みなさん、こんにちは!
地球のおよそ7割を占める海を移動するために「船」という手段は欠かせません。第2回雑学調査レポートでは、人類にとって必要不可欠な「船」の雑学についてご紹介していきます。
早速見ていきましょう。
大型船には横向きに進む装置がある
全長が300mを超えるような巨大な船は、その船体を動かすために前後に強い推進力を持っています。しかし、巨大で強い力を持っているということは、一方で繊細な動きが難しいことでもあります。
つまり低速時は車のように小回りができず、特に港のような場所では、風や潮流の影響によって細かい位置調整が難しくなります。
そこで普及したのが「バウスラスター(Bow Thruster)」と呼ばれるプロペラ装置です。
船首(船の先頭部)はトンネルのように横向きに穴が開いており、その内部にバウスラスターは設置されています。動作時には、トンネルの片側から入ってきた水を吸い込んで反対側へ噴射します。その反作用で船首が横へ押されるという仕組みです。たとえば水を右舷に噴射すれば、船首が左へ動き、船全体も左にゆっくりと移動できるようになるということです。
現代で使われるバウスラスターが普及したのは1950年~1960年代以降とされており、船舶の巨大化やコンテナ輸送に革命が起きたこと、港湾の混雑が増加してきたことが背景としてあります。特に物資を輸送するコンテナ船の発展は、バウスラスターの普及を加速させたといえるでしょう。
なぜ大型船ほど必要になるのか
船が大きくなればなるほど、バウスラスターの重要性も高まります。その理由は、大きな船には大きな「慣性」が働くためです。
エバー・ギブンやMSCイリーナのような全長約400m、積載重量20万トン超の大型船ともなれば、低速時でも完全停止まで数kmを必要とする場合があります。
さらに通常の舵(ラダー)は前進して水流が当たっているときしか効きにくいため、港内のような超低速、狭い水路、風の影響を大きく受けるといった状況では、通常の舵のみでは自由に曲がることができません。
そこで横方向の力を直接発生させるバウスラスターが必要になってくるのです。
プロペラとはいえ大型船を動かすほどのため、その出力は類を見ないほどになります。
一般的な乗用車のエンジン出力は100~200kW程度とされています。これに対し、中型貨物船でさえバウスラスターは500~1,500kWの出力となります。つまり、1,000kW級のバウスラスターは、普通車5~10台分のエンジン出力を横向きに移動させるためだけに使っている計算になります。
大型客船のバウスラスターの出力は2,000~4,000kWとされており、桁違いな数値であることが明らかです。これは家庭用エアコン約800~1,500台分に匹敵します。さらに驚くことに、巨大船ではこれを複数基積んでいることもあるようです。
超大型船ではバウスラスターの出力が5,000kWを超えることもあり、もはや「小さな発電所」といっても過言ではありません。これは地方の小規模水力発電所や、数千世帯分の電力消費量と同等です。
これほどの膨大な出力であるにもかかわらず、船を前に進めるためではなく、数メートルの位置調整や横風対策のためだけに、横方向の移動としてのみ使われるのは非常に興味深いといえるでしょう。

実は弱点もある
大型船にとって非常に便利なバウスラスターですが、もちろん弱点も存在します。
低速で移動する港内では効果を発揮する一方、外洋を高速で航行する際に使われることはそれほど多くありません。バウスラスターは水を横方向に噴射しますが、船が高速で前進していると、噴流が乱流に飲まれてしまい効果が低下してしまうのです。
また、膨大な出力であるため燃費が悪いことも弱点です。短時間の使用でもかなりの電力を消費することは、先ほどの出力の規模を見ても一目瞭然です。
そのほかにも空洞現象(キャビテーション)とよばれる、プロペラが強力すぎることでプロペラ周囲に気泡が発生する問題もあります。これは騒音や振動、プロペラ損傷の原因とされており、軍艦や潜水艦では特に問題視されています。
まとめ
- 大型船には「バウスラスター」とよばれる横方向に移動するためのプロペラ装置がある
- 大型船ほど慣性が大きいためバウスラスターが重要になるが、その分だけ出力も大きくなる
- 低速時しか使えない、燃費が悪い、空洞現象などの弱点も存在する
大型船が港のような場所で細かい動きをするために、横方向に動くことができるプロペラは欠かせないということですね。一方でその出力が想像もつかないほど膨大であることも衝撃的でした。
ちなみに現在では「アジマススラスター(Azimuth Thruster)」とよばれる、プロペラが360度好きな方向を向ける装置も存在するなど、船の推進装置はどんどん進化を遂げています。この装置を用いることで、巨大客船であっても驚くほど滑らかに接岸できるとされています。
一生に一度は大型客船に乗って、スラスターを活用した繊細な動きを体感してみたいものですね。
それでは次回の雑学調査レポートもお楽しみに!
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