キリンは、小さな骨を何十個もつないで首を長くしているわけではありません。7個という数を保ったまま、一つひとつの骨を非常に長くすることで、あの特徴的な首を作っています。

長い首の秘密は「骨の数」ではなく「1個の長さ」

キリンの頸椎は、人間の頸椎とは比べものにならないほど長くなっています。『San Diego Zoo Animals & Plants』によると、キリンの頸椎には1個で25.4センチメートルを超えるものがあります。

25センチメートルといえば、大人の足のサイズに近い長さです。そのような大きな骨が首の中に並んでいると考えると、キリンの首がなぜ長いのか想像しやすくなります。

大人のキリンでは、首そのものが約1.8メートルあり、重さは約272キログラムに達するとされています。人が数人集まったほどの重さを持つ首を、キリンは日常的に持ち上げながら歩いたり、木の葉を食べたりしていることになります。

もちろん、首を支えているのは骨だけではありません。大きく発達した筋肉や靱帯も重要です。キリンでは長い首を支えるため、首の筋肉や靱帯が付着する骨の部分にも特徴的な変化が見られることが研究されています。

キリンだけではない?哺乳類の首の骨はほとんどが7個

キリンと人間の頸椎がどちらも7個なのは、単なる偶然ではありません。実は哺乳類では、首の長さに関係なく7個の頸椎を持つことが一般的です。

首が長いキリンも、首が短く見える動物も、基本的な数は7個です。哺乳類では体の大きさや姿が大きく変化してきた一方で、頸椎の数は進化の中で非常に変わりにくかったことが知られています。

ただし、例外もあります。代表的なのがナマケモノとマナティーです。種類によって7個より多かったり少なかったりします。マナティーは通常6個の頸椎を持ち、一部のナマケモノでは5個から10個ほどまで違いが見られます。

鳥類では事情がかなり違います。鳥は種類によって頸椎の数が大きく変わり、哺乳類より多くの頸椎を持つ種類も珍しくありません。つまり、長い首を作る方法は動物によって違います。頸椎の数を増やせる動物もいる一方、キリンは「7個のまま、それぞれを長くする」という方法で極端に長い首を作ったのです。

キリンの首は生まれた後にさらに長くなる

キリンの赤ちゃんは、生まれたときからすでに長い首を持っています。しかし、大人と同じ体形のまま全身が均等に大きくなるわけではありません。

胎児から大人までのキリンの背骨を調べた研究では、頸椎が極端に長くなる成長は主に出生後に進むことが確認されています。特に第2頸椎から第7頸椎は、成長するにつれて長さが大きく増していきます。

興味深いのは、一部の頸椎だけが突然長くなるわけではないことです。研究では、第2頸椎から第7頸椎までが、おおむね同じペースで長くなることが示されています。

そのため、キリンの長い首は生まれる前に完全な形が決まっているものではありません。成長するにつれて頸椎がさらに細長くなり、大人のキリンらしい首へと変化していきます。

実は「8個目の首の骨」のように動く骨もある

キリンには7個の頸椎しかありませんが、首の動きについて調べていくと、さらに面白い仕組みが見えてきます。

ポイントになるのが、7個目の頸椎のすぐ後ろにある「第1胸椎(きょうつい)」です。胸椎とは、胸の部分にある背骨を指します。つまり第1胸椎は、正式には首ではなく胴体側の骨です。

ところがキリンの第1胸椎は、一般的な反芻動物の第7頸椎に似た形をしています。さらに実際のキリンを使った研究では、第1胸椎の周辺がほかの胸椎より大きく動き、首を曲げる筋肉もこの付近まで関わっていることが分かりました。

『The University of Tokyo』は、この第1胸椎について、動きの面では「8番目の首の骨」のような働きをすると説明しています。第1胸椎の動きが加わることで、頭と首が届く範囲は大人のキリンで約50センチメートル広がるとされています。

ただし、第1胸椎が本当に8個目の頸椎になったわけではありません。第1胸椎には肋骨がつながり、その肋骨は胸骨にも接続しています。そのため、骨の分類としては今も胸椎です。

つまりキリンは、「頸椎は7個」という哺乳類に一般的な体の基本構造を保ちつつ、首と胴体の境目を動きやすくすることで、長い首をさらに有効に使っているわけです。

首が長くても水を飲むのは意外と大変

1.8メートルほどの首があれば、地面にも簡単に口が届きそうです。しかし、実際のキリンを見ると、水を飲むときには少し不思議な姿勢になります。

キリンは前脚を大きく左右に開き、体を低くした状態で首を水面まで下げます。首だけでなく脚も約1.8メートルと非常に長いため、普通に立っているだけでは口を地面近くまで下げにくいのです。

水を飲んでいる間は頭が低い位置にあり、すぐに走り出すのも難しくなります。『San Diego Zoo Animals & Plants』では、キリンが水場へ集団で向かい、周囲の捕食者を警戒しながら水を飲む様子が紹介されています。

長い首は高い木の葉を食べるときには大きな武器になります。その一方で、地面近くの水を飲むときには、長い脚との組み合わせによって独特な姿勢が必要になります。キリンの体は、単純に「首が長ければ何にでも届く」という作りではないことが分かります。

人間と比べると「同じ7個」のすごさがよく分かる

人間とキリンを横に並べれば、首の長さはまるで違います。それでも、首の中心となる頸椎はどちらも7個です。

違っているのは、主に一つひとつの骨の大きさと形です。人間では短い7個の頸椎が頭を支えていますが、キリンでは大きく引き伸ばされた7個の頸椎が約1.8メートルもの首を作っています。

さらにキリンでは、首の付け根にある第1胸椎まで動きに参加します。長い骨、関節、筋肉、靱帯、そして首と胴体の境目にある特殊な構造が組み合わさることで、巨大な首を支えながら広い範囲へ動かせるようになっています。

見た目は人間とまったく違うキリンですが、骨格を詳しく見ると「頸椎は7個」という共通点があります。そして、その同じ7個の骨を大きく変化させたことが、キリンらしい長い首につながっているのです。

まとめ

  • キリンの頸椎は、人間と同じく7個
  • キリンの首が長いのは、骨の数ではなく一つひとつの頸椎が非常に長いため
  • キリンの頸椎には、1個で25.4センチメートルを超えるものがある
  • キリンの首は約1.8メートル、重さは約272キログラムに達する
  • 哺乳類の多くは首の長さに関係なく頸椎が7個
  • キリンの頸椎は出生後にも大きく伸び、大人らしい長い首へ成長する
  • 首の付け根にある第1胸椎も、首の動きを広げる役割を担っている
  • キリンは首が長くても、長い脚のため水を飲むときには前脚を大きく開く必要がある

キリンの長い首を支えているのは、単純に「骨がたくさんある」という仕組みではありません。人間と同じ7個の頸椎を大きく伸ばし、さらに周囲の骨や筋肉も利用することで、あの独特な体形が作られています。

動物園でキリンを見るときには、そんな体の仕組みを思い出してみてはいかがでしょうか。

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